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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:memory
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Who can read the future?

「一には今の弾が見えた?」

「いやだって、いきなりだったし距離も近かったからそんなの誰にも見える訳無いだろ」

そう言うと再び何かを考え込んだ。

「もしかして…」

「渉、さっきから俺を試すようなことして何なんだよ」

ゲームの仮想世界だからといって不意打ちで突然撃たれるのは誰しも気持ちのいいものではなかった。

しかし、渉は静かに口を開くと突拍子もないことを言った。

「一、今度は僕の事を狙ってみてくれない」

「別にいいけどこんなことして何の意味があるんだよ」

「いいから、とにかく僕の額の中央を狙って撃ってみて」

何か理由がなくてこんなことを頼むほど渉は変わりものではない、特にゲームの事となると元来からのゲームマニアの性格が露見する。

けれど、渉と関わってからしばらく経つがここまで真剣な表情を見せるのは初めてのことだった。

「んじゃあ、狙っていいんだな?」

少し戸惑いを見せながらも俺は渉の額の中央を照準に入れる。

先ほどの失敗を考えると反動による衝撃を甘く考えすぎていたのに加えて腕へのダメージを考えてしまい脇を締めるのが甘くなってしまった。


大きく息をして再び照準に意識をする。

渉との距離は約10メートルと言ったくらいだろうか

銃の先に焦点を合わせ引き金に慎重に指を置いて力を込める。

「!?」

その時、俺が放ったのとは別に一つの銃弾が辺りに鳴り響いた

引き金をひこうとした瞬間、渉は俺に向かって素早く銃口を向けると驚いた俺に対して何のためらいもなく銃弾を放った。

反射的に俺は上半身を曲げて銃弾を避けると体の軸がずれ俺はそのまま地面へと強く倒れこんだ。

「二回も不意打ちして何がしたいんだよ!」

不意打ちも流石に二回目となると頭にきて地面に倒れた俺は両手をついて直ぐに体を起こすと渉の元へ詰め寄る。

しかし、当の本人は俺が詰め寄っても反応せず何かを真剣に考えるように顎に手を当てたまましばらく経ったあと確信したように口を開いた。

「一、僕は君に才能があると最初に言っただろう…?」

「ああ、そんなこと言ってたっけか?でもどうせお世辞だろ」

「いや、あれは全然お世辞なんかじゃないさ」

渉は真剣な面持ちになると息を吐くように小さく俺に言った。

「一が今やったようにあの距離から銃弾を避けることができるのはもうプロの粋だ、それをこの年齢でやってのける一の反射神経は誰の目からしても凄い才能としか言いようがない」

渉はあまりにも真剣に言うもんだから俺は呆気にとられてしまった。

「でも俺は今までの練習で一度も渉に勝てたことなんてないんだぜ?」

「それは、これまで練習してきたのは刀の練習だったから。人それぞれに向き不向きの武器ってのは必ずあって自分に合った武器があるけど、一の場合は深く集中すると反射神経が上がるから、動きが大きい刀よりも動きがコンパクトで間合いを取れる分、刀より攻撃に対する時間が長い銃のほうが向いているんだと思う」

「そういうもんなのか…?」

「銃は取り扱いが難しいからこの『CLOSE OF WOLRD』では銃での対戦はまだあまり浸透してないけどね。だけどこのゲームの後継機として作られている世界で初めて仮想空間を使った『Act Frontier War』ってゲームが今試作段階まで作られている噂があるんだけど、それが主流になればもっと銃での対戦が普及すると言われているんだ」

「いつもながらお前はいろんなことを知っているんだな」

「ゲーム好きだったら当然のことだよ」

渉は少し笑って得意げな顔をすると大きく息を吸って話を変える。

「だからこれからは刀の練習だけじゃなくて銃の練習もしてみようと思うんだけど」

「そうだな、俺も銃に興味が出てきたし、頼んだ」

どうしてそこまでこだわるのか。当時の俺からしてみれば不思議で仕方なかったのだが、今考えてみると渉は俺とチームとして『Re:rights』としてやっていく上で才能を見出した俺に将来を見据えていたのかもしれない。

笑を浮かべた渉はそう言うと俺を追い越して機械を終了させる。

透明な膜が機械の中へと収納されるとそれまで投影されていた青空とはうって変わって短くなった夕刻の陽が傾いていた。

「今日はもう暗いし、今回はこのくらいにして銃の練習は明日からだな」

「もう終わりなの?」

右手に本を握ったままゆっくり俺たちのもとへと近づいて来るのは笑顔を向けた若葉だった。


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