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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:vival
44/139

『Re:rights』VS『J.L.Q』

龍ケ崎達『Re: rights』が秋葉原に交差点に来た時には既に『J.L.Q』のメンバーは待ち受けていた。

しかし、龍ケ崎は慌てることなく目の間に立つと比喩混じりに九十九に言葉を投げかける。

「待たせたな」

「まさか、そんなことを本気で思ってるわけないのに」

「そりゃあなぁ、これからお前と試合をするんだからな」

お互い目の前に立つと不敵な笑みを浮かべる。

他者には口を出すことすらも許されない、これが伝説と呼ばれる人間と最強と呼ばれる人間との独特な空気が交じり合って生まれたものであるのは周りの人間からも感じることができた。

最強と伝説、九十九は手を差し出す。

「それじゃあ早速、試合をしようとしようか」

「そうだな、早いところ決着をつけようぜ」

龍ケ崎は差し出された手を握り返すと、すぐさま振り向き体は光の中へと包まれいった。


準々決勝 『Re: rights』VS『J.L.Q』 『試合開始』



体を包み込んでいた光が晴れると龍ケ崎の目の前には中華街を模したような建造物が疎らに建ちそびえるステージの全貌が広がっていた。

チームの拠点として今いるビルの屋上から眺める限りでは人影が無いせいなのかゴーストタウンとかしたのを見ると妙な不安に駆られた。龍ケ崎はホログラムを呼び出し現在の時間を確認すると振り返りメンバーを三人の姿を一人ひとり見渡した。

「それじゃあ、ここからは別行動だ」

「ああ、龍ケ崎頑張れよ」

「龍ヶ崎先輩、頑張って!」

二人の言葉に龍ケ崎は少し笑うとその奥に佇む内海に視線を向ける。

「内海、この試合が終わったら少し話がある」

その言葉に内海は少しだけ間を開けて少し考えると直ぐに決意をしたように口を強く結ぶと言葉を少し笑みを浮かべて返す。

「楽しみにしてますね」

龍ケ崎と内海の二人は不敵に笑みを浮かべてる。その静けさの中で立ち向かう両者の間に暖かな風が流れ髪を揺らした。

そんな空気を茶化すように鴉野が龍ケ崎に言葉を投げかけた。

「龍ヶ崎そんな洒落たこと言ってると油断して負けるぞ」

「心配するな、俺は勝ちにいく」

時間を見てみると九十九が提示した時刻が迫っていた。龍ケ崎は急いで踵を返すと自身のメンバーに背を見せるようにしてビルの屋上から近くの建物へと飛び移っていった。


九十九と対戦する場所は建物が埋め尽くすこのステージで少し開けた場所がある中央の広場だ

龍ヶ崎がその場に着いた時には既に九十九は腕を組んで待ち受けていた。

「指定時刻38秒前か…遅刻では無いようだな」

「お前は時間に厳しすぎる。そういうやつは嫌われるぞ」

「君に言われるとは、滑稽だ」

九十九は訝しげに表情を変えて龍ケ崎のことを睨んだ。その冷たい視線を真正面から受けて立つと慣れているはずなのに今でも身震いで手が少し震えた。

しかし、今現在でもその名を馳せている九十九に、しかもあいつの得意分野である刀でのタイマンで勝つ方法

昨日一日考えて見ていくつか思いついたがどれも確実性には乏しく結果として一つしか思いつかなかったのが本音だが

「やるしかねぇよな...」

龍ケ崎は大きく息を吸うと首を傾けて天に映る架空の青空を見た。

現実世界でも見たことがないくらい綺麗な青空、そこにいくつかの白い雲がいくつあるが。しかしこの世界は限りなく現実に近い偽物だ。

実際に攻撃を受けても痛みは感じないし触れることは出来てもそれは実物ではなく五感を操られているからだ。

負けることはできない、それは確か。

しかし。俺の中ではそれ以上に九十九に負けたくないというプレイヤーとしてのプライドがある。

「ダメだな、やっぱり俺は生まれた時からこういう性分なんだな」

龍ケ崎は首を傾けて視線を変えると九十九を鋭く睨みつけて大きく深呼吸をした。

「作戦開始だ」


龍ケ崎はゆらりと体の芯を傾けると武器も何も持たずに対峙する九十九の元へと走り一瞬のうちに距離を詰めていった。

その突拍子もない行動に九十九は驚きの表情を見せたがそこは流石一流のプレイヤーだ、すぐさま警戒して突進してくる龍ケ崎に向けて刀を向けて体勢を整える事でカウンターを狙う型になる。

「突っ込んで来るなんて、舐められたものだな」

九十九の言葉は最も、他のプレイヤーならまだしも九十九に真正面から突っ込んで行くのは自殺行為も当然だが。

「だからだよ」

龍ケ崎は走りながら九十九の言葉を返した。

裏を返せば皆が避けている正面からの特攻っというのは予想外、隙を狙うのではなく隙を作ることこそが九十九に対しての唯一の必勝法

「ソード 『サザラシ』」

サザラシは刃が大きく反っており丈夫な刀だ

龍ヶ崎が全速力で突進したことで九十九との距離はあと数歩の距離

刀を握った龍ケ崎は足を止めることなく勢いそのまま体を大きく回転させ刀を大きく左から右へ大きく振って九十九の胴体を狙う。

その瞬間、鈍くしかしそれでも金属が擦れる鋭い音が辺りに響き渡ると同時に重たい衝撃が龍ヶ崎の体全体にのしかかる

「くッ」

その衝撃は受け止めた九十九は唇を強く噛んで耐えようとするが走った勢いと力の差で予想以上の衝撃に大きくバランスを崩した。

予想通り。龍ヶ崎は絶好の隙をそれを待っていたかのように素早く左手を自身の右腰に当てる。

服の下から見えたものに体勢を崩した九十九は驚きの表情を見せる。

龍ケ崎の作戦は相手にわざと刀でカウンターさせて隙を作る。しかし、それだけではまだまだ不十分だ、そこで考えたのが

「ふっ...二刀流か...」

この勝負で提示された条件は武器は刀だけということ、つまり武器は刀ならやり方は問わない。この手はこの前の凛との対決で凛がやっていたことだ、まさかこんな事に役立つとは思っても見なかった。

予想外の出来事に驚く九十九とはうって変わり龍ケ崎は冷静に急所めがけて二本目の刀を素早く左手で抜刀して急所めがけて刃先を向ける。

体勢を崩したこの状況で刃を避けることは不可能だが

「ソード 『サメヅキ』」

九十九は小さく呟かれたその言葉を発した瞬間、龍ケ崎の最初の一撃を防いだ刀は右手の中で光と共に消え同時にあたらしい刀が左手に握られた。

龍ケ崎は瞬間的にまずいと心の中で呟いた

最初の一撃にかなり体重をかけていたせいで九十九の刀が消えた今、バランスが崩れる

その隙を見逃さない九十九は足を出して踏ん張りバランスを崩した龍ヶ崎の急所を外した刃先を避けるとお返しとばかりに左手に握った刀を振り上げた。

(まずいな)

一瞬にして形成が逆転された龍ケ崎、有利な状況から冷静な状況把握に瞬発力、機動力。そしてなによりそれを実行し形成を変えさせる確かな力

これは一概に才能と努力さらに経験があるからこそ的確に判断し最善策を導き出せるものだ。

五年前、あの大会で共に戦った時よりも強い。龍ヶ崎が心の中で「まずい」と呟いたその一言にはそれだけの意味が含まれている。

しかし、だからこそ、そんな自分より強い相手に勝ちたい


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