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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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ティラミスのゆかいな仲間たち

二時間後、ティラミスは馬車の列を連れだって城に戻ってきた。


「皆さん、お疲れ様です。無事魔王の城に到着しました」


ティラミスが元気はつらつに馬車の群れに向かって声をかけるが、返事はない。まるで屍のようだ。


心なしか馬まで激しく息を切らしている。


「皆さーん?」


ティラミスがもう一度静かに問いかける。


「ふにゃー」


手前の馬車から目を回して数人が雪崩のように滑り落ちてきた。


「こ、これはこれはおじしゃま…。お、お久しぶりです。ふにゃー」


見知ったブロンドカーリーの少女が地面にへばりついたまま俺に挨拶する。ドジッ娘のマルガリータだ。


他の雪崩一団も釣られて挨拶する。


「ああ、いらっしゃい。随分お疲れのようだが、皆さん大丈夫かね?」


俺が挨拶をしている間にも次々とあちこちの馬車から雪崩が起きる。


「うーん?」


ティラミスは首を捻る。

「何かあったのか?」


「いえ…。水先案内人としましては一秒でも早く城にご案内したいと思いまして走りましたら皆さんあのように…。馬がバテるだけならまだしも皆さんまでああなるとは…」


「そ、そうか…」


ティラミスよ。お前にとっては何でもない旅路かもしれないが、お前の通学路は山あり谷あり、崖につり橋、毒の沼、果ては迷路のような洞窟に落とし穴…。尋常な場所でないことだけは承知しておいてくれ。


仮に最短距離をとって森と砂漠を越えたとしても切り立った岩山を一つ越えねばならない。


度々遊びにくるマルガリータたち数人は大抵、各々が飼っているキメラの背中に乗ってやってくる。


だから陸路でくる恐ろしさを知らない。今回は大所帯だし、せっかくなら勇者が辿る正規のルートを走破しつみようということになったらしい。


途中のアニマルたちは恐らくティラミスが掃除したのだろう。猫の子一匹出会わなかったらしい。

念のためルートにアニマルが立ち入らないようにバリアの役目を果たす聖水を撒いたに違いない。

それでも皆へばっている。


「皆さん、休憩なら中でゆっくりできますから…。とりあえず城の中へどうぞ」


ティラミスはマルガリータの両脇を抱えて起こした。


「はーはっはっはっ。き、君たちはこ、こんなことでへこたれて。ほ、ほんとにだ、だらしない奴らだ」


遠くの馬車から頼もしいが弱々しい声で剣を杖がわりに千鳥足で近づいてくる若者が一人。


王冠にマント。白づくめの衣装。ババロア・プリンスだ。


「ようこそ」


嫌いな奴でもゲストはゲストだ。俺は挨拶をした。


「ふん。お、お前なんか世が世なら、お、お、俺様のお、親父様が、た、た、倒しているところなんだからな…。王国会議にで、でられるだけでも、あ、ありがたいと思えよ」

「ああ、わかっております」


俺は頭を下げた。って言うか、親父じゃなくてお前自身で倒しにこいよ。死なない程度に瞬殺してやるから…。


その剣を外せばどうなることか、迷わず外せよ、外せばわかるさ…。


外すぞー。


俺はそう心の中だけで叫んでいた。


「ふん…。くだらねえ」


誰かがババロアを抜き去りがてら小声で呟いた。

「くだらないだと!貴様、レベル1ヒヨコクラスの分際で、このババロア様に盾つこうっていうのか?カプチーノ」


「独り言だ…が。ババロア、お前のことだと思ったのか?そんなにお前のことなんか気にも留めてねえよ」


カプチーノはニヤリと笑った。ババロアは顔を真っ赤にして怒っているが、カプチーノはもう相手にはしていない。


「おっさん…。こいつ、馬車酔いが酷くて…。休めるとこねえかな」


カプチーノは自分より二回りでかい学生服姿の緑の巨人を抱えていた。


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