Quiet fighting spirit
「敵ながら拍手をするぜ」
筐体から出るとそこには『JJ』のメンバーが日野を先頭に立っていた。
そこには悔しさはなくどこか誇らしげで晴れやかな表情を浮かベて俺に手を指し伸ばした。
「そっちこそ、あんなに次弾が早いなんてな」
「そりゃ、世界で戦うためにはそれくらいしなきゃ勝てないだろう。ってまぁ…世界に行く前にお前に負けちまったけどな」
そう言いながら俺たちは手と手をつなぐとお互いに試合を称えあった。
「負けるなよ」
「負けるかよ」
日野はニヤリと笑を浮かべると踵を返すとそのまま背中を見せると手を振って会場の外へと出て行った。
そんな後ろ姿を俺は見送っていると不意に肩に手をかけられ後ろを振り向く
するとそこには若葉の姿とその後ろには試合が終わった疲れを取るように背伸びをする皆の姿が
「次の試合まで時間があるし施設内にある喫茶店で飯でも食べないってみんなで話してたんだけど、どうかな?」
「ああ、そうだなもうこんな時間だし昼飯も食ってないからな」
俺たちは小さく頷きながら時間にしてみれば最初の試合から約5時間ほど経っていたことに気づきお腹をさする。
「それじゃあ、早速行こうか」
そう言って俺の手を掴むとそれに引きづられるように俺は施設内を歩き回ることになった。
会場施設の中に併設されていたレストランの中で次の試合について考えていた。
「次の相手は『GAIN』か、知ってるか?」
「ああ、名前だけなら聞いたことあるけどな」
「うーん、情報を見る限り最近になって中堅どころに上がってきたクランみたいだな」
空になった皿が並んだのを横目に腹を満たした俺たちは次の試合について話をしていた。
「スナイパーが一人に近距離武器での攻撃が3人って俺たちと同じみたいだな」
俺は小さく息を吐き出すと静かに溜息を漏らして口を開いた。
「さっきの試合で4試合目、まだ半分も行ってないのか」
「そうだよね、普通の大会だったら次の試合で決勝戦だもんね。龍ケ崎くんの場合はゲームの中に入ると疲れやすいから多くの試合をすると大変だよね」
「まぁな、こうして続けて試合ってなると余計に疲れるな」
「大丈夫か、一?」
「なに、渉に心配される程じゃねぇよ」
そのときだった、俺の後ろの店の出入口のドアが開かれるとそれに反応するように俺とは向かいの席に座っていた渉が覗き込むように見つめた。
それに気づいて俺も続くように後ろをチラリと見てみるとそこには何と『J.Q.L』のメンバー4人の姿があったのだ。
その姿に俺たちだけではなく店にいた他の客達も九十九を始めとしたそれらの姿に釘付けになる。
「まさか、こんなところで『J.L.Q』に会うとはな」
鴉野が小さく呟くと同じように店にいた客たちもヒソヒソと何かを話し出す。
それだけ当時から九十九を筆頭に『J.L.Q』というクランは人気があり高名なものであった。その証拠にその時にちょうど出入り口付近で会計をしていた客のひとりは九十九に近づいていき握手を求めるそんな始末だった。
そんな4人はしばらく出入り口付近で立ち尽くし店内を見回すようにして席を探し見つけた空席に座ったのだが、それがまた俺たちの席とは真後ろの席だった。
俺は後ろを見るのをやめて正面に座る渉達の方へと顔を向けた。
相手は俺たちのことなど知る由もないだろうに、どこ知れぬ緊張感が走り同じくして逃げ場のないような感覚に陥った。俺たちは顔を見合わせて真後ろに座る『J.L.Q』がいる中で何を話そうかと考えていたそのときだった。
「おや、君たちもしかして『Re;rights』じゃないかい?」
透き通る声に俺は少し驚きながらも後ろを振り向くとそこには顔を俺と向かい合うようにして身を乗り出している九十九の姿があった。
「ええ、まぁそうですけど俺たちのことをよく知ってますね」
俺は声をかけられた衝撃で何を言えばいいのか分からなくなりながらも必死に何かを言おうと言葉を紡いだ。
その反応をみて少し九十九は意外そうな顔をすると少しの笑を浮かべてる
「君たちはこの前の東日本大会に参加して成績を収めていたじゃないか。確か君がリーダーだったと思うんだけど名前はなんて言うんだい?」
「龍ケ崎です。龍ケ崎一」
そう言いながら俺は目の前の九十九のことを観察するように見ていた。
俺たちの名前を知っていた事にも驚きだがそれ以上に実際に見てみると古風で大人らしくどこか独特でそれがまた不気味な雰囲気を醸し出していたのを覚えている。
「ふむ、そうか。ああ悪い自分の名前を名乗らずに君の名前を先に聞くようなことをしてしまって私の名前は九十九だ、いや九十九楓だな」
そう言いながら整った顔に掛かる髪の毛を手で耳の上にかける。
「そういえば君たちも参加しているのに名前を見なかった…ということは君たちはBグループにいるということかな?」
「ええ、そうですね」
「それはよかった」
「良かった?」
言葉を反芻する形で俺は九十九に問いかける。
「いやいや、なに君たちは実力があるからね。こんなところで相打ちになっても良くないだろう?」
「はぁ…そんな俺たちのことを買い被ってもらってるなんて」
その言葉に小さく笑みを浮かべた九十九は小さく呟いた
「なに、私は能力に対する相応の評価をしているだけだよ」
そういうと九十九は静かに立ち上がり仲間たち一同に目配せをすると何も頼まずにその場から立ち去ろうとして一歩席から歩を進めたところで何かを思い出したかのように踵を返すと俺たち、いや正確に言えば俺のことを見ると面白そうな表情を浮かべて口を開いた。
「君たち『Re;rights』と世界で一緒に戦えることを楽しみにしているよ」
本心を見せないように浮かべた冷たい笑みを浮かべ呆然とする俺たちを横目にそう言うと向き直った九十九は再び歩みを進め店から出て行った。
突然の『J.L.Q』の語りかけに驚きを隠せない俺たちはお互いに顔を見比べて今起きた出来事についてただ呆然としていた、と同時にそれぞれの心の中では同じことを思っていた。
あれはつまり九十九からの挑戦、来れるものなら私たちと同じ舞台に来いとそういうことなのだ
「そっちがその気なら俺たちもやるしかないだろう」
俺の言葉に応じる様に一同も無言で頷き表には見せなくとも闘士を奮い立たせた。




