表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:memory
58/139

『Re:rights』VS『SOLD』

「前に相手が言っていた様にこれまでとは違って『SOLD』は他のチームより確実に強いと思う」

俺の言葉に渉と若葉の二人は静かに頷いて賛同した。

学校の昼休み、陽が照らす校舎の裏手の一角にある壊れた遊具に俺と渉と若葉は一列に並んで座り今日の夕方に行われる対戦について話し合っていた。

「これまでの対戦の記録を見てみると下村が攻撃を仕掛けてそれをカバーするように香取が後ろから追い打ちをかけるみたいだな」

俺たちの目の間に広がる『SOLD』の対戦結果を見てみると対戦成績は勝79負18と圧倒的な勝率とこれまでの実績が目に付いた。

これまでにない強さを誇る相手、まだ本番ではないのに俺の心の中は大きく動揺する。

「大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

俺は大きく息を吸ってそのまま深々と吐き何度か深呼吸をする。こんなことで動揺していては思い通りに体も頭も動かなくなってしまう。

息を整えると瞼を数秒だけ閉じ動揺する頭を真っ白にさせると話を続けた。

「それで、どうやって戦うかだ…今までのようにただ突っ込んで自分たちの力任せに倒すだけだと相手の思うツボだと思う」

「うん、一の言うとおりこれまでと同じようにやっても実力も経験も勝る相手には通じないだろうね」

そう言いながらどこか楽しげに話す渉の顔を見ていると何故か不思議な感覚になる

それは、俺とは対照的にこの状況にさえ動揺を見せないでいられる心の強さに憧れていただけかもしれないが

「それで今日一日考えたんだが力で負けるんなら俺たちはテクニックを使って工夫すればいいんじゃないかって」

「確かにそれだったら力で負けている分を補うことが出来るだろうね。だけど工夫するって相手は3位の相手なんだから並大抵のことをやっても直ぐにバレて反撃されるだろうけど?」

「確かに並大抵のことをすればそうなるだろうけど、逆に言えば相手が思いつきもしないことをして意表をつければ相手に大きな隙が出来るだろう」

「一、その顔を見る限り何か思いついているようだね」

そう言われて俺は初めて自分の口元が緩んでいることに気がついた。

渉がさっきから面白そうにこっちを見ていたのはそのためだったのだ。

「人のことを見て面白がるな」

俺はそんなことくらいしか言えなかった。

それを聞いて尚、渉は笑を崩すことなく両手を合わせて謝る。

「ごめんって、それで一は何を思いついたんだい?」

「ああ」

嘘くさい謝罪の言葉に俺は少し不貞腐れながらも一回咳き込んで静かに話を切り出した。

「相手はまず下村が攻撃に突っ込んでくると思う。俺たちは相手のその動きを利用して反撃をすればいい。だけど相手の実力は俺たち以上、単純な反撃をしたところでやられるだけだろう。だから俺たちは逆をつくんだ」

「逆ってどんな?」

その時になって突然、今まで黙って聞いていた若葉が反応した。

「普通は相手が突っ込んできたら反撃するだろう?だから逆に反撃しなければ相手の意表を突くことになるだろう」

「そんなことしてどうするの?」

「前衛の下村の攻撃を避けて後ろにいる香取に二人で倒せば数的にも前衛攻撃が得意な下村にとっても後ろ盾が無いぶん不利になるはずだからな」

実際問題、下村はパワー系ということもあって選ぶ刀は大きいものを好み動きも大きいから攻撃を避けるのはそう簡単なものでは無いだろう。

さらに後方に待ち構える香取の実力が分からないのが不安要因の一つだ。

「龍ヶ崎くんってやっぱり頭いいんだね」

不安を抱く俺とは逆に隣に座る若葉の興味深々な視線と目が合った。

「なんだよ急に」

「だって、こんな風に作戦まで考えちゃうなんてすごいよ」

「そんな、大げさな」

若葉の言葉に気恥ずかしくなって俺はつい視線を逸らしてしまった。

「それにこれくらいのことで作戦なんて言えないさ」

「そうかな、私から見れば単純にすごいと思うけどな」

言い返す言葉が思いつかないまま俺は耐え切れない所で昼休みを終える鐘が鳴ると直ぐにその場から立ち上がる。

「じゃあ続きは学校が終わったらで、その間に他のいい案が思いつくかもしれないしな」

俺は二人の顔を向ける事なく立ち上がるとそのまま歩き出した。



夕方、いつもの公園で俺と渉は『SOLD』の二人を待ち受けるべく公園の中央に立っていた。

やがて夕日が沈む中を公園の外から現れた二人、下村と香取の姿が近づいてくるのを確認すると俺たちも歩み寄り数歩の間合いをとって対峙する。

「ほう、逃げずに来たか」

開口一番そういったのは例に漏れず下村だった。

「そっちこそ」

「ふん、つくづく腹が立つ野郎だ、この試合に勝ったらぶん殴ってやる」

不機嫌な顔で腕を組み俺らのことを睨みつける下村の様子を見て俺は早速中央の機械に近づいて電源ボタンを押した。

「渉、話した通りに行くぞ」

試合が開始するまであと十秒と目の前に表示される中で隣に立つ渉は小さく頷いた。

手にした刀を大きく振って感覚を確かめると同時に目を閉じて大きく息を吸って吐き意識を集中させる。


『GAME START』


試合開始を知らせる鐘が鳴ると同時に目を開き素早く一歩を踏み出した。

それと同じに目の前からは大きな体を動かし下村が突進してくる。

互いに走り出した両者はあっという間に数歩の距離まで近づくと先に勝負を仕掛けてきたのは下村だった。急に足を止めて手にしている大きな刀を鞘から抜き居合い斬りをするように刀を下から上へと斜めに振り上げようとする。

予想通り、刃の長さ普通よりも大きい分、刀を振るタイミングがいつもの敵よりも早かった、

全身の力を込めたこの振りを受け止めれば自分の刀が弾かれるだろう。

しかし、俺と渉はそんな攻撃に臆することなく依然として足を止めずに下村に向かう。

振り上げられた刃は徐々に俺らとの距離は近づいていきあと数歩で刃先が俺の体に触れる所まできた

「今だ!」

俺は息を止めて刃の振られた行方を読み取ると刀の下に入り込むように土煙上げながら地面を滑り下村の股下をそのまま抜けた。

と同時に渉は俺とは逆に刀の上を越すように大きくジャンプするとそのまま下村の肩に手を着いて踏み台にすると一回転して見事な着地を決めると今度は俺の前を走り出した。

「なにッ!?」

大きく空振りした下村の驚く声が後ろから聞こえたが俺たち二人は振り向くことはせず、今目の前にいる香取に一心不乱に向かって疾走する。

「クソッ」

小さく呟くようなそんな声が目の前の香取から聞こえると同時に刀を構え直し迫ってくる俺たちを待ち受ける。


残り数歩、俺の前を走る渉は刀の柄を強く握ると大きく息を吸うと大きく刀を振り上げると走力の勢いも交えた渾身の力が香取の刀とが交じり合った。

その瞬間刀と刀が擦れる甲高い金属音が耳元の中でキーンと響くと同時に刃がぶつかった箇所からはエフェクトの火花が散るのが見えた。

「はじめッ!」

香取の横にまわるために体勢を整えるために体を傾けた時、振り返る渉の鬼気迫る声が金属音に交じって聞こえると同じくして俺は香取に向かって刀を振り上げていた。

「後ろだッ!」

その声に反射的に後ろを振り返るとそこには先程まで俺の後ろにいたはずの下村がすぐそばまで来ていて自身の腕を大きく振り上げているまさにその瞬間だった。

俺が予想していたよりも下村の動きは早かった。

刀は俺の頭を目掛けて大きく振り上げられている、けれど俺は攻撃しようと体勢を崩しているので避ける事は困難だ

瞬間、俺は香取に向けていた刃先を下村に向けるようにして振り下ろされる下村の重い一撃を甘んじて受け止めた。

今までにないほどの衝撃とそれに加算するように手には痛みが走るほどの力

その力で押しつされるように俺は足の力が入らずにそのまま地面へと倒れる込むと柄を両手で握り自分のできる限りの力を使って下村の刀を振り払うと倒れ込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ