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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:memory
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『Re:righs』VS『SOLD』

しかし、それではまだ安心はできなかった。次の瞬間、俺は隙を見せている格好の俺を下村はすかさず弾かれた勢いのまま腕を振り上げると地面に寝転がる体勢の俺を狙う

「ッ!」

間一髪のところで俺は寝転がった状態のまま横に転がるように避けると直ぐに立ち上がって下村との間合いを取った。

息は荒くなり体の所々が痛みを持っているのが分かったが今はそれは気に留める暇はない事は同じく香取から間合いを取るように俺の隣へと避難してきた渉の苦悶の顔からも分かった。

「まさか、ここまで動けるとは…」

大きな呼吸の音に混じって俺は改めて思う。

目の前に佇む下村のガタイのよさからは想像もできない程の俊敏な動きは予想をはるかに超えていた。

それに加えて渉の顔を見る限りでも香取もなかなか手ごわい相手なのだという察しがつく

これがランキング3位の実力…

「やばいのは三位から」その言葉は紛れもなく事実であることを俺たちはその時なって初めて実感することになった。

「どうする龍ヶ崎」

渉はそう言いつつも口調は心の中では本当に心配しているようでは無かった。

しかし、もしかして俺はまた無意識に口元が緩んでいるのだろうかと確認する暇もない

俺は目を閉じて神経を集中させるために大きく息を吐くと今ある状況を覆すにはどうすればいいかを考えが始めた。

下村はガタイのいい体ながら俊敏な動きを見せて俺たちを追い詰めてくる

それに加えて香取も渉を苦戦させるほどの腕を持ち合わせているとするならば

経験からくる実力では勝ることができない。そうすると俺たちが勝つ方法は…


「渉、一つ考えがある」

そう言いながら目を開けて同じように様子を伺う『SOLD』の二人を見比べるように見る

というのもその時の俺はあることを思い出していた。

『SOLD』の対戦結果のうち負けた試合は非常に少なかった、それだけ実力があるのだろうが、しかし逆に言えば実力があって勝利数よりも格段に少ない負けの数字はそれだけ理由があるんじゃないだろうか。それを知るということは俺たちがかなり有利になることになるだろう。

そこで改めて相手の二人を見てみると二人の行動は同じように見えて明らかに違っている事が分かった。

手前にいる下村はいつ攻撃しようかと長い刀の柄を何度か握り直す動作を繰り返して鼻息荒く今にも飛び出してきそうだった。

それに比べて後方にいる香取は苛立ちを隠すように神経質に小刻みに体を動かし攻撃がいつ来るのかと俺たちから視線を逸らさないでいる。

「やっぱり」

最初出会った時から思ったことに二人の姿を見て俺は今度は意識して口元を緩ませて笑を浮かべた。

「渉、次もさっきと同じように行くぞ」

「でも、さっきみたいに反撃されたらどうするんだ」

「ああ...だから次は反撃しないでいくぞ」

「それってどういう?」

渉の言葉に俺は今まで考えたことを伝える。

それを聞くと渉は静かに笑を浮かべると手にした刀を振って深呼吸すると静かに口を開いた

「なるほどね」



先に動いたのは俺たちの方だった、二人同時に前方には俺が、その後ろ姿についてくるように渉も俺の後ろを走って前方の敵の方へと向かっていく

突然の行動にしかし相手の二人は動揺することなかったが先程の攻撃で不意を突かれたからか流石の下村でも先ほどの様に突っ込んでくることはせず俺たちの事を待ち受けるように刀を構える。

と同時に後方にいる香取も同じように俺たちの攻撃を受ける様に刀の刃先を向けた。

相手は俺たちの動きを読んでカウンターをする気なのだろうことは分かった。

「渉!」

縦に並ぶように走り続け、前方の下村まで数歩の距離になると俺は後ろを走る渉の名前を叫んだ。

すると俺は足を止めて下村と数歩の距離を取ると中腰の体勢になるとすかさず後ろを走っていた渉が勢いそのままに俺の背中を踏んで大きく飛び上がった。

その高さは目の前で俺たちを待ち受けていた下村をも優に超しそのまま後方で待ち受けていた香取の頭上にも到達するほど。本当に大事なのはここから。

俺は蹴られた背中の痛みを感じながらも直ぐに体勢を立て直すと目の前で呆然と立ち尽くす下村へと再び走り出して至近距離まで近づいた

「よそ見してるとやられるぜ?」

俺の言葉に下村の顔は不機嫌になるとそのまま歯を食いしばって刀に力を入れて思いっきり横へと振り払う。

俺はすかさず刀で攻撃を防ごうとすると重い一撃は先ほどの攻撃よりも威力も早さも上がっていて俺は込められた力をそのまま受けるように体の芯がズレたと思った瞬間に数メートル先へと体ごと吹き飛ばされた

「痛ッ!」

体の所々に擦り傷ができているのが分かった。

しかし、それをいちいち気に留めている暇はない。俺は直ぐに立ち上がると目の前で刀を構え直す下村を睨みつけた。

想像以上の威力はやはり受け止めることはできなかった。今、目の前の敵に俺は為すすべも無くやられるのだろうか

「そんなわけないだろ」

二ヤッと笑う俺の言葉と同じくして下村の後ろから姿を現したのは渉だった。

「こいつ!」

下村もその姿に気づき咄嗟に後ろへと振り向いて振り下ろされた刀をすかさず受け止める。

その鬼気迫る下村の姿を一瞬見ると俺はすかさず下村の背中を狙う為に走り出す。

すると俺の目の前に現れたのは渉を後方から追いかけてきた香取だった。

香取はそのまま下村の刀と交わる渉の背中を狙うように大きく刀を振り下ろした、と同時に渉は刀を避ける様に横へ体を倒すと地面へと転がる。

「渉、今だ」

『SOLD』の二人に最初出会った時から思っていた事、それは二人の相性だった。

下村はガタイがよく気性が荒い一面がある一方、香取はというとあまり感情を表には出さない、まさに対照的な二人

そして『SOLD』が負けた数少ない試合に共通するものは二人の同士打ちやコンビネーションの無さによる反応の遅れなど二人に関する事

対照的な性格なこの二人が前方と後方に分かれている理由、一見すると合法的に見えるその立ち位置も言い換えれば二人が意識してお互いを干渉し合わない為の策

だとすればそのふたりを無理矢理にでもこの二人を近づけさせることができれば俺たちには大きく勝率が上がるだろう。


そして今、最初に俺の背中を蹴って下村を飛び越えた渉は香取を狙いに行くと思わせておいて下村を狙う、それを悟られないためにも俺は間髪入れずに下村に狙いを定める。

そうすれば下村は2対1となり数的不利になる、そうすれば必然的に香取は下村を援護をするために前に出てくることになる。

案の定、香取は前に出てきて下村と二人に並んでいる今の状況を作り出した。


俺と渉は同時に走り出す、それを見て下村と香取の二人も動き出そうとするが下村の特徴的な長い刀が邪魔となり動きが遅れた。

俺はその隙を突くように下村との距離を詰めると大きく体を捻って刀を振り払った。

それを庇うように香取は刀を受け流すとその香取を狙って渉は横から刀を突き差す

「よし...」

小さく呟き目の前から消える相手を見つめる。けれど香取を倒したからと言っても油断はできない、香取を倒したことで自由に動けるようになった下村は刀を大きく振り払って俺を狙い始めた。

「渉!」

その言葉に渉は俺へと向けられた刀を受け止めると同時に俺はバランスを立て直すのも先に刀を下から上へと大きく振り払うとその刀の勢いで下村の大きな体を真っ二つに切り裂いた。


『GAME SET』『WIN Re:rights』


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