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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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嬉し恥ずかし初めてのプロヴォーグ

「どうだ、見たこともあるまい。俺様の新作魔法はお前らのレベルではまだ無理だろう」


ババロアはご満悦だ。


「バーカ、その魔法のお陰でテメエの命が救われたことがあるっていうのにめでてえ野郎だぜ」


カプチーノの独り言。ありがとう、俺の気持ちを代弁してくれて。


「ごめんなさい、なのです…」


場外退場中のマルガリータが地べたにへたりこんだままティラミスたちに謝る。


「気にすんな。お前が引っ掻きまわしてくれたお陰でババロアの奴を慌てさせることができたんだ。時間がくればまたフィールドに戻れるしな…。とりあえずそれまでは俺が回復に回って何とか凌ぐ。モナカ、盾を頼むぞ」


カプチーノがマルガリータをフォローする。


「ふにゃん?」


「へえ、珍しい…」


ピーチが所定の位置に戻りながらニヤリと笑う。


「カプチーノ、ババロアたちが一気に攻めてきた」


モナカが剣を構える。


「モナカ、なるべく多くの奴を引き付けろ!俺が回復する。他の奴らは灯籠を気にしながら、モナカに群がったやつらを処理してくれ」


「あい!」


粉塵を巻き上げながら走ってくるババロアたち。


一際大きなモナカの喉仏が上下に動くのが見える。


モナカの周りにはたちまち敵が集まり、輪となって集中砲火を浴びせる。

カプチーノたちはモナカが倒されぬように回復や補助魔法で守備力を固めるが多勢に無勢。


あっという間にHPが削られていく。


「うわぁ、やられる」


モナカは必死に剣を振り回すが、動きが遅いので全てかわされる。


「モナカん!」


外野のマルガリータが叫ぶ。


「おし、4ポイント目もらった!」


陣営の後ろでババロアが雄叫びをあげた、その時ティラミスの範囲魔法が炸裂した。


「ファイヤーエレメント!」

頭上に放たれた炎の火柱は、花火のように空中で破裂し、モナカの周りにいたババロアのチームメートに降り注ぐ。


「わっ、っちっち!な、何だ?たかがファイヤーエレメントだろう?なんでこんなに威力があるんだ」


「いけー、ティラミス様ぁぁぁあー」


トリュフがズッキーニの首を絞めながら熱狂して叫びまくる。


コイツ、格闘技観ると燃えるタイプなんだな…。かなりうるさい。終わるまで叫び続けていたが以後は割愛する。


ファイヤーエレメントの追加効果による毎秒ダメージが一分続くが、ティラミスのレベルでは全回復の魔法を一分絶え間なく送らねばたちまちHPがカスカスになってしまう。


相手は回復に専念するしかない。


その間にカプチーノがモナカを引きずり安全な場所へ移動し、回復する。


最初にキルされた味方がマルガリータを含め、フィールドに戻ってくる。


ポイントの差はあるものの人数のハンデはなくなった。


カプチーノはほっと一息つく。


相手はまだ回復に手をとられている。カプチーノは飛び出していこうとするが、ピーチが止める。


「待ちな…。慌てる何とかは貰いが少ないよ。あたいのバフぐらい貰っていきな」


陣営に戻ってきた仲間たちにピーチが補助魔法の通称、バフをかけていく。


攻撃力、守備力、素早さ、最大HPが通常の3割増しになる。


「行ってきな!」


ピーチがウィンクで合図を送ると形勢逆転とばかりにカプチーノたちが攻め込んでいく。


「っきしょうめ、まずは魔娘だ!アイツを何とかしろ!」


「了解!」


カマスは二人を従えて、ババロア陣営の灯籠に一足先に乗り込んできたティラミスに襲い掛かる。


「本気でいくぞ!」


カマスが斬りかかるのを合図に入れ代わり立ち代わりティラミスに襲い掛かるがティラミスは涼しい顔をして半歩程度ですべてかわしていく。


「なに遊んでんだ、カマスしっかり狙え。たかが魔娘ごときに当たらねえわけないだろう!」


カプチーノを迎え撃ちながらババロアが叫ぶ。


「ババロア様、わかってるんだけど。想像以上にこいつすばっしこいです」


「あの野郎、さてはピーチに強力なバフでももらいやがったな。--当たらないならプロボを順番にかけまくれ。反撃させずに足止めに徹するんだ」


カプチーノがババロアの頭に剣を振り下ろすとババロアは左手の小さな盾でそれを受ける。


「ずいぶん余裕じゃあねえか、ババロア」


「なあに、お前ひとりの相手なら魔導書の本を読みながらでも十分だぜ」


ババロアとカプチーノ死闘の後方ではモナカたちが灯篭を攻めに乗り込んできたババロアのチームメイトたちを蹴散らしていく。さっきのように1対7とは違い6対4。態勢も分がいい。キルこそ至っていないが押し返している。


一方のティラミスはと言うと・・・。


三方を囲まれプロヴォーグを浴びせられている。プロヴォ自体は相手のヘイトと呼ばれる憎しみ(相手への注意度)を増す程度なので特にダメージを受けるわけではないので問題はない。


しかし、的が絞れずにティラミスは相手の間を行ったり来たりしている。


それにしてもティラミスの奴は何をしているのか?


本来ならちゃちゃっと範囲魔法で片付けるか、はたまた疾風の如く熨してしまうかして灯籠を狙えるはずなのに…。


俺がそう思っていたとき、ティラミスが口を開いた。


「私、いかがいたしましょう」


棒立ちだ。心なしか頬が赤い。


「構うことねえ、ティラミス。お前の実力ならそんな相手、三人ぐらい簡単にひねっちまえるだろうに」


ティラミスにかまけて、手が疎かになったカプチーノが防戦一方になる。

「はははっ!ムダだ、ムダだ。カマスら三人はトップクラスのアタッカーだ。魔娘ごときにやられるか…。どうした、カプチーノ?お前の足の方が止まっているぞ」


「くっ。ーーん、あああ」

カプチーノが突如よろめいて倒れる。ババロアに気をとられて背後から援護したババロアのチームメイトに転倒の呪文をお見舞されたのだ。


ババロアは剣の露払いをすると、足下に倒れ込み、起き上がれないカプチーノにゆっくりと近づく。


「言っただろう?足下に注意しろと…。チーム戦だぜ、闘技場は」


鈍足、転倒のコンボにカプチーノはなすすべもない。


ババロアが剣を振りかざした。


が、またしてもティラミスの大きな声に邪魔される。


「どうしましょう!私、初めて殿方からプロヴォーグをされてしまいました」


「はあ?」


貝を通さなくても会場中に響き渡ったティラミスの声にフィールド内から呆れた反応が返る。


「マルちゃん、それも三人からですよ、三人から!」


「ちょっと羨ましいかも…」


「これは、血痕を前提としたどつきあいと解釈してもよろしいんですよね?」


なんか、プロポーズされたみたいになっちまったな…。


「い、いいんじゃあねえか。た、多分…」


「その返事を待ち焦がれておりました。ではここより遠慮なく」


そう言うが早く、カマスたち三人を2秒ずつで仕留める。


ポイント差が1に縮まった。


残り時間は3分。痺れ兎が大量に投下される。


元気よく跳ね回る兎は戦いの最中のモナカたちにも敵味方関係なく襲い掛かる。


「うわっ」


「きゃっ」


痺れて動けなくなる者が続出。ティラミスの他、味方ではピーチとババロアに対峙しているカプチーノだけがすり抜ける。

対するババロア陣営は一人の脱落者も出さずに痺れ兎を狩りながら、ピーチを追い詰めていく。


「よし、いいぞ!ーーん?」


ババロアはご満悦の表情のまま前のめりに沈んだ。


後ろからティラミスのファイヤーボールを、前からカプチーノの強烈な一撃をもらいノックアウト。見事キルされた。









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