表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:memory
55/139

ability?

「あぁ…疲れた」

深い溜息をつくと同時に地面へとへたれ込む渉の姿を見て俺と若葉の二人は口を尖らせた。

「で、渉どういうことなんだ今のは」

「本当だよ、知らない人と話してると思ったらまさか『OCT』の人だったなんて」

「それがな、僕に兄がいるのは二人共知ってるでしょ?」

「いや、そんなこと言われたことないぞ」

「そうだったかな…まぁいいや。それで僕の兄はそういうのに詳しくてさ『OCT』について聞いてみたらさ兄と面識があったみたいで、連絡取れかなと思ったら今日急に兄貴から連絡があって公園で待ってるって言うんだから驚いたよ」

驚いたと言う割には地面に膝をついてなんだか面白そうに笑う渉の姿に呆れながらも俺は今の状況を頭の中で整理する。

考えてみれば今回の急な訪問には驚きはしたがもしかするといい方向に流れているのかもしれないと思った。

というのもこれから戦う相手は上位3チームのみなのだから。

「まぁ、これからはあんまり無茶するなよ。こんなの心臓に悪い」

「だけど龍ヶ崎くんは堂々としてたね」

若葉に言われて気づいたがこれまでの俺なら高校生のような年上に絡まれたらビビって固まってしまっただろう。小学生なんて大体そんなものだと思うが。

「多分、渉と一緒にいるからだろうな、悪い癖が移ったんだと思う」

渉と初めて話してから約一ヶ月、これまで戦ってきたほとんどが上級生だったのだが渉はいつも上級生からの挑発を煽るような口文句を言い放つのだった。

戦う時以外の普段は穏やかでお調子者の口ぶりとは一風変わったその口使いに最初は戸惑いを感じていたのだがどうやらゲームの世界に入るとスイッチが入ってしまうらしいのを知ってからは俺もつい熱が入って加勢するほどになっていた。

「だけど…」

俺は渉に手を差し伸べて起き上がるのを手伝うとふと思ったことを口にする。

「さっき片桐が言っていたけどこのゲームって銃もあるんだったよな」

最初にこの場所で渉と練習したときの説明でもこのゲームには刀と銃の二つがあると言っていた。

「ああ、そういえば一にはまだ銃について説明してなかったね」

そう言って渉はよろめきながら既に公園の中央に設置されていた白い機械もといNEXTに近づいて起動させると俺にゴーグルと今まで見たことも無かった黒い物体を投げてくる。

「これってモデルガンか?」

渡された黒い物体をよく見てみると形は小型の銃のようなもので質感はゴムのように弾力が合ったが小学生の俺の手には一回り大きい代物だった。

この時点で察しがつくが一見するとおもちゃのようなこれも刀と同様メガネを掛ければゲームの世界ではリアルな銃に変わるのだろう。

「一のことだから察しが付いているんだろうけど、刀と同じでこれも銃に変わるんだ。だけどこれがまたすごくて今までのゲームよりもリアルさを追求していて振動や弾道の計算がこれまでのゲームより遥かに技術をかけていて、その上、人に銃口を向けると右上のマップに位置が表示されるサイレントシステムが初めて導入されていて今までのゲームより格段に進化しているん...」

「なぁ渉…話はそのぐらいでいいからな」

「ああ、ごめんごめん、説明するより実際にやってみたほうがいいよな」

苦笑いを浮かべる渉をよそに俺は早速、手に持ったメガネを掛けて手に握った銃を見つめるとそこには銃の人工物のリアルな光と確かな重みがあった。

「このゲームに限った話じゃないんだけど銃は扱いが難しいんだ、ほら試しに引き金を引いてみて」

そう言われ俺は早速銃口を地面に向けると不器用に人差し指で引き金を引いた

すると同時に腕に大きな痛みを感じたのと同時に銃は大きな衝撃とともに手の中から飛び出して地面へと転がった。

「痛ッ」

予想に反して骨に響く痛みはじんわりと広がりつい腕を抑え痛みに堪える。

そんな俺をよそに渉は銃を片手に数発打つと満足そうに笑を浮かべた。

「銃を扱うにはちょっとコツがあってね、最初はこうして脇を締めて肘を伸ばしきらないで重心を少し前にして的をまっすぐ捉えるんだ」

「それを先に言ってくれ…」

腕の痛みを抑えて必死に痛みをこらえていると目の前で余裕そうに笑う渉が憎らしく思えたが、ここでやめるわけにはいかない。

地面に落ちた銃を拾い上げると渉に言われた通りに脇をしめ腕を伸ばすと目を細め標準を定める。

未だ静かに疼く腕の痛みを抑えるように左手で銃を握る右手を覆い隠すと深い溜息を吐き出し体の力を抜いて全集中を照準の中央に集めた。

冷たい引き金が人差し指に触れると同時に俺は引く

先程と同様に衝撃が腕に伝わると同時に放たれた銃弾は狙いを定めた部分の中央をやや上へと流れていった。

「まさか二発目でここまで正確に撃てるなんて...」

渉の小さな驚きの声が微かに聞こえて振り向くとその顔は言葉に反して屈託のない笑を浮かべていた。

「やっぱり一は飲み込み能力が凄い」

「そんな事ないだろ、お前だって物覚えが早いほうなんだからこれくらい直ぐにできたんじゃないか?」

「いや、僕でも初めてやったときは空き缶に正確に当てるまでに1週間は掛かったよ。まぁ、僕自身は細かい作業ってよりか大きく動き回りたい方だから集中力を使う銃より刀のほうが得意なんだけど」

「いやでも今の動かない状況でも狙ってたところから弾は結構上にずれてたからな、こんなんじゃまだまだ使いこなせたとは言えないだろ」

「もしかして一には銃弾が見えてたのか?」

「はぁ?渉には見えなかったのか?」

引き金を引いたあと確かに俺には自身の銃から飛び出した銃弾が照準の上へと飛び出していったのが見えていた。

だから頭の中でもう少し銃口を下げて反動に対応しようと考えていたのだ。

渉は何か少し考えるように顎に手を置くと口元を緩ませた。

「それじゃあ…この銃口を」

そういって渉は俺の正面に銃を向けると何の脈絡もなく引き金を引いて発砲した

「うわ、何すんだよいきなり!」

突然の出来事に俺はただ為すすべもなく立ちすくむだけだった。

銃弾は体を貫通するがその感覚はない、渉との練習で何度も刀で切られたが同様に体に傷一つ残ったことはない。

最初は自分の体を切りつけられるということに抵抗を感じていたがこの時にはもう現実世界と仮想世界との区別は出来ていたつもりだったが突然の不意打ちに体が反応してしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ