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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:memory
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first battle

俺が渉に出会ったのは俺たちがお互いに小学生4年生の時だった。

その当時の俺は今と比べてあまり人と関わりをもたない性格だったから知り合いも少なかったから、今考えれば渉との出会いがなければ俺がゲームの世界に入り込むことも無かっただろう。

そんな俺が渉と初めて出会ったのは渉が俺の学校へと転校して来たからだ。

「初めまして、矢薙渉やなぎ わたるです」

髪は短く肌は少し褐色で第一印象としては外で遊ぶような元気な子どもといった風貌でいつもの昼休みは知り合いが少なかった為か外で遊ぶより中で本を読むなどして過ごしていた俺とは正反対の人間だと思った。

「それじゃあ矢薙君は篠川さんの隣の席ね」

と当時の担任が言った様に俺と渉とは席も近いわけではなく、むしろ転校生として目立った立ち位置に加えて陽気な性格だった渉はクラスの人気者として、俺はクラスの影的な存在として明暗がはっきりしていていわば交わることの無い大きな溝のような物があった。

そんな俺と渉がどうしてクランを組むまでに仲を深めたのか

忘れる事はできない、あれは渉が転校してきたその年の夏休みが終わったすぐの事だった。


学校への登校日

夏休み明け最初ということもあって授業は無く始業式をすませお昼過ぎに終わり放課後を迎えると、クラスの皆が夏休みが終わって休めないとか久々に会う友達と休みの間どこに行っただとかの会話を繰り広げていた。

そんな中で俺は一足先に帰ろうと皆が談笑をしている間をすり抜け教室を出た。

談笑をする相手もいなければ夏休みが開けてこれからまた学校にくる憂鬱な気持ちがあったからだ。

下駄箱に向かい靴を履くと残暑の暑さが残る中、校門を抜けて通学路を通っている時だった。

俺がいつも通っていた通学路って言うのが学校の校舎の裏沿いにある小道を通って行くものだったんだが、どうやら校舎の裏に人が数人いて何か言い争いしているみたいだった。

俺は恐る恐るフェンス越しにその様子を覗いてみると何とそこには見覚えのある人間が

何を隠そう、その人物というのが矢薙渉だった。

見た感じ渉は体格が明らかに違う上級生2人に絡まれているという風だった。

そしてその隣にはもうひとり知った顔があったのだが。しかし、その顔がよく見えずに近づいた時だった、俺はフェンス越しから見ることに集中していたせいで足元の枯れ木を踏み音を立ててしまったのだ。

ヤバイと思った瞬間には遅かった。意外にも大きかったのか、その音に反応して、その場にいた四人は全員、俺の方を向いた。

俺は逃げ出そうと一歩後ろに下がったのたが、その瞬間に渉が俺を指差しフェンスまで走ってきて話しかけて来たのだ。

「ねぇ龍ヶ崎君だっけ?」

「え、えっと、ああ」

俺は話しかけられたこと以上に渉が一度も話したことのない俺の名前を知っていたことに驚いた。

そんな俺の事は二の次に渉はさらに驚くことを言ってきた。

「龍ヶ崎君、ちょっと手伝ってくれない」

そう言って笑う日焼けした肌に見える白い歯は驚くほど渉に似合っていた。

今まで見てきた状況で渉がやっていることは明らかに上級生との喧嘩だと思った俺はその申し出を聞いたとき素直に巻き込まれるのは正直嫌だと思った。

だが俺が反論を述べる間もなく渉はフェンスを飛び越えて道に立っている俺のバックを肩から奪い取るように持つとフェンスの上を放物線描くように学校の敷地内へと投げ入れたのだ。

「ちょ、ちょっと...」

一足先にフェンスによじ登り上級生の元へと行こうとする渉を呼び止めた。

「俺、喧嘩なんかしたことないんだ」

先にも言ったように俺は外で遊ぶタイプでもなかったし一人っ子だったから尚、人と殴り合いの喧嘩というものをしたことがなかった。

実践もなく弱気なのを言えばもしかしたら関わらなくて済むかも知れないと思ったのもある。

しかし、そんなことは渉に言ったところで無駄だと気づかされたのはこの時からだった。

「大丈夫、龍ヶ崎君は立っているだけでいいから。敵は全部俺が倒す」

その言葉の意味するものをその時の俺は分からなかったが、だけどその言葉は本当にそのままの意味なのだと分かるのは案外すぐだった。

「これで2対2になったな」

「それじゃあ早速始めるとするか」

俺は何も理解できないまま、ただ渉の後ろに隠れるように着いていくと上級生の二人は何やらゴーグルのような物を掛けると白くて大きな四角い装置を渉との間に置くとボタンを押して起動させた。


その瞬間辺り一面を覆うように広がる透明な膜のようなものが装置から出てくると、それはだんだんと大きくなるにつれてドーム状に形を変え最終的には校舎裏の敷地を覆う程の巨大なものになった。

「なんだこれ」

目の前で起こる全てが初めて目にするもので辺りをキョロキョロと見渡す。

膜は目を凝らさないと見えないほど薄く透明な物で一見すると何も無いように見えた。

しばらく俺がそうやって辺りを見渡しているとある事に気付いた。

というのも先程フェンス越しにも気付いたのだが近くの木に隠れるように座って俺と渉、それに上級生二人を含めた四人の様子を見ている少女

俺と目が合うと少し膨れっ面になったその顔は俺も知っているものだった。

「龍ヶ崎君、はいこれ掛けて」

渉にそう言われ渡されたのは先程、上級生が掛けていたゴーグルのようなものと同じだった。

物陰にいる同級生の事も気になったが急かす渉に乗せられ急いでゴーグルを掛ける。


目を開けてみると、そこには先ほどまでの晴れた天気とは一変して世界の終焉を感じるような暗い雲が辺りを包んでおり真っ白だった校舎は何十年も放置された廃墟のように壁には蔦が絡まり地面には背が高い雑草が生い茂っていた。

「なんだこれ...」

その時初めて、俺はゲームの中へと入った。異世界へと迷い込んだ感覚

それは今まで経験したこともない、まるで自分の体が自分のものではないように思えた。

「始まるよ、龍ヶ崎君」

その時になって初めて中央にカウントダウンの数字が表示されていた事を知り見てみると残り時間はあと3秒と残りわずかだった。が俺は初めての事だらけで何をしていいのか分からない。混乱する俺をよそに中央のカウントが0になると同時に大きな音がなったと同時に上級生の二人はこちらに向かって来た。

いきなりの出来事に俺は立ちすくみ身動きが出来ない。それをいいことに上級生の二人はどんどん距離を詰めてきた。

恐怖の文字が頭をよぎるのと同時に俺の横から囁くようにつぶやかれた。

「まかせて」

そう言って動けない俺の目の前に出てきたのは渉だった。相手が始まった途端に飛び出してくる事を予想していたのだろう、渉の手には長い太刀が握られていた。

それを見て上級生の二人も同じタイミングで刀を呼び出すと渉の元へと突っ込んで行く

呆然としてその光景を達観することしか出来ない俺の目の前で渉は襲いかかって来た二つの刀の内一つを自身の刀で弾き返すと同時に体勢を低くして一人の体の下へと入り込むとまるでお手本を見せつけるかのように腹部の部分目掛けて刀を振り払った。

そのカウンター攻撃により上級生の一人の上にあった体力ゲージは瞬く間に空っぽになり光に混じって消えていってしまった。

「一体何が起きて...」

突然人が消えたことに驚いているのも束の間、もうひとりの上級生の攻撃が渉を狙う。

渉はその攻撃を避けるため体のバランスを崩して緊急回避すると地面に手をつきそのまま足蹴りをし相手のバランスが崩れた所を突くように刀の先を天に突き立て心臓を突き刺すようにして的確に攻撃を決めた。


悔しそうな表情の上級生はそのまま光と共に消えると目の前には『YOU WIN』の文字が表示された。

「す、すげぇ...」

地面に転がる渉の姿を見て思わずそう言ってしまった。

ただでさえ体格差がある上級生をあんなにも華麗に倒してしまうなんて、同級生が上級生を倒す光景というのはどこか非日常的で何より面白そうだったのが今でも印象的に覚えている。


試合が終わると先ほど機械から出てきた透明な膜は再び収納されゴーグルを外して見るといつもの見慣れた学校の風景がそこにはあった。

「くそッ」

「あんなにあっさり負けるなんて、しかも年下に」

上級生の二人組は悔しそうにゴーグルを外すと地団駄を踏む。それを見て渉は面白そうに笑いながら先ほどの白い機会を手に取った

「それじゃあ、貰いますね」

その言葉に反論はなかった、代わりに上級生の一人が不意を突くように後ろを向いた渉の肩へと掴みかかった。

しかし、そんな状況に渉は動揺のかけらも見せることはなく呆れ気味に掴まれたを上から掴み返すとそのまま体重を前に掛けて上級生を背負投で投げ飛ばした。

「攻撃してもいいのはゲーム中だって約束でしたよね」

「くそッ!」

投げ飛ばされた上級生は腰を強打したのか臀部を手で摩りながらぎこちなく立ち上がると二人一緒に逃げるように早足でどこかに消えて行ってしまった。


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