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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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パシェリ御開帳

「すまんな。何度か声を掛けて、ノックもしたのだが…」


俺はティラミスに気づかれないように机の上へサラの日記を戻した。


「ここは私の部屋でつよ!」


ティラミスはベッドをしきりに気にしている。どうやら部屋に無断で入られたことと一匹部屋に残したパシェリのことに気を取られているようだ。


俺が日記を手にしたことはバレなかったようだ。


「ふむ…。確かにここはお前の部屋ではあるな…。だが、しかしーー」


俺は目線をベッドに移した。


「しかし、何でつか?」


ティラミスは蟹歩きでベッドに移動すると、ベッドに出来た小高い山を両手を広げて隠す素振りをする。


ティラミスの小さな体では到底隠しきれない。


「俺はこの城の主でもある。この城に住む者たちから苦情がくればそれを確かめ、処理しなければならない義務がある」


「な、何の苦情でつか…?わ、わわ、私は何も悪いことしてないでつよ」


ティラミスは汗をかきながら半歩ベッドへ後ずさった。両手だけは相変わらず目一杯広げている。


「なあに…。この部屋から毎晩奇妙な鳴き声やら暴れる音がしてくるというのでな…。確かめにきたのだ。よもや…、鳥でも飼っているわけではあるまいな」


俺はニヤリと笑いながら、ティラミスに歩み寄っていく。


「ーーベッドで何か蠢いているようだが…気のせいか?」


俺が指摘した瞬間、ベッドの上にある小高い山が細長く縦に伸び上がった。


人間の言葉を完全に解しているわけではないだろう。しかし、俺の足音と声のトーンで身の危険を感じたのだろう。


パシェリが布団の中で背筋を伸ばしたまま固まったようだ。


俺はその仕草を想像して吹き出しそうになったが咳払いをして堪えた。


「き、気のせいでつ。か、仮にもレ、レディの部屋に土足でずかずか入り込んだ上にベッドまでぶ、物色しようなんて、へ、変態でつよ。それ以上近寄ったらう、訴えまつからね」


ジリジリと引き下がるティラミス。ベッドの側面がふくらはぎに触れ、後ろを少しだけ振り返った。


「何の山だ、それは」


俺がティラミスの後ろを指差す。


「こ、これはぬいぐるみでつ。ショコラが作ってくれた…。ーーだから、ティラミスはキメラなんて隠していません!」


「キメラ…とな?」


ティラミスは、ハッとして口に両手をあてた。


「ーー俺はただ『鳥』と言っただけだが…」


「違います!違うのでつ!キメラじゃなくてぬいぐるみなのでつ!」


ティラミスは嫌々をしながら布団の山を両手で抱き抱える。必死に押さえ込むものだからパシェリのクチバシはもちろん、背格好までシルエットが浮き出てしまった。


「素直に白状すれば、俺は怒らない」


俺は腰に手をあて、鼻で息をついた。


「嘘でつ!魔王はウソつきだから、ティラミスを騙し討ちする気でつ。パシェリも食い殺す気なんでつ」


「俺はキメラなど食わん。ペット一匹のことで叩きもしないし、怒りもしない。約束だ。ただ、話があるだけだ」


俺はどかりとその場に座り込み、あぐらをかいた。


「本当でつか?」


「ああ、本当だ」


俺はわざとらしく大きく頷いてみせた。


「本当に本当でつね?約束破ったら承知しないでつよ」


ティラミスはようやく観念してパシェリをなだめながら、布団をめくった。


銅像の除幕式のようにパシェリが姿を現す。


パシェリにとって俺は外敵に他ならない。それが目の前に鎮座し、睨みを効かしているのだからたまったものではないだろう。


パシェリの目はガン開き状態。クチバシは縦長の楕円形。姿勢は気をつけ。つま先だち。微動だにしない。完全にフリーズだ。


「ふむ、これがパシェリというキメラか…」


俺が本題に入ろうとした時、ティラミスの部屋のドアがノックも無しに大きく開いた。


「はーいティラミスちゃん」とか「お嬢、例のブツ持ってきやした」 とか「頼まれていたチーグラーです」とかお馴染みのメンバーが顔を覗かせた。


ティラミスは三人の顔をみてタイミングの悪い時に、と言わんばかりの渋い表情を見せる。


人指し指を立てて、唇にあて鼻の頭にシワを寄せ、三人を牽制する。


俺はティラミスのその様子を見てみない振りをした。


ーーと、そこへもう一人。ズッキーニが背中にリュック、左手に首輪を持って現れた。




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