Birth of the leader
と、その前に一つ問題になったのが『Re:rights』のリーダーを決めることだった。
この頃になると、試合の形式も固定化され、リーダーの名前は絶対になっていた。
「それで、『Re:rights』のリーダーを決めたいんだが」
いつものゲームセンターの席に座りながら、俺はメンバー達に尋ねると凛と鴉野は俺と渉のことを見つめて呟いた。
「俺は『Re:rights』を作った龍ケ崎か矢薙のどっちかでいいと思うから辞退する」
「私も、龍ケ崎先輩か矢薙先輩の二人とも『Re:rights』のリーダーとして相応しいと思うから私も辞退するよ」
その言葉に俺と渉は顔を見つめた。というのも二人ともリーダーは相手の方が相応しいと思っていたのだ。
「一の方がいつも作戦を考えているし、リーダーに合っているじゃない?」
「いや、渉はゲームに詳しいしこの世界の人間とも親交があるんだからお前の方がリーダーに向いていると思うぞ」
そんな押し問答が繰り返されそうとしていた時、横に座っていた若葉が一言呟いた。
「それじゃあ、勝負をして勝ったほうがリーダーってことでいいんじゃない?」
その申し出に俺と渉は再び見つめ合うと笑みを浮かべた。
「なるほど、確かにクランで一番強いのがリーダーに相応しいかもね」
「久々に渉とタイマンするか」
不敵な笑みを浮かべた俺達は同時に立ち上がると、そのまま流れるように筺体へと入っていった。
「1VS1」を選択すると久々に渉と戦うことへの興奮を抑えるように、息を大きく吐き出し瞼を閉じて意識を集中させると両手に握ったハンドガンの冷たいを感覚をしっかりと確かめるように強く握り締めて瞳を閉じると白みがかった視界の中で小さく呟いた。
「作戦開始だ」
ステージはタイマンということもあって、練習場所としても使われる四方を無機質な壁で囲む真っ白い空間が選ばれると俺は目の前に刀を持った渉を見つめた。
何も障害物などがない個々の力が試されるこの場所で、しかも、二丁拳銃の俺に対して刀という装備を選んだ渉に俺は本気なのだと感じた。
大きく息を吸い込み、そして目の前に佇む相手に宣言する。
「行くぞ」
言葉と共に動き出した俺は両手に握られたハンドガンの銃口を渉に向ける。
すると、その動きに合わせるよりも前に銃口の行く末を予見した渉は右側へと大きく走り出すと大きな輪を描くようにしながらも近づいてくる。
その動きに俺も左側へ同じように大きな円を描くようにして走り出すとハンドガンを掴んで引き金を引いて銃弾を放つ
しかし、その銃弾を華麗に動きながら避ける渉はそれでも尚、俺との距離を一気に詰めてくるとそのまま大きく飛び跳ねて刀を地面へと突き刺そうかという勢いのまま両手に握った刀に全体重かけて俺の頭上から降ってくる。
その狂気に、俺は後ろへと体を傾け地面を蹴り上げて避けたが、その動きをまるで知っていたかのように刀を地面へと突き刺すとそのままバランスをわざと崩し一回転して引く姿勢のまま起き上がり一歩踏み出すと、後ろに下がった俺との距離を再び距離を詰めると、腰にかけていたもう一つの刀の柄に手をかけて力強く横へと振り払った。
一連の行動に無駄のない攻撃は俺の腹部へと刃先が掠り、体力が少し減ったのを確認すると同時に、またとない攻撃のタイミングに引き金を引いた。
放たれた銃弾を避けようとした渉は、振り払った刀をそのまま地面へと突き刺しそれを軸に体を無理矢理に捻って避けると、その刀を再び地面から引っこ抜くと俺へと攻撃の手を緩めることをしないといったふうに下から上へと刀を振り上げる。
その攻撃に俺の左手に握られたハンドガンを真っ二つにすると続いて振り上げた刀を振り下ろすようにして再び刀の刃を俺に向けた。
その連続攻撃に、俺はもう一度後ろに下がるとその攻撃をギリギリのところで避けた。
それ以上、渉は攻撃をしなかったのは、それだけ精神力を多量に使うためだろう。
俺も今の攻撃で、上がるはずの息を抑えるように大きく深呼吸をすると目の前の相手を見つめた。あれだけの連続攻撃をもう一度食らう事はかなり危険だ、少なくとも渉は次で攻撃で仕留めてくるだろう。
俺は右手に握られたハンドガンを握り締めて、勝利するにはどうすればいいのかと悩むようにして辺りを見回してみると、辺りは一面の白い空間で状況を変えることができそうな物はない。
その状況に唾を飲み込んだ俺に渉はその場で刀を振り体勢を取り直すと鋭い目つきで獲物を捉えると正面から向かって走り出してきた。
その瞬間、俺は渉の先を見つめめて小さく笑みを浮かべた。
しかし、正面からくる渉の突進をよけなければそこへはたどり着けない
俺は意を決して手に握ったハンドガンを渉へと向けるとそのまま引き金を引きながら突っ込んでいくと、銃弾を避ける渉の攻撃範囲まで一気に入り込むと右から左へと横に振り払われた刀の軌道を読み取って大きく飛び上がると空中で体を回転させて頭上から銃弾を放つ、がその攻撃を読み取られていたかのように、渉は踵を返してその銃弾を避ける。
その間に着地をした俺はそこにあった物を掴むと突っ込んで猛追する渉の刀を見つめながらタイミングを図ってそれを振り上げた。
金属同士のかすれる音が辺りへと鳴り響くと、同じように突如として現れたその物体に渉は驚きの表情を浮かべた。
「なッ…」
俺の手に握られ渉の刀を弾き返した物、それは紛れもなく最初の攻撃で渉が先ほど地面へと突き刺した刀だった。
刀を改めて出せば、前に存在していた刀は消えてしまう。しかし、今回、渉は最初から予備の刀をつけていた為にわざわざ新しい刀を出す必要はなく、最初の刀は存在したままだった。
右手にハンドガン、左手に刀を握りしめた俺はそれぞれの武器の感覚を確かめた。
「ここからだ」
呟くと同時に動き出した俺は右手に握ったハンドガンの引き金を引きながら渉との距離を詰めると、次には刀を横に振り払って体を真っ二つにしようと狙う。
その攻撃を渉は握った刀で必死に受け止めると、流して次の攻撃につなげようとするが、その攻撃に俺はハンドガンの銃口を向けると引き金を引いた。
「くッ…」
心臓を狙った銃弾を必死に避けた渉だったが、甘んじて腹部へと攻撃を受けとめると体力が半分近くまで減ったのを確認する間もなく弾かれた刀を力強く握り締めて俺の心臓へと突き刺そうと腕を伸ばした。
その刀の軌道を変えようと俺は再び刀で弾き返そうとするが、素早い攻撃にタイミンがずれて右肩付近を抉るように刀を振り上げられたことで体力が四分の一ほど減った。
互いに攻撃をくらった状況。しかし、そんな状況になればなるほど俺たちの表情は笑みをましていた。
次の攻撃で決める。俺は攻撃を受けながらも再び弾き返した刀の間に入り込むようにして右手に握っていたハンドガンの銃口を的確に頭部へと狙いを定めると引き金を引いた。
至近距離から放たれた銃弾を避けることもなく、その攻撃を受けた渉の体力ゲージは減ってついには空っぽになった。




