『Re:rights』VS『JJ』
カウントが0になると同時に光に包まれた俺たちの体は日本的な小さな町並みを模したマップの右端へと飛ばされ試合が開始される、と同時に真っ先に動き出したのは俺たちの方だった。いや正確に俺たちが先に動き出したのではなくあちらの方が動かないでいたのだ。
そのことに気づいたのはすぐだった。違和感、というよりかは嵐の前の静けさのような異様な空気が周りを警戒しながら歩く俺と渉と凛の三人を包み込んでいた。
「なんかおかしいと思わない?」
その違和感を最初に口に出したのは後方をハンドガンを手に警戒しながらも辺りを見渡す凛だった。
風はなく突き抜ける青空にいくつもの電柱が点と点を結ぶように電線が這う現代では見慣れた光景に加えられた凛の言葉で余計に不気味に感じた。
「こんなに人の気配がしないなんてな」
相手がどれだけ慎重に動いていたとしても物音一つしないどころか、その気配までもを俺たち三人の誰にも感じ取れないなんてことはそれまで無かった。
明らかにおかしなことが起こっている、口に出すことでその時の違和感は確実になったその瞬間だった。
一発の虫の声にもならないような音が聞こえたと思った同時にマップ上に一発のマーカーが赤く表示された。
「クソッ、スナイパーだ」
言葉と同時に三人とも素早く体を捻らせてマップのマーカーの方向を見て向かってくる銃弾の存在を確認すると物陰に隠れようと避ける。
がその瞬間、俺は地図上に新たなマーカーが出現したことに気がついた
つまり、もうひとりのスナイパーがいて一発目の銃弾で俺たちが避ける先を見越して狙っていたのだ。
しかも新たに増えたマーカーは2つ、避けた先の避けた先を狙われた上にその避けるためにもう一発撃たれるということだ。
やられると思ったその瞬間、その時にはもうすでに考えるよりも体が動く
近くにあった料亭の立て看板を掴み投げると新たに撃ち込まれた2発の銃弾のうちの一発をそれで防ぐともう一発の銃弾を甘んじて腹部に銃弾を受け止めた。
「くっ…」
甘んじて受けた銃弾で体力ゲージは半分ほどまでに減ったのを確認しながら俺は素早く走り出すと撃ち込まれる銃弾を避けながら滑り込むように建物内に入り体を小さくして射程に入らないようにしながら俺は画面を出して渉と凛の二人を呼び出した。
「二人共大丈夫か」
「僕はなんとか無傷だ」
「ごめん、私はもう一発撃たれたらやられそうかも」
どこか悔しそうに唇を噛み締める凛を俺はなだめながら、今ある状況を整理する。
先程の攻撃を見る限り相手は4人中3人がスナイパー、それぞれ俺たちがいた地点から見て別別の方向から中距離の場所から狙撃が行われているところから見てそれなりの腕を持つ人間なのだろう。
思えば相手のリーダー日野は元々遠距離型のプレイヤーであったが前のクランではバランスを考えて中距離の武器に変更していたが
「やるじゃねぇか」
クラン4人中3人がスナイパーの編成なんて聞いたこともない。多分、日野はそれを狙ってきたのだろう。
聞いたことも見たこともないこんな編成は突拍子もないことだがそれはつまり経験でものを言わせる今大会のツワモノ達にとっては難敵になることは間違いない。
日野は俺たちと正面からやり合えば負ける事をわかっている。だからこうして賭けてきたのだ。それは紛れもなく勝つために
俺はニヤリと口元を横長に伸ばすと目を閉じて頭の中でマップを広げると先程の相手の狙撃場所を照らし合わせて作戦を考える。
距離から銃弾が到達するまでの時間、建物の場所、仲間の位置。それらの状況から最良の作戦を俺は導き出すと大きく息を吸って吐き出すと閉じていた瞼を開いて全員に向けて言い放った。
「良いか、これから作戦を伝えるぞ」
三人は無言で頷く
「相手のうちある程度の場所が確認されているのは3人、それも揃いも揃ってスナイパーだ。しかもさっきの攻撃で俺たちの今いる場所がバレた以上かなり不利になった。だから俺たちは一斉攻撃を仕掛けて相手の目標を分散させる必要がある」
「まず最初に俺がこの場所から飛び出して俺から見て正面、南方向の敵に突っ込む。だから渉と凛は俺が飛び出すのと少し遅れてマップの東西の敵に分担して攻撃を仕掛けてくれ」
「うん、分かった」
「おっけー」
「それから鴉野はスナイパーを牽制しつつ、もうひとりの敵が攻撃を仕掛けてくるだろうからカバーしてくれ」
「了解だ」
皆はそれぞれ頷きながら銃を握ると俺は息を整えると小さく呟く。
「それじゃあ早速始めるぞ、3…2…1…スタート!」




