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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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俺が魔王になるまでを語る4

城へ到着すると屈強な門番が長い槍を構えて立っていた。俺が近寄ると無表情のまま行く手を阻み俺ののど元に槍をあてがった。


「どこへ行く」


門番は威圧的に言葉を放った。


「城」


権威を傘に高慢な態度をとるやつが嫌いだ。俺も負けじと一歩前に歩み寄る。


「何奴、用を申せ」


門番も負けじと俺ののど元に突き付けた槍を軽く押し込む。


「王様に呼ばれた。王女からの推薦でな。ここに証拠もある」


俺はズボンのポケットから指輪を取り出した。


「どれ」


門番は受け取ると指輪を品定めし、鼻で息をつくと忌々し気に「通れ」と道を開けた。


どこまでも横柄な奴らだ。俺が国王についた暁にはあいつら二人首にしてやる。


大体国王の威光がなけりゃあ、あいつらだって……。


あ、俺もそうか。そう思うと何だか門番に親近感がわく。


「お仕事ご苦労!」


俺は門番の背中を叩いて労うと、まっすぐ城の中へ消えていった。


旗なのだろうか。赤に鳥を模した紋章のようなものが描かれている。


そいつが通路の至る所に飾られている。


石畳の石は凸凹もなく、綺麗に揃えられ、磨きあげられていた。


大きな噴水の周りには気品ある婦人と老人が語り合い、その真っ直ぐ先には扉が見えた。


その奥には塔のようなものが聳え、上の方には窓が見える。おそらくサラはあの辺りにいるのだろう。



俺はとりあえず扉を目指して歩き始めた。


「ニート様!」


目指す方向から俺を呼ぶ声がした。


俺が目を凝らすと、扉の前でサラが大きく両手を振っていた。


俺も手を振りながらサラに走りよる。


「地図があって助かった。あと…この指環」


「あ、ありがとうございます」


サラは差し出した俺の手から指環を受け取った。

心なしか顔が赤みを帯びている。


「と、とりあえず、お父様に…」


サラはそう言うと大胆にも俺の手を引き、扉を開け、歩き始めた。


俺は成されるがまま付き従う。


暗くて冷たい石畳をしばらく曲がりくねりしながら進むと階段に到達した。


階段を上っていくとやがて大きな広間に出くわす。


赤い絨毯に厳かな椅子とテーブル。そこに腰掛けるのは王冠を被った一人の男。


「父上、この男性(ひと)です」


「君がサラの言っていた勇者か……」


王様というより背広でも着ていたらまんまサラリーマンといった感じの中肉中背の眼鏡をかけたおやじだ。王冠にマントさえつけていなければ気安く声をかけてしまうほど威厳がない。


髭とか豪快さとか王の資質とかオーラも微塵も感じられない。


「ニート様」


王様に呆気にとられていた俺をサラが肘でつつく。


「あ、はいそうです」

「そうか……。--魔王の件はサラから聞いているな。さっそくだが魔王を倒してきてほしい。装備と支度金だ。最近は勇者を語る不届き物も多くてな。城に現れては金の無心に来るものが後を絶たない。魔物のせいで交易も縮小し、財政もひっ迫しておる。ゆえにこれが精いっぱいなのだ。許してくれ」


俺は王様から直々に金を手渡された。


宝箱ではない、包み込むような渡し方に王の気持ちと大人の事情ってやつを俺は感じ取った。俺は無言で金を押し返した。


「?」


「これは民のために……。俺は装備さえあれば充分です」


俺はどや顔でサラを見た。サラもうるんだ目で俺を見つめる。よし、ワンポイントアップだ。俺は心の底で小さなガッツポーズした。


「う、うう……。なんと強き勇者。この王、打たれたぞ。そなたの言葉に強く打たれたぞ。--これへ!!我が城に眠る最強の装備を!!」


兵士たちが慌ててどこかへ散らばり方々から剣と鎧、盾を持って集まってくる。


「ささ、ニート様」


俺の前に並べられた剣をサラが差し出す。俺は鎧、盾を装備し、最後にサラから剣を受け取る。


よし、これで何とか恰好ついたぜ。俺は剣を高く掲げた。


「ご立派ですわ、ニート様」


「お、おう」


ここはお約束の文句で答えた。魔王の根城について説明を受け俺は旅立った。


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