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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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俺が魔王になるまでを語る 面倒なので爆破予告

「じゃあ、ちょっくら魔王倒してくる」


俺はサラと王様、兵士たちに盛大に見送られ、城を後にした。魔王に宣誓布告するため、王様はキメラを伝書鳩代わりに飛ばした。最強の勇者を魔王討伐のために派遣したのだと……。


王様の話では一年ぐらいかかる長旅になるらしい。俺は一刻も早くかったるい魔王退治をちゃちゃっと済ませ、サラとの幸せな家庭生活を送るため走っていった。


自分でも驚くスピードで俺は街道を駆け抜けていく。途中試し斬りを兼ねて強そうなモンスターを刈っていく。


瞬殺。マジで気持ちいい。俺の足取りもいいリズムで速くなっていく。


三ヶ月もすると俺は魔王の根城のすぐそばまで来ていた。


この頃になるとモンスターたちにも俺の顔は広く知れわたっていてアイツらから俺の姿を見かけると逃げ出すようになっていた。


途中で人助けを山ほどやったお陰でガラクタやら金はたくさん有り余っている。


俺は暇なので広大な敷地でモンスターを飼育し始めた。


モンスターといえど大型の動物。チートな俺にとってはちょっとしたペットにしか過ぎない。


餌と懲罰。飴とムチ。徹底した俺の管理能力でモンスターたちを手懐けた。魔王の根城に君臨するモンスターと数種類を除いてはほぼ完全掌握した。


本当は完全に掌握してしまう予定だったのだがやはり一筋縄にはいかない。例えば死人系のモンスターがそれだ。いわゆるゾンビって奴、これは全く融通が利かない。


何度うちのめそうと歯向かってくる。言葉も解さない。いくら俺がチートで瞬殺できるといっても出会うと集団が多いので非常にうざったい。


後はドラゴン。首長の恐竜のような身なりで鋭い牙と爪、硬いうろこが特徴の生き物だ。ウザったいことに種族によっては炎や吹雪を吐きかけてくる。


ドラゴンだけはプライドが高いのか餌付けが難しい。手懐けたと思って油断していると急に襲い掛かってくる。


何度か試みたが飼いならすことをあきらめた。


そうした何種かのモンスターをなぜ俺が掌握したのかというと別に動物園をやるためではない。


一つには人々がモンスターに襲われる確率を下げるためだ。無駄な軋轢を避けることが平和の第一歩だ。


そして、もう一つ。敵対勢力を減らし、敵を絞り込み魔王を孤立化させていく。


俺の目的はほぼ達成されたが、思ったより手が掛かった。


って言うか、ダルい。


雑魚を狩り続けるのがかったるいから手なずけたのだが、かえって時間と労力を使ってしまった。

我ながら情けない。しかし、ここからが本番。俺は巻き返しを図るため、魔王の根城に向かった。

聳え立つ城は空に向かって一直線に伸びている。

その先端たるやうかがい知ることは出来ない。


異様に暗い外観と蔦やらの絡まった石造りの城壁は御約束とはいえ恐怖を煽るのに余りある。


恐らく内部には色々な仕掛けがてんこ盛りだろう。


いちいち魔王の思惑に嵌まっている暇はない。


城の内部であたふたして魔王を喜ばせる義理があるわけでもない


俺はもう一度、魔王の根城を見上げた。


世界征服だか何だか知らないが偉そうに下端のモンスターをただで顎でこき使い、ふんぞり返っている態度が気に入らない。


そんなに最強なら自分で乗り込んでこいよ、魔王なら。


モンスターにだって家族はいるし、戦いを好んでいるものばかりではない。


平和で餌にありつけ、笑って暮らせるならそれにこしたことはないのだ。

飼い慣らしたモンスターたちを見て俺はそう思った。


無論、言葉自体モンスターが理解しているわけではない。しかし、話せば通じるし、危害を加えられないと解れば無闇に襲ってきたりはしない。


それに茶目っ気たっぷりで可愛くもある。


俺はだんだん魔王に対して腹が立ってきた。


「魔王に告ぐ。今からお前を倒す。ーーその前に城にいるモンスターに告ぐ。即刻俺に寝返ろ!そうすればお前たちの命、身分、財産全て保証してやる。ーーさもなくば…、斬り捨てる」


お手製メガホンを使い、取り敢えず煽ってみる。これぐらいで狼狽えるようなモンスターはさすがにいない。


「ほう、無視かい。なら、よーく聞けよ。この城はあと一時間以内に爆破する。そして…、この声を無視できるのかな?諸君!」


俺は後ろに立っていた者たちにメガホンを渡す。


「あんた!」


「おとうたん!」


「あにやん!」


みな涙ながらに口々に叫ぶ。親、兄弟、親戚、子、孫、恋モンスターに配偶モンスターありとあらゆる縁者に俺は思いを語らせた。

もちろん、俺に着くとどんだけメリットめじろ押しかを折り込ませる。


次第に城の窓からモンスターたちが顔を覗かせる。


「爆破3分前!」


俺は追い討ちをかける。

モンスターが一斉に投降を始める。


予想以上の効果に俺も驚いた。


投降してきたモンスターに中の様子を聞くと殆どモンスターたちは残っていないらしい。


俺は爆破を決め込んだ。




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