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俺は魔王で勇者は乙女  作者: 藤川そら
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薬師長トリュフ

薬師長のトリュフは薬草をはじめ、回復薬の調合を行うモンスターだ。


ナマズの姿に立派なアゴヒゲ、提灯アンコウのように頭から一つ光る角がにょっきりと顔の方に垂れ下がっていた。


トリュフの腕と知識はピカ一で奴の作る回復薬は効き目が抜群で城内でも評判であった。


赤い色をしているのがHP用、青い色がMP回復用である。


最近ではティラミスはトリュフの仕事場に付きっきりのようで世話をしているショコラも少し妬いているようだ。


ショコラは俺の執務室に来ては年中、その愚痴を言っている。


「ーー魔王さまぁん。ショコラ寂しい…」


ショコラは自分の長い耳を指で絡めながら執務室の机に半分尻を乗せて呟いた。


「おいおい、ショコラ仕事に集中できないではないか…。夕飯時には構ってもらえるのだろう?それまで待っておればよかろう。お前だってやりたいことができて楽であろうに…」


「いやいやいやーん。寂しくて死んでしまいそうですわ」


「どっちが子守りかわからんな。一緒にトリュフの側におればよいじゃないか」


「つまらないもの。あんな液体作り。それより一杯愉しいこと、ショコラならお・し・え・て・あ・げ・れ・る・の・に」


ショコラは色っぽい目付きで俺の顎を撫でる。


頼むから如何わしいことだけはティラミスに教えてくれるな、俺はショコラの豊満な胸元を見ながらそう思った。


執務室をノックする音がした。ドアが開き「失礼します」と一礼して入ってきたのは件のトリュフだった。


色気のない汚れた白衣に身を包んだトリュフは小さい目を見開いて俺の顔を見ている。


何だ?と思っているとトリュフは再び「失礼します」と言ってドアを閉めてしまった。


どうやら俺とショコラの関係を勘繰ったらしい。ヒドイ誤解だ。


「思っているようなことはないから入れ」


俺の言葉は「何も見ておりません」というトリュフとの数百回に及ぶ問答の末にようやく届いた。


ショコラだけは喜んでいたが…。


「ーーで用件は」


「は、ティラミス様のことで少々…」


トリュフの話ではかなり熱心にティラミスは薬作りを学んでいるらしい。


どうやら俺と戦うために大量の回復薬が必要なので毎日少しずつ作り置きをして溜め込む作戦のようだ。


「まあ…」


ショコラは呆れたように呟いた。しかし、柔和な笑顔をしている。


恐らく、一生懸命に回復薬を作るティラミスの可愛らしい様子を思い浮かべたのだろう。


俺の表情も自然と緩む。


「結構なことではないか。回復薬の作り手が少ないと言って嘆いていたのはトリュフ、お前ではないか。何が不満だ?」


「それはいいのですが…」


トリュフは視線を反らした。そしてわざとらしくため息をついて見せた。


「毒薬の作り方もご所望でございまして…」


「あらあら、魔王様を毒殺なさる気?困った子ね、本当に」


ショコラよ、何が嬉しい?ティラミスが一生懸命毒薬を作っている姿が目に浮かび、微笑ましいってか?


こえーだろ、そんなガキ。


「困った奴だな」


俺はわざとらしく咳払いをした。


「本当よ、魔王様が死んじゃったら私何を楽しみに生きたらいいの?でもティラミスちゃんの頑張りも認めてあげたいし、困ったものね」


「私もどうしたものかと…」


トリュフは額の汗を拭いながら言葉を押し出す。


「教えないと?」


「セクハラだと泣き叫ぶ始末で」


「ふむ…」


俺は顎を撫でた。数度繰り返すが妙案も無く、天を仰ぐ。


毒の効果量にもよるがヘビに噛まれた時、戦闘の怪我はなかったが数秒毎にHPが減っていったことがあった。


自然回復の方が勝ってその時は大事に至らなかったが解毒するまで症状は続いた。


もし物凄い劇薬ならチートな俺でも死んでしまうのだろうか。








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