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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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田楽とカミカゼ

塔の中はかなり整理されていた。


本来なら侵入者を拒むように障害物が置かれていたり、仕掛けがあったり、迷路のようになっていたりとバラエティ豊かな冒険ランドだ。


しかし、役所に使われているだけあって見透しはよい。


つまらない場所だ。


ティラミスにとっては初めての塔なのでもし見学ツアー中なら今頃暇をもて余してしまっているかもしれない。


下の階からしらみ潰しにいけばおそらく屋上辺りで出くわすだろう。


俺は役人たちの攻撃を避けながら上階を目指し、駈けていく。


途中…。


余りに役人兵士どもの数が多く、いちいち避けるのも億劫になったので、受けるだけ受けながら最短距離で上を目指すことにした。


別に雑魚の攻撃を喰らったところでHPが一つ減るわけでもないし…。


逆にビビって道開けたよ。


俺は突き進んでいく。


4階に到達すると、急にフロアが狭くなった。


どうやら周りに仕切りをして、いくつか部屋を作ったのが原因のようだ。

お偉方の職務室といったところか…。


ネームプレートが各部屋のドアにある。俺は確認していた。


「上に行ったぞ」


下から兵士たちの声がする。のんびりもしていられない。


そう思っていた時、一つの部屋から誰かが出てきた。


「魔王様…かな?」


「うむ。そうだが…。お前は?」


男が一人。見覚えすらない。まあ、元々、男には興味ないしな。


「私は金平様にお仕えする田楽と申すもの…。ささ、中へ」


「かたじけない」


俺まで言葉が移っちまった。ま、いいか。


匿ってくれそう。面倒だったので丁度いいや。俺は誘われるまま中へ滑り込んだ。


「ささ、その机の下に」


田楽は俺を机の下に押し込んだ。


兵士どもはフロアに押し寄せると一部屋ずつ確認している様子が耳に飛び込んでくる。


「田楽様!田楽様!」


ノックに俺の鼓動も乱舞する。


「何だ騒々しい」


田楽はクルクルに巻き上がった口髭を指で弄りながら兵士の前に立つ。


「はっ!申し訳ありません。今しがた狼藉ものが塔に…」


「ここには来ておらん。屋上に上がったのかも知れんな…」


「そうですか」


そこへ他の部屋を探索していた兵士たちが続々集合してくる。


「他はどうだ」


「いえ」


田楽の部屋に来た兵士が他の部屋を探索していた兵士たちに訊ねると首を振った。


「田楽様失礼しました。では、御免!」


兵士たちは敬礼して上に上っていく。


田楽はご苦労と一声かけたあと、遠ざかる足音を確認し、ドアを閉めた。


「大丈夫ですぞ」


「ふう、助かった…。ありがとう。それにしてもーー」


俺が礼を述べると、田楽は手で制し、紅茶を淹れて差し出してくれた。


「粗茶だが」


「いやいや。結構なお手前で…」


お世辞抜きに美味い紅茶だ。甘い香りとほのかな苦味が絶妙。


今度、ズッキーニに取り寄せてもらおうっと。


俺は田楽に成り行きを話した。


「はははっ。それは災難でしたな…。私から兵士たちに話しておきましょう。パエリアとかいう家臣のことはお頭が帰ったら話を通しておきます。それからお嬢様の件ですがーー」


「何か?」


思案顔の田楽に俺は不安になる。


「屋上にはカミカゼが吹きまする。カミカゼに拐われると厄介。風の吹きかたにより東に西に南に北にどこに飛ばされるかわかりませぬ。いつ吹くかはまさに神のみぞ知るところ…。よほどこの塔に精通した者でなければ、最悪ーー」


「行方知れずになってしまうか」


「はい」


田楽は髭を撫で付け、腕組みをした。が、すぐに立ち上がる。


「屋上にまいりましょう。事情は私が兵士どもに話します。さすればこの塔内も自由に歩き回れますし…」


「そうしてもらおうか。でないと敵わん」


俺は歩き出す田楽に続いた。


屋上にあがると、地上にいたときより風が強いのに気づかされる。


時折吹き付ける風は横殴りで兵士たちも一苦労していた。


「カミカゼはこんなものではございません。あ、皆の衆。これこれ」


田楽は手を叩くと兵士を集め、事情を話し、俺を紹介した。


よかった。これで自由に動ける。


俺は塔ノ下をそっと覗き込んだ。遥か下に見える地上では足をたたんでくつろぐパシェリが大アクビをかましている。


5階ってけっこう高いんだな。向こうには切り立った崖。反対には渡ってきた海。上から見ると結構やばい場所だ。


もし本当にティラミスが拐われたなら大変だ。


しかし、それはどうもなさそうだ。


だってそうだろう?ティラミスが飛ばされればパシェリが黙ってはいないはずだ。

飛ばされたティラミスを追ってどこまででもとんでいくことだろう。


しかし、ご覧の通り、パシェリはのんびりおくつろぎ中。


その線は捨ててよさそうだ。


塔の内部にいるとしても一階から隅々まで兵士が探して屋上まできているのだから一体どこに潜んでいるのか?


俺が思案をしていると、田楽の目付きが鋭くなった。


何事かと思っていると田楽は塔の西側でぼんやりしていた兵士に飛びかかる。

兵士が粗相でもしたのかと眺めていると、兵士に覆い被さった田楽が叫ぶ。


「東から西へカミカゼが来るぞ!皆の者伏せい!」


その声がかかるやいなや他の兵士は一ヶ所に身を寄せ、低い体勢をとる。

俺も反射的に同じ体勢をとった。


間一髪。


台風かそれ以上と思われる突風が一気に東から西へ駆け抜けていく。


こりゃ確かにヤバイな…。


砂粒がまるで弾丸だ。重厚な鎧を纏っている兵士でさえダメージを受けている。


俺もチートでなければただじゃすまなかったぜ。


俺は安堵のため息とともに立ち上がった。


「大丈夫ですかな…。魔王殿、今のがカミカゼであります」

「驚いた。しかし、田楽殿、よくわかりましたな」


「長年の経験にございますよ。ははは」


田楽は髭を撫で付けた。


そこへ下の階から俺を陥れたターバン女がやってくる。


また、ややこしくならなければいいが…。俺は身構える。


「あ、悪いやつ。でももう興味ない。今大切な用事。暇じゃない」


暇潰しに俺を陥れたのかよ。大概にしねえと瞬殺すんぞ。


俺は無関心を装っていた。


「どうしたロコモコ。何があった」


田楽がターバン女に話しかける。









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