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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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ズッキーニ、ごくろうさん

ティラミスが立ち去った後、俺は一人で廊下の清掃をしていた。



まさか魔王になってまで掃除をすることになるとは思わなかった。


巣籠もり中のスライムたちには危害が及ばなかったのは不幸中の幸いだ。

俺は最後に絨毯を敷き直し、大きくため息をついた。


「魔王様も大変ねえ」


見上げると、窓枠に腰かけるショコラが頬杖をついて微笑んでいた。


「何だショコラ、見ていたのか…。人がいや悪魔悪い。手伝わぬか」


「働いている魔王様もす・て・きなんですもの」


「からかうな、ほれ」


俺は片付けた残骸を放り込んだゴミ袋をショコラに投げた。


ショコラは背中の羽を羽ばたかせ、ゴミを両手で受け取った。


「ねえ、魔王様。前から聞きたかったのだけど魔王様とティラミスちゃんのお母様とはどういう関係なの?お知り合いみたいだけど…」


「サラか…。ふむ…」


大臣のズッキーニには世間話としてサラについては話したことはあったがショコラにはまだ何も話してはいなかった。


俺はサラとの出会い、勇者としてここにきた経緯をショコラに話した。


「・・・というわけだ」


「ふーん…。何だか妬けちゃうわ」


ショコラは頬を膨らませた。尻尾は円を描いている。こういうとき、決まってショコラは不機嫌なのだ。


「昔の話だ」


「でも、ティラミスちゃんにその話してあげればいいのに…。ティラミスちゃんも魔王様がカタキではないとわかったら、無闇に挑んできたりしないでしょう?それに魔王様はそのサラさんって人の恩人なのですから」


「感謝こそすれ、憎まないということか…」


「ええ」


「ーーしかし、それではショコラの怒りの矛先はどうなる?カタキの魔王は俺様に瞬殺されてしまったあと。帰るあてもない。一人何を目標に生きていけばいいかもわからない。ましてこの荒野で幼子が生きていけるかわかったものではない。それよりも俺を憎むという目的をもってここにいる10年で強く逞しくしてやることだ。そうすればきっと新たな道を見いだそう」


「魔王様ったら」


ショコラは呆れたように鼻から息を吐く。


「なあに…、案ずるな。あんなヒヨッコに殺られるほど弱くはない。何たって俺は最強だからな」


さっきはマジで危なかったというのは置いておこう。


「魔王様、す・て・き」


ショコラがぴとっと背中につく。尻尾を器用に左右に揺らす。


「わっはははは」


自分に酔ったっていいじゃないの、だって魔王だけど人間だもの。


相田みつをのパクリが飛び出したところでズッキーニが現れた。


廊下の向こうからこちらを見つけて、歩み寄ってくる。


「魔王様ちょうどよいところへ」


ズッキーニはヘルメットを被り、籠をもっていた。


「どうした?昆虫採集か」

「いえ、鳥というか…キメラの巣を撤去に」


「キメラの?」


キメラはコンドルのような顔つきをしているが顔のパーツがでかい。


金色のクチバシと鋭い歯。鱗に覆われた体、背中に大きな翼をもっている。


野性のキメラはあまり人に馴れることはないが、一旦馴れれば飼い慣らすことは容易だ。


賢いし、背中に人を乗せて飛ぶこともできる。


手紙や物資をくくりつけ、伝書鳩や航空便代わりに使うものもいる。


仲間意識や家族を思いやる気持ちが強く、集団で行動する。


巣作りのシーズンになると群れから離れ、パートナーを探し、新しい巣作りを始める。


恐らく、城に巣を作ったキメラも新たなパートナーを探したのだろう。


ただ、今は巣作りのシーズンではない。俺は少し引っ掛かった。


「この時期にか?」


「ええ…。私も引っ掛かったのですが…。ーー実はそのキメラ、先日勇者がきたことを伝えにきたキメラでして…」


最強の勇者が俺を倒しにくる。そういう手紙をもってきたキメラか。結局来たのはティラミスだったのだが…。

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