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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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ティラミスは消え、俺は追い回される

「パエリアは私のかけがえのない仲間の一人です。落ち込んだときも楽しいときもパエリアの料理が私を支えてくれました。母上様がもし無事に戻られた暁にはパエリアの料理が必要です。母上様もきっと喜んでくださるはずです。ですから私も…」

俺はティラミスの頭をポンポンした。


「わかった。ついてまいれ」


「はい!ーーでもパパ上様相手はわかりましたがどちらへ」


「うっ」


俺としたことがうっかりだぜ。


「ティラミス様、金平塔という塔はご存じですか?」

トリュフが訊ねる。助け船キター。俺はクールを装う。


「いえ…」


「鬼の金平という役人が新設した盗賊改めと呼ばれる部署がある塔です。そこは元々パエリアたち盗賊団の根城でした。ここを奴等は落とすことでワールドに宣戦布告をし、反旗の狼煙をあげるつもりであるようでした。ですからそこへ乗り込めば何かアクションがあるかもしれません」


「だ、そうだ」


「トリュフありがとう。パパ上、急ぎましょう。でも、金平って、たしかーー」


「ドリアードの森であったあいつか…」


俺は四角い顔と十手を思い出していた。


「お会いしたことがあるのですか…?魔王様」


トリュフが怪訝な顔をする。


「ああ、それが何か?」


「魔王さまあん、金平って男、よくない噂をお持ちよ」


今度はショコラが割り込んできた。


「何だショコラ、金平を知っているのか?」


「あくまでも噂の話なんですけどもね…。表向きは盗賊を懲らしめるヒーロー。でも、裏の顔は『ふぬけ』盗賊改め方なんて言われていますの」


「ふぬけ?」


「ええ。足抜けして普通の暮らしをしようとしている盗賊を再び盗賊として生きるよう脅しているというの」


「何のために?取り締まる側が盗賊の数を増やしてどうする?止めてくれれば好都合ではないか、わざわざ手間を増やして」


俺は首を傾げた。あまりに矛盾しているからだ。


「自分の仕事がなくなっちゃうからよ。盗賊あっての自分の地位だから」


「まじかよ!」


俺はあまりの衝撃に素に戻った。あいつは確かに俺と同じ匂いのするチートだ。しかし、俺が見るにそんな卑怯男には見えなかった。いや、チートってことは卑怯ってことか、でもな…。


「--少なくとも…。少なくともパパ上様、私はあの男。金平という男はそんな風には見えませんでした。パパ上様は常々人は見かけによらない、疑えとおっしゃっていますが私は私の目で判断するにそんな役人ではないと思います」


ティラミスがはっきりと言い切った。


「そうだな…。パエリアのことも知っておったようだし、とりあえず会ってみよう。ーーここから金平塔は…」


俺は地図を確認した。


「南に真っ直ぐにございます」


ズッキーニが助け船をだす。俺はそれに従い指でなぞった。


「ここか…。小国モンブランの外れ。よし、いって参る」


俺たちはパシェリの背中に乗り、金平塔へと出発した。


南へ真っ直ぐに進路を取り、キメラの速さで半日ほど。


海に浮かぶ島が見えた。左側に小さな城があり、その南方に5階立てのうす汚れた塔が見える。


どうやらそれが俺たちが目指す金平塔という代物らしい。


「パシェリあの入り口前で」


ティラミスがパシェリの背中をさすりながら指示すると、パシェリは小さく一声啼いて、塔の前に降り立った。


俺たちを静かに降ろすと背筋を伸ばし、毛繕いをして羽を休める。


「お利口さん。すぐ戻るから静かに待っているのよ」


ティラミスがパシェリの喉元を撫でると、嬉しいのか滅多にやらない喉を鳴らす。


俺が撫でてもこうはいかないのでちょっと寂しい気もするが、長年の信頼関係ってこんなところにできるもんなんだなと変なことに感心してしまった。


「ティラミス行くぞ」


「はい」


俺はティラミスを促した。


「ちわーす」


俺は入り口を開け、中を覗きながら声をかけた。


入ってすぐのエントランスは広く間取りがとられ、絨毯などが敷かれていた。


「はい、なんざんしょ?」


ターバンを巻いた細身の女性が俺たちに近寄ってきた。


「金平という者に会いたいのだが…」


俺は半目で女に訊ねた。別に女性が女神様だったわけではない。眩しいのだ。塔って暗いイメージがあったけど、自然光一杯取り入れて、燭台も豊富にあるんだな。


「金平いない。留守。盗賊捕らえる仕事。あんた目付き悪い。あんた誰?」


「いや、ちょっと眩しいのだが…。俺は魔王でこっちはーー」


俺は振り返り、ティラミスを紹介しようとしたがいない。


俺が入り口を開けるも、居るのは尻尾をピチピチ振るパシェリのみ。


「あ、あれ?」


俺はまた中を見回した。


おかしいな…。一緒に入ったはずなのに。


ターバン女は睨みを効かせている。怪しまれている感半端ない。


「いや、俺は魔王で訊ねモンを…」


パエリアも一応人ではないだろうから気を利かせたつもりが仇になった。


「魔王悪いやつのこと。訊ねモンも悪いやつのこと。ここで習った」


「いや、そういう意味じゃなくてな」


やべえ地雷が地雷を呼ぶ無限連鎖のフラグかよ…。


「何よりあんた、目付き悪い。むちゃくちゃ悪人っぽい。あんた悪人。私決めた。今決めた。あんた悪人」


「ちょっま!」


何だ、その理屈。バカボンのパパか、お前は。


「出合え!皆の衆、曲者にござる!出合えおろう!」


ターバン女の通る声が塔内に響き渡る。


兵士たちがどっとエントランスに押し寄せる。


「何でそこだけ、和風なんだよ」


仕込むとすれば金平しかいないだろう。しかし、今はそんなことに構っている暇はない。


捕まってしまったのではパエリアを探しにきた意味がなくなる。


倒すか?


チートな俺なら他愛もないことだ。


でも役人に手をだすのはやっぱりまずいだろう。


俺はとりあえず逃げ回ることにした。


それにしてもティラミスのやつ、一体どこに行ってしまったんだ?


俺は役人兵士どもの攻撃を掻い潜りながら塔の中を探すことにした。


金平が帰ってくれば誤解も解けるしな。あ。金平も悪人かもしれないのか・・・。ま。いいか。そんときゃそんときだ、暴れまくってやる。



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