『Re:rights』VS『AAA』
俺がHMDを外し筐体の外へと出ると大きな歓声と共に怒号にも似た声が会場を包み込まんばかりに響いていた。
俺はその中から先生と若葉の姿を見つけるとその元へと歩みよって行った。
「次、勝てばいよいよ優勝だね」
「ああ、でもそんなに簡単に言うなよな」
このくらいの試合ならば俺たちの実力でここまで勝ち上がってこれたのはまだ想定の範囲とは言えるが。
先程の相手に感じた違和感を拭いきれなかった。準決勝に当たる相手にしては手応えが無かった、俺たちの実力が上回っていただけなのかもしれないがそれだけでは無い何か罠のようなものを感じていた俺は腕を組みながら準決勝第二戦『FELIP』対『AAA』の試合を見ていた。
両者のクラン共に最初から相手のフラッグを目指して一心不乱に突っ込んでいくとやがて出会い頭に『AAA』の一人が『FELIP』の二人を倒してフラッグに接近、それを阻止しようと『FELIP』の一人が飛び出していき『AAA』の人物を一人倒したがその瞬間に後ろからもう一人が隙を付いたようにフラッグを取りに行こうとする、がそこで『FELIP』のもうひとりが近くの窓からスナイパーライフルで打ち抜いた。
すると『AAA』の残りの二人は互いに逆方向から走ってくるとそのまま銃口を何発か引いて相手を牽制しながらフラッグに近づいていくとそのまま激しい銃撃戦の中を走り抜け最後は飛び込むようにしてフラッグを手中に収め勝利を掴んだ。
「やっぱり、どこかおかしい」
俺は勝利を掴んだ『AAA』が筐体から出てきて会場の観衆たちに手を振り上げて答える姿を会場の壁に寄りかかりながら見ながら思った。
「何があるか分からないから気をつけろよ」
俺は一同を見渡して言うと再び壇上へと上がっていった。
「決勝者が決まったところ早速試合を始めようと思うんですが、どちらのクランも準備は大丈夫ですか?」
マイクを俺に向けて問いかけてくる店員をすこし鬱陶しく思いながらも俺は小さく呟く
「ああ、俺らはいつでも」
そう言って相手の姿を見ると『AAA』のひとりが俺たちのことを一瞬だけ見るとニヤリと笑い観客の方へ向き直ると店員のマイクを奪って大きくいった
「こっちも、余裕ですよ」
余裕綽々といったふうに手まで振って、まるでアイドルのような姿に内心で馬鹿にしながら興味ないように俺らはそのまま筐体の席に座ってHMDを被ると店員の篭った声が聞こえてくる。
「それでは今大会の決勝戦、あの有名な『Re:rights』と新進気鋭のクラン『AAA』との対決の始まりです」
「どうにも俺はあの態度が気に入らない」
「まぁ、龍ケ崎先輩はああいう人とか苦手そうですもんね」
待機部屋で残り時間を確認しながら俺はつい口が緩んでしまい言葉が漏れてしまった。
「態度も気に入らないが、何か隠しているような気がして嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感って?」
「わからない、けど何かしてくる可能性は高いだろうな。もしかしたらバグとか…」
俺の言葉に一同は明らかに反応した、それもその筈だ、俺たちが前に倒した楠野たちはバグを使い俺たちの動きを止めて不正に勝とうとした、そのことを思い出せば誰しも嫌な顔をするだろう。
俺はメンバーのその反応に誤解を与えないようにと言葉を付け加える。
「いやいや、でも今回は普通の大会なわけだし『GSO』と違って『AFW』を使っているから不正行為をしてこようとは思わないだろうよ」
「そうだといいけど」
視線を逸らして手にした銃を見つめる不安そうな凛の姿に俺は肩に手を置くと一息ついた。
「大丈夫だ、何かあっても俺がいるから任せろ」
言葉を言い終えると俺たちは光に包まれていく、そんな中で凛は不安そうな顔を拭うように俺のことを見つめると笑をこぼした。
「お願いします」
「ああ」
『試合開始 『Re:rights』VS『AAA』
試合が開始されると同時に俺たちはこれまでと変わらず自分たちのフラッグの周辺に集まるとそのまま待機した。ステージは夜の森であたりには背の高い大きな木がいくつも立ち並びその不気味さを増していた。
俺は変わらずにフラッグの前に立って相手を待ち受ける。
暗闇の中、静かに時間が過ぎ俺は言葉を発せずに全体のマップを見ていた時だった。
「うん?」
遠くの方から小さな足音のようなものが聞こえたと思ったその時、それは一瞬で耳元に発砲音が鳴り響くとどうじに銃弾が俺の体を掠めた。
何がと思った瞬間には俺の体は無意識に反応していた。マップに映る赤い点は距離にして約300メートルほど、つまりそこに俺を撃った相手がいる。
俺は走り出しながら近くにいた渉に声をかけてその相手の下へと挟み撃ちをするように二人で襲いかかった。
俺がその場に行くまでにもう一発の銃声が放たれたが俺はその銃弾を避けると飛び上がり暗闇の中に隠れていた一人に引き金を引くと同時にもう一発の銃声が鳴り響くとそれに伴って木の上に待機していた凛がその銃声の場所に素早い動きで近づくとそのまま相手を倒した。
「これで2人か」
俺はそう言いながらも自身の体力ゲージを見つめた、凛が倒した相手の銃弾俺の腕に掠め少しだけ減っている。しかし、これくらいなら何も問題無い。俺は小さく息を吐くと辺りを見渡した。
辺りが暗いせいなのか、数百メートル先は暗闇で相手のことを目視することは難しい
最初の一発を撃たれた時も音がするまで全く気付かなかった。
「油断はできないな」
渉に話しかけている間にも俺たちのことを狙っている相手がどこにいるかも分からない。
俺はこの状況を見て作戦を変えることを決意するとテレビ電話を開きメンバー全員の顔が見えるようにして口を開いた。
「これだけ暗いと次に相手がどこに来るか分からない、だから俺と渉でフラッグをとりに行く」
「大丈夫なのか龍ケ崎」
声をかける鴉野に俺は言葉を出すことなく小さく頷き、そして大きく息を吐くと口を開く
「凛はフラッグ周辺で待機、鴉野は見渡しのいい場所で何か動きがあったら言ってくれ。渉は俺と一緒にマップの右側から回り込んでフラッグまで行くぞ」
「分かった」
「了解」
「おう」
一同は頷くのを確認してテレビ電話を閉じ、俺は暗闇に意識を集中して静かに一歩を踏み出す
「それじゃあ渉、行くぞ」




