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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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闘技場のルールをば

魔道学院。進学してすぐに行われるのが新入生と在校生の交流を深めるための対抗戦。闘技場と呼ばれるグランドのような場所で行われる競技がある。


東西各々の8人のチームに分かれ、相手のチームの陣地に置かれた3つの灯籠全てに火を灯せば勝ちとなる。


灯された火は消してしまっても構わない。途中で相手チームのプレイヤーの邪魔をしてキル(この場合、HP1の状態に)した時は、チームに1ポイントが加点される。


キルされた者は一定時間がくるまでは退場。


時間までにどちらのチームも灯籠全てに火を灯せなかった場合、勝敗は灯籠に灯された火が多い方が勝ち。同じ数の灯籠の火が灯っていた場合はキル数。同点、もしくはどちらも点が入らなかった場合、延長。どちらかが灯籠に火を灯すか、キル数を稼いだ時に勝敗を期す。


尚、闘技場のフィールド内にはどちらの味方にも属さないお邪魔虫、痺れ兎が投入される。


コイツを倒すと3ポイント入る。

しかし、すばっしこい上にタッチされると30秒間動くことができなくなる。


普段はあまり授業を見ることが出来る機会は少ない。


しかし、この時は父兄の参観が自由に認められる。俺はティラミスの普段を知りたくてショコラを伴い、学院に赴いた。


野球場のようにぐるっと囲まれた観客席。俺は一度高い位置にある席から眼下に広がる選手たちを見下ろした。


「あっ、あそこにティラミスちゃんたちがいるわ。ねえ、魔王様」


視力がやたらいいショコラが場内の隅でウォーミングアップしているティラミスたちを指差す。


「もう少し観やすい場所に移動するか」


俺たちはまだ疎らな人波をすり抜け、両軍が左右に見渡せる中ほどの席についた。


「ティラミスちゃんに魔王様の席を教えてくるわね」


ショコラがひとっ飛びでティラミスの元へ飛んでいく。


ショコラが何事か話すとティラミスはショコラが指差す方を見た。


そして目を細めると目で順に席を追っていく。


やがて俺に気づいたのかこっちに向かって手を振った。


俺も手を振り返す。


ショコラはそれを見届けるとティラミスから何かを受け取り、こちらに戻ってきた。


「魔王様これを…」


「何だ、これは?」


ショコラが俺に手渡したのは手のひらほどの貝殻。その中央には半分欠けた緑色のオーブが嵌め込まれている。


「風のオーブが装着された相手の会話を聞くことの出来る貝ですの。聞くだけの一方通行ですから会話はできませんけど、これがあればプレイ中のティラミスちゃんたちの会話はある程度わかりますわ」


「なるほど、これは便利だ。ーーそれと大事に両手に抱えているその本は何だ?いつぞや見たことのあるような…」


「ああ、これ。これはティラミスちゃんの大事な母上様の形見の日記」


「何だ、あいつはいつも持ち歩いているのか?」


「ええ、そうよ。いつも母上様が見守ってくださるような気になるんだって…。でも不思議。私、預かるとろくなことがないんですもの。足に落としたり、手を挟まれたり」


ショコラが口を尖らす。


「ーーところで、ティラミスだけゼッケンをつけていないが…」


「補欠なんですって」


「補欠?なんでまた、あいつが?」


「何でも、試合前に測った計測値が異常だったとかで、あり得ない数字で無効になったみたいなの…。HPとか、攻撃力とか全ての数値が」


異常でも何でもねえよ。だが、出れないのでは話にならない。せっかく観戦に来たのにがっかりだ。


「何だ、お嬢出られないので…」


「抗議です、これは断固抗議です!」


「ティラミス様、おいたわしや…」


「何だ?お前たちいつのまに」


いつの間にやらズッキーニたちもティラミスの応援に駆けつけていた。


旗やらのぼりまで用意してきている念のいれようだ。


「ふむ・・・。これでは帰るほかないか」


俺はため息をついた。ちょうどその時だった。


「あ、魔王さまあん。ちょっとお待ちあそばして」


人差し指を唇に当てて耳を澄ますようにショコラが促す。どうやら貝殻から向こうの会話が聞こえてきたらしい。俺が貝殻に耳を近づけるとズッキーニたちも一斉に近寄ってくる。


押し競まんじゅうのように貝殻に神経を集中させる。


「しぇんぱい、お体のお加減はいかかなのですか?まだお熱が引かないようです」


「いいや、だ、大丈夫・・・。僕がいなければこのチームは歴史的敗北を喫してしまう。ただでさえ史上最弱といわれているのにそのうえ恥の上塗りなんて僕は親になんて顔向けしたらいいんだ。いくらワールド最小国の貧弱王子とはいえこのままババロアに、しかも年下のあいつに負けるなんて僕には耐えられない」


「いいんじゃない?いっそ言い訳つくもの。どうせ私たち弱いんだから」


「ピーチ!お前って奴は・・・。あたたたた。頭痛が、頭痛があああ」


「しぇ、しぇんぱーい!」


大丈夫か?マルガリータと先輩との会話が飛び込んでくる。チームメートであろうか、ピーチという知らない名前の女の子も登場してきた。


「先輩、無理ですよ。寝ててください。俺たちで何とかしますから」


カプチーノの声だ。


「補欠ちゃん、いるじゃん。魔王の娘なんだってね。面白そうじゃん、入れてみようよ」


「試合前の測定はどうすんだよ。測定基準値内じゃないとフィールド内には入れてもらえないぞ」


「そこはなあ・・・。モナカ」


「HPを三分の一削ってそれを測定中だけ維持すれば何とか行けると思います」


モナカのまじめな返事が返ってくる。


「何か、面白そー・・・。私も混ぜてモナカん」


「バカ、遊びじゃねえんだよマルガリータ!」


「ふえん、怒られてしまったのです」


「じゃ、測定終わったら後でねマルちゃん」


ティラミスの声だ。


「わあいやったー」


マルガリータの嬉しそうな声が聞こえる。飛び上がって喜んでいる姿が目に浮かぶようだ。


おい、ティラミスよ。命を粗末にしてくれるな。パパはとっても心配です。まあとりあえず、出場できそうだからいいか。


俺たちは顔を見合わせると安どのため息とともに席に着いた。


選手たちはいったん計測のためにフィールドの奥に引っ込んでいった。しばらくすると選手たちが両サイドから姿を現した。

「ようし、上手くごまかせたぞ」


「作戦成功ですね。ーーってマルちゃんとティラミスさんは?」


モナカが辺りを見回している。するとフィールドの隅で怪しい動きをする二人を発見して慌ててとんでいく。


その様子に気づいた観客も目線をそちらに送る。

「いーどー(移動)巻き巻き。いーどー巻き巻き。引いーて、引いーて、トントントン…」


不思議な歌を口ずさみながらマルガリータはティラミスに向かってブリザードの魔法を放っている。


どうやら引き撃ちというマジシャン特有の動きを練習しているようだ。


鈍足効果のある魔法を最初に放ち、相手の足を止めている間に攻撃魔法を撃ち込み、反撃の隙を与えずに敵を倒す。


体の弱いマジシャンの常套手段だ。


「そそ…。その調子」


ティラミスはマルガリータにOKサインをだす。


「な、なにやってるの。マルちゃん、もうみんな整列しているから」


「わちゃー。観客さんもみんな大注目なのです。恥ずかしいよ、ティラミスちゃん」


頬に手をあて、マルガリータは遠くからでもわかるような真っ赤な顔になる。


観客席からどっと笑いが起こる。


「早くこいよ!」


カプチーノが手招きする。


三人はフィールドの中央に集まる両軍の元へ駆けていく。


途中、マルガリータは三回こける。








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