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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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いいこと思いついた!

草むらを掻き分け、踏みしめる音に違いない。


ヘビではないようだ。動物の気配を感じとる。


モンスターフラワーに遭遇してなお近寄ってくる動物といえば人間くらいだろう。


俺はモンスターフラワーに集中しているふりをして耳をそばたてる。


段々、距離を縮めてくる。俺は脚立の上。相手が俺を襲うつもりなら最低飛び上がるか、脚立を倒さねばならない。


そのタイムラグが勝負の境目になる。


そしてアクションを起こしてくるとしたら、もはや一人しか思い浮かばない。ティラミスだ。


「にっくき魔王、討ち取ったりぃぃ!」


ティラミスは身の丈にあった剣と鎧、兜に盾まで装備し、俺の脚立を蹴り倒した。


俺は放水したまま無表情で地面に落ちていく。


「もらったあ!」


ティラミスは俺に斬りかかってくる。完全勝利を確信してか満面の笑顔だ。


俺はホースの口をティラミスに向けた。今度は縦にホースの口を押し潰す。


「ぴぎぃぃぃ!ごぼぼぼぼぼぼ、ぐるじい。溺れるのでづ」


ティラミスは盾で防ぐことも出来ずに放水をまともに顔面に喰らう。


息も出来ずに本気で苦しがる。


俺はその間に余裕で着地し、ホース一本で応戦する。


しばらく不細工な顔で水に弄ばれるティラミスを俺は楽しむ。


「ず、ずるいのでつ。まともに戦うのでつ」


「そうか?」


俺は飽きたので放水を止める。それに雨水を溜めたものとはいえ、水は貴重な資源だしな。


「あなた、鬼でつ。悪魔でつ。よくそれで魔王が勤まりまつねえ。魔王の風上にも置けない冷酷非道な悪魔でつ!」


ティラミスが半泣きで俺に指を指す。


「そういうのを魔王って言うんだ。覚えとけ」


俺はホースを投げ捨てティラミスと対峙する。


「ズッキーニ!例のものをここに持ってくるのでつ」

ティラミスが叫ぶ。


「はい、ティラミス様ただいま」


ズッキーニは重そうに両手と口、背中、更には荷押し車に大きな布袋を山積みにし、草むらからよたよたと現れる。


いいようにこき使われているな、ズッキーニ…。


それより大量の布袋が気になる。まさか、毒薬だろうか?


俺は身構える。


「ふふふ。これさえあればティラミスは無敵。魔王、覚悟!」


ティラミスは仕切り直しとばかりに俺に斬りかかってくる。


俺はいつものように身をかわす。これまたいつものようにティラミスは勝手にこける。


「お前には学習能力というやつがないのか」


「ありますもん」


ティラミスは起き上がり、再び俺に挑んできた。

俺は俺に対して刃を向けた者への敬意を込めて、ティラミスを軽く蹴り飛ばした。


ティラミスは林の中へ吸い込まれていく。


俺がティラミスの行き先を確認していると、後ろでモンスターフラワーがわさわさと体を左右に振ってアピールをしてくる。


そういえば水やりの途中だった。


俺は脚立に上るのも面倒なので、ホースを直接、花弁の中にある口に突っ込んで水を与えていった。


モンスターフラワーは行儀よく一列に並び、お腹一杯になったものから順番に近くの森へ散っていく。


半分くらい済んだところでティラミスが林から現れた。


「よくもやったな、『スーパーふぁいやーぼーる』」


一丁前に呪文もランクアップしたらしい。この間よりも大きな火炎の塊が俺めがけて飛んでくる。


モンスターフラワーは火に滅法弱い。水で消火しようにも火力が強大でホースの水では心許ない。


俺は燃え移らぬように足で蹴り返した。


「ふぎゃん!」


蹴り返した火炎は見事にティラミスの体に命中した。


「うぅああぁああぅ、火事だあぁー!」


ティラミスは上へ下への大騒ぎで走り回る。火を消そうと躍起になっているが火の勢いは増している。


うるさくて敵わないので俺はホースで水をかけ、消火する。


「うおおお、あぶねえ。焼け死ぬとこだった…。だいぶ、消耗したでつ。ーーズッキーニ、お薬をくださいプリーズ!」

「ティラミス様、お受け取りくださいませー!」


ズッキーニは手当たり次第、回復薬を布袋から取りだし、ティラミスに投げた。


赤、青の瓶が入り乱れてティラミスの元へ飛んでいく。


「サンキュでつ」


ティラミスはそれを受け取ると、腰に手をあて、片っ端から煽っていく。

まるで栄養ドリンクを飲んでいるサラリーマンのオヤジのようだ。


「元気満タン」


空瓶を草むらに投げ捨てる。ズッキーニがすかさず回収する。


息がピッタリだ。


ティラミスは剣を高々と掲げ、復活をアピールする。


ざっと10本は飲んだであろうか。俺はここで面白い遊びを考えついた。


ティラミスは果たして何本回復薬を飲めるのだろうか?


思い立ったが吉日。試さずにはいられない。俺の口元は思わず緩む。


「な、なんでつか?き、気味悪いでつね」


ティラミスは俺が良からぬことを考えていることを察し、後退りする。


「なあに…。たまには本気で相手してやらねば可哀想だと思ってな」


ひっ」


俺は手加減しつつも、ティラミスのHP,MPをカスカスになるところまで削っていく。


「いかーん!ズッキーニ、死んじゃうおー。早く、早くお薬プリーズ!!」


ティラミスはズッキーニが投げる回復薬を次から次へと立て続けに流し込んでいく。




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