地雷
「邪魔者は追っ払った。もう森へは帰ってこまい。ーードリアードの娘っことやらはどこだ」
まずはお顔を拝見。
「ならば、ついてこられよ」
ピーターは森の奥に進んでいく。しばらくすると開けて、道が二手に分かれていた。
「真っ直ぐ進むとドリアードのいる木が、左に進むとニラレバの祭壇がある」
ピーターを指で指し示す。鬱蒼とした木々から木漏れ日がすっと差し込む。同時に爽やかな風がすっと頬を撫でた。
「ニラレバを倒してからでいいんじゃないですか?」
ティラミスが体を動かしながら言う。早くニラレバを倒したいとウズウズしている様子だ。
「まあ、焦るな。可愛い女の子だというからちょっと顔が見たくなってな…。それに婿を紹介する手前もあるからな」
「まあ、もしやパパ上様…。不純な動機をお持ちでいらっしゃいますか?」
ティラミスがハリセンボンの如く膨れる。
「何だ?ティラミス妬いておるのか?ーーまあ、心配するな…。性格をみて、一致する婿を見つけてやらねばドリアードとて好みがあろう?その選別に参る次第だ。不純な動機ではない」
最初こそは不純な動機でした。御免なさい。だが今は違う。まずはドリアードを確かめないとな…。
俺たちは森の奥に進んでいった。
「あの木がそうだ」
しばらく歩くとピーターは立ち止まり、一本の木を指差した。
こじんまりしたひっそりと佇む木。人の胴ほど太さで幹には蔦が絡まり、何処にでもある平凡な木であった。
「あれか?」
俺たちは拍子抜けしてしまった。もっと厳かなやつとか、透き通るような白い幹とか、生命力に満ち溢れた輝く枝とか、そういうのをイメージしていたからだ。
「おい、ドリアード!私だ。ピーターだ。出てきておくれ」
ピーターが手を打ちならすと木の幹から煙が立ち上った。
やがて煙は人の形になり、女性になった。
ティラミスより少し上の年齢だろうか。顔自体は文句なくカワイイと俺は思う。
だが、何だろう?この陰な雰囲気は…。
「ひ、久し振り…。も、もう誰も来てくれないかと…、思った…」
地雷系の匂いがする。
「我々も半分諦めていたのだが、魔王殿とその娘が我々を助け、開放しようとしてくださっているのだ。バジリスクたちもみなこの二人で…」
「よろしくな」
「初めまして」
俺とティラミスはそれぞれドリアードに挨拶した。
「は、初めまして…」
ドリアードは木の影に隠れて顔をちらちら見ながらぽうっと頬を赤らめる。
やべえ、まさしく地雷パターンだ。
「パパ上様!」
ティラミスが俺を揺り動かした。
「何だ、ティラミス…。いきなり」
俺はいきなり揺さぶられたので少しイラついた。
「だってパパ上様。今、白目を剥いてドリアードさんの方へ…」
「な、なに?」
やべえぞ。本人の知らないうちに取り込まれちまうのかよ。ティラミスよ、ナイス判断。
俺はもう少しでヤられるとこだった。
「ドリアードは魔王殿がお気に入りのようだな。どうだ、いっそのこと他の誰かを紹介するよりもーー」
ピーターは真面目な顔で俺に勧めてきた。
人身御供は御免です。
「パパ上様はダメです。絶対に…」
そうだ、ティラミス。もっと言ってやれ。
「そうか…。似合いのカップルだと思ったのだが…」
ピーターは肩を落とした。
「む…無念…」
ドリアードも生気のない顔で崩れ落ちる。
言葉の使い方間違ってんぞ、おい。
「まあ、そう急くな。俺が間違いなく速攻で見つけてくるから…。ところでここからニラレバの所までどのくらいかかるのだ?」
「ざっと…、20分ぐらいか…」
「そうか…。じゃあ、ちょっと倒してくる。往復と婿を口説き落とす時間を含めて…。40分時間をくれ。ここに婿を必ず連れてくる。ティラミスもここで待っておれ」
「でも、パパ上様…。お近くに見合い相手はいらっしゃるのですか?」
「ああ…」
俺はニヤリと笑った。
「では行ってくる」
「お気をつけて、パパ上様」
俺はティラミスに見送られ、森を走った。
程無く分岐点。ニラレバのいる方へ迷わず走っていく。
やがて、視界が開けて祭壇のある原っぱにでる。
「おい、ニラレバ出てこい!」
俺は誰もいない原っぱに向かって叫んだ。静まり返った草原に風の音だけが通りすぎる。
「とりゃあぁー 」
草むらに潜んでいた法衣を纏った連中が杖を片手に飛びかかってきた。
「雑魚に用はねえ…」
俺は範囲魔法で一気に弾き飛ばす。手加減してやっているがかなりのダメージを与えているはずだ。
しかし、雑魚どもは生まれたての子やぎのような足取りでふらふらになりながらも立ち上がり、更に歯向かってくる。
健気だが、子やぎには遥及ばぬ。可愛らしさの一欠片もない、おっさんどもだ。
俺は身の程をわきまえない奴は好かないので迷わず返り討ちにした。
今度は誰も起き上がってこない。
「ニラレバ、無駄だ。早く出てこい!」
俺は叫んだ。雑魚が挑みかかってくるのにボスキャラが敵襲をわかっていないはずはない。
「ふふふ…。少しはできるようだな…」
祭壇の陰から頭を丸め、小さなドクロを首飾り代わりにした細身の男が現れた。




