Game Start
「なにか言いましたか?」
内海は龍ヶ崎の方を見て聞いた。しかし龍ケ崎はいつもの無表情顔で答える。
「別に、何も言ってない」
内海はその言葉に不思議そうな表情で龍ケ崎のことを見たが何かを思い出したように改めて口を開いた。
「それじゃあ、目的を説明しますね」
言いながら内海が手を振り下ろすと龍ヶ崎が先ほど指さした大型テレビの映像が変わり地図のようなものが現れた。
見てみると映し出された地図に見覚えが有った。ほとんどの建物は秋葉原を忠実に再現されているようで、その周りには広大な土地に複雑な建物が入り組んで立ち並んでいる。
それらを見て行くうちに龍ケ崎はひとつ疑問持った。
「あれはなんだ?」
龍ヶ崎が指摘したのは表示されていた地図上にいくつかあった赤い丸だった。小さく何かが書いてあるようにも見えるが龍ケ崎の目にはよく見えなかった。
「ああ、あれは他のプレイヤーですよ」
「おいちょっとまて、俺以外にもプレイヤーがいるのか?」
その言葉に内海は、何を言っているんだと言わんばかりの顔で龍ケ崎を見ると大きな笑みを浮かべて疑問に答える。
「もちろん、日本中からプレイヤーを集めましたからね、これだけの数を集めるのはなかなか大変でしたよ」
そんな規模で脅迫しこの世界に無理やり連れ込んだとなると、かなりの問題になるのではないだろうか、そんな思いが頭をよぎる中で大きなため息をつくと呆れたように目の前の内海に問いかける。
「で、お前はそんな日本中のプレイヤーを集めて何がしたいんだ」
その言葉に内海は勝ち誇ったような顔して手を振りかざしたと思うと同時に差した巨大なテレビ画面に映し出されたのはいくつもの線が伸びたトーナメント表だった。
「クラントーナメントです」
そう言われ龍ケ崎は改めて大型テレビを見てみる。
そこには先程まで映し出されていた地図は消えてありとあらゆるクラン名が画面にずらっと載っておりその中には龍ヶ崎が見覚えの有るものから無いものまでおおよそ簡単に数えても200以上のクランの名前があった。
その中でも龍ケ崎は一つのクランに目をつけた。その名前は『Re: rights』
それを見た瞬間、龍ケ崎の頭の中にはある記憶が蘇る。
「なんでお前が知ってるんだ」
「誰でも知っていますよ。5年前の大会で優勝した今なお伝説と謳われるクランなんですから」
内海の言葉に嫌味を感じながらも龍ケ崎はクラン名の下をみると小さな文字がびっしりと書かれておりそこには龍ケ崎自身の名前も含めて4つの人物の名が載っていた
『龍ヶ崎』 『内海』 『鴉野』 『凛』
「あいつらも連れてこられたのか...」
クラン戦をするにあたってクランメンバーがいないと話にならない旨、メンバーが連れてこられいるのは当然といえば当然だがそれ以上に気になることがあった。
「なんでお前がクランの中に入ってんだよ」
その問い掛けに内海は不服そうに反論する。
「クラン『Re:rights』メンバーの一人、矢薙渉さんとは連絡が取れなかったので仕方なく私を入れる事で補うことにしました。」
その言葉に龍ケ崎はため息混じりに視線を遠くに答える。
「あいつの居場所は俺もわかってないよ」
その答えに内海は少し困惑したように
「そうですか」と顎に手をついて何か考える素振りを見せた。
内海が黙り込み、沈黙が続くのに耐えかねた龍ケ崎は仕方なしに口を動かす。
「つまりお前は自身が作ったゲームのテストプレイでクラントーナメントをするために俺たち『Re:rights』を呼び寄せたってわけだな」
「端的に言えばそうですね」
つまり規模が違うだけで子供の遊びとほとんど変わらないということだ。どうしてこうなったか考えたところで内海のせいとしか言えない
しかし、その中で答えを探すのは誰でもない龍ケ崎ではあったが
「わかった、お前の言うとおりにするから。早く終わらせよう」
龍ケ崎の降参宣言に内海は満足気な顔を浮かべた
その恍惚とした表情を見て龍ケ崎はもう一度ため息を吐き出し心の中に押し込めた思いを殺すように手を強く握り締めた。