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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:memory
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『GSO』

「それで一、具体的には何か決まっているの」

「ああ、今日一日考えたんだがまずは楠野は今回の件に関わっているとする。その上で今回は賭け事、つまりは多くの人間が絡んでいるわけだ。そこで色々な人間からも噂を聞き出し実態を調査する必要があるわけだ」

「そこで役回りなんだが…渉は楠野について引き続き調べといてくれ、凛と若葉は学校の人間にこの噂について話を聞いてくれ。それから鴉野は学校外の人間を調べてくれ、賭け事となると学校外の大人が関わっている可能性があるからな」

一同は言葉を出すことなく頭を縦に振って賛同の意を表す。それを見て俺は静かに息を吸い込んだ。

「それじゃあ練習でもするか」

こんな時でも練習は欠かすことは無かった。というのもこの時期にはある大会の噂が出回っていたからだ。

そうそれが、何を隠そうそれから数年後に開催される『AFW』世界大会の事だった。

この時期になると『AFW』は約十年前に発売されファーストティーンと呼ばれる社会現象を巻き起こした『Game Shift 01』(ゲーム シフト ワン)に続く革新的なゲームとして、通称セカンドティーンと呼ばれるようになり。言葉を作られその名を知らないものはいないとまでも言われるほどまでに成長、一躍世界を動かすものにまでなっていた。

その『AFW』が公式世界大会をやるという噂が流れれば世間はそれを見逃すわけもなかった。



次の日から俺たちは気づかれないように静かに動き始めた。

若葉と凛の二人は持ち前の明るさで築き上げた友人たちとの会話の中でさも自然に噂について聞き出すとすぐに俺の元へと報告すると同時に渉は楠野だけではなく陸上部の人間との交流を活かして普段の楠野の行動を聞き出すと共に交流関係、最近の様子などの情報を手に入れた。

鴉野は俺が1枚だけ持っていたカードについて調べ、さらには学校の人間から賭博をやっていると噂されている人間やその人物の行動を入手した。

こうして約一週間が過ぎた頃には噂についての情報は俺の手元から溢れるほど集まった。

「結果からいえば噂は本当みたいだ」

前回と同じように机を囲んで自分たちが持ち寄った情報を発表する言わば情報の共有をする。そんな俺たちに開口一番、そんな風に言ったのは鴉野だった

「俺はちょっとした知り合いを通じてこの辺りで賭博に関係する噂がある人間を調べてみたら4人いたんだ。そこで俺はその4人について調べたんだが3人はパチンコやらカジノやらギャンブルの事だったんだが一人だけ妙だったんだ」

「その知り合いってお前…まぁいいか、それで妙ってのは詳しくはどんな風なんだ?」

「ああ、その4人のうちの一人に清水っていう30代の人間がいるんだがな。調べてみるとその清水ってやつはギャンブル関係の賭博はやらないでゲームを専門として賭博をしているらしいんだがその奴が最近になって金の利回りが良いらしいんだ」

「つまり今回の件にも関係しているかもしれないってそういうことか」

そこで間を挟むように凛が口を開く。

「私も調べてみたんだけど、同級生の子にその噂を聞いたって子がいてね。その子のはなしじゃあ『Gun Shooting ONLINE』(ガン・シューテイング・オンライン)を使って賭博をしているそうだよ」

「『GSO』か…」

どの時代でも革新的なものが現れればそれを模倣したようなものが出現するのは必然である

当然、時代を作った『AFW』だけがMMOゲームとして発売されていたわけでは無くその栄光の影では多くのMMOゲームが発売されていたが『Gun Shooting ONLINE』もそのうちの一つだった。

『AFW』ほどでは無いがそれでも数あるうちのMMOゲームの中でも名前は知られてはいる方で『AFW』にはないルールなどがある為にコアなファンが多いことで知られているゲームの一つだった。

「確かに『GSO』なら『AFW』ほどプレイ人口が少ない分、何かしても運営から何か言われる事も少ないだろうし賭け事はやりやすいかもしれないね」

渉は俺の言葉に説明を付け加えると一旦会話を途切れさせると口を閉じて深呼吸すると持ち寄った情報を披露する。

「陸上部の人間から話を聞いたんだけど楠野は最近になってよく部活終わりに家とは反対方向のどこかへ行くっていう情報を聞いて僕は一昨日に尾行してみてどこに行っているのかを確かめてみたら隣街のあるゲームセンターに寄ったんだ。それでその様子を確認してみたんだけど、その日は普通に『GSO』をしていたみたいだった」

渉の言葉に俺はつい唇を横に伸ばして無言のままニヤつく。これで全ては繋がったわけだ、全ては俺のコマの上で動いているような気分だった。

「で、そういえば若葉だけ何もいってないけど何かあるか?」

横にいた若葉がどこか重い表情を浮かべているのに気付いた。

「いや私もいろんな人たちから話を聞いたんだけどね。その中で気になったことがあって」

「どんなことだ?」

「それが、ゲームの中で不正をしているみたいなの」

「不正って、賭博の事とは違うのか?」

「うん、賭博も確かに不正なんだけど、試合中に不正をするかもしれないって」

「試合中に不正か」

その言葉で思いつくのがいわいるコンピューターウイルスやバグ等などでスコアや体力ゲージを不正に操作するようなもの。実際、『AFW』より運営の手が入り混んで来にくい『GSO』を利点として不正行為を行うということも可能性としては確かに有り得ない話ではなかった。

「まぁでもお前がそんなに心配しなくても大丈夫だよ」

「けど、もしもの事があったらって…」

その表情は未だに不安を拭いきれないといったものだった。

気持ちはよく分かった、仮想空間の中に入るということは感覚をすべてゲームの中に託すということなのだ。


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