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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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ドラゴンファミリーそろい踏み

「これ以上はダメ!」


ティラミスがババロアと桜ドラゴンの間に入る。

ティラミスは両手を目一杯広げ、ババロアをじっと睨みつける。


「どけ!このババロア様に盾つこうとは無礼な輩め。ーーなんなら、お前が俺の相手をするか?学院では運よくたまたま俺を毎回負かしてくれたが、ここではそうもいくまい…」


ババロアはティラミスの頬を剣の腹で軽く叩く。


ティラミスは身じろぎ一つしない。相変わらずババロアを睨んだままだ。


「恐いか?そうだろうな…。なんせ、サシの相手がこのババロア様なのだから…」


ババロアは高笑いをはじめた。その後ろでは草むらがガサガサと忙しい音を奏ではじめる。


何事かと手下たちが振り向く。


大きな影が4つと小さな影が8つ。その影の主を辿れば、静かだが確実に怒りを露にした桜ドラゴンたちが勢揃いしていた。


親父にお袋…。じいちゃん、ばあちゃん。兄貴に姉貴に双子の弟、妹が四匹…。ありゃ、ババロアは完全に死ぬぜ」


気がつくと俺の隣にはカプチーノたちとトリュフが集まっていた。


「うわわわわ」


腰から崩れ落ちたババロアの手下どもは四つん這いでティラミスの横を駆け抜け、草むらの中に逃げていく。


「おい、お前らどこに行くんだ?たかが女一匹ぐらいで腰を抜かして逃げるとはだらしねえ。戻ってこないと報酬はやらねえぞ」


まだ状況を把握していないババロアは手下どもに叫ぶ。


「女一匹…ではありません」


「はあ?お前以外に誰が…。ーーははあん、わかったぞ、あの木の向こうにカプチーノたちがいるな。魔王もいるのか…。よってたかって俺様を叩こうって魂胆か。さすがは魔王の娘の考えそうなことだ。何をやっても俺様に敵わないものだから、とうとう卑怯な戦術に討ってでたか。だいたい君という奴はーー」


「オスメス取り混ぜて…。ざっと12匹…」


ティラミスは上目で数を数える。


「オスメスだあ?何だ、アニマルみたいな数えかたしやがって…。まあ、君たちにはお似合いだけどな。だっはっはっは!」


親父の桜ドラゴンだろう。眉間にシワをよせ、目を三角にした一際でかい竜が首を低くして、ババロアの首元に顔を近づける。


他のドラゴンもそれに従う。


「な、なんだ。急に…、首もとが生暖かいぞ。それに妙な湿り気が…」


ババロアは首もとを拭った。ただならぬ雰囲気とティラミスの目線の先。


ババロアよりはるか高いところを見据えていることにようやく気づく。

うなり声。デュエットでもトリオでもカルテットでもない。


ババロアの額には汗が一筋。


「と、時に。ティラミス君」


「はい?」


急にババロアの口調が丁寧かつ大人しくなる。


「ぼ、僕の後ろには一体何がそびえたっているのだろうねえ…」


「ご自分のなさったことでしょう?ご自分の目でお確かめになられたら?」


ババロアは喉を鳴らすと、そろりと振り返る。


「ガァアアアアー」


ババロアが振り返るなり、長身の親父ドラゴンが前足の鋭い爪で襲い掛かる。


それを合図に他のドラゴンたちも一斉にババロアに牙をむく。


「うわあぁあぁあ」


ババロアは叩かれて、転がると集中攻撃を浴びる。


「ウィンド・エスケープ!」


ティラミスが咄嗟に呪文を唱える。ババロアは風に運ばれ、安全な俺たちのもとへ飛んでくる。



尻餅をついて着地したババロアは傷だらけでへばっている。


「た、助かった…。きっと日頃の行いがいいから天が俺様の味方をしてくれたんだ。それに引き換え、ティラミスの奴はドラゴンに取り囲まれて突っつき回されてやがるぜ…。ざ、ざまあ…み、みろ」


そこまで言うと、ババロアは気を失った。どうやらティラミスが助け船をだしたこともわかっていないらしい。



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