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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:vival
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『Re:rights』VS『J.L.Q』

「それで九十九さんと何を話してきたの!?」

龍ヶ崎が拠点へと帰るとその帰りを待っていた『Re: rights』の三人、その中でも凛は机に身を乗り出して龍ケ崎に問いただす。

そんな時でも龍ケ崎は淡々と言う

「ああ、次の試合であいつと一対一で勝負することになった」

「はぁ!どうしたらそんなことになるのさ」

凛はさらに身を乗り出して龍ケ崎の顔に近づける。

「そんな事言われてもな、あっちから言い出してきたんだよ」

「余計意味わかんないよ」

「それにしても、あの『J.L.Q』の九十九の話によく了承したな」

鴉野が言うことは分かっている、いつもの俺ならば相手からの誘い、しかも九十九となんかは相手と取引をするなんて絶対にしない。

しかし今回に限ってはそうもいかない事情があるのだ。龍ケ崎は静かにため息をつくと目の前に座る三人のうちの一人、内海を見た

「なぁ、内海。ここまで来た以上もう二人にも話したほうが良いと思うんだが」

「え、それってどういうことなの」

凛は龍ケ崎に向けていた視線を隣の内海へと向ける。

当の本人は驚いた様子もなくいつものようにどこか澄ましているようだった。

「まぁ、いつかは言わなければいけないですしね。そうですね、ではお二人も見せましょう」

そう言うと内海は席から立ち上がり龍ケ崎が初めに教えられた時のように人差し指を突き立てるもう片方の手に握った安全ピンで静かに刺した。するとそこには小さな赤い血液が流れ出てくる。

「このゲームは私がこのゲームに電子移植した事でできたんです。しかしある諸事情によりこのこの世界から出れなくなったんです。しかし、そんな中で一つだけ残された希望があります。それはこのトーナメントで優勝することです。だからぜひ皆様の力で『Re: rights』を優勝に導いてください」

頭を下げた内海をみればどんな突拍子もは話も現実であることが分かっただろう。

しかし、仮想現実の世界ではありえないことに鴉野と凛の二人もしばらく状況を飲み込めないのか言葉を発することはしなかった。

それを見て代わりに龍ケ崎が先程の話の補足をする

「まぁ、今回の試合は俺と九十九しか対戦しないから心配はしなくてもいいだろうよ」

「だけどなぁ...」

鴉野はそこで話を辞めるともう一度内海を見て龍ケ崎に話を戻す。

「今回の試合に勝つ策でもあるのかよ。昔は確かにお前が勝っていたかもしれないが今現在の力で九十九に勝てるなんて言い切れないだろ」

痛いところを突かれたというふうに龍ケ崎は天井を仰いだ

「それがさっきから考えてるんだが思いつかないんだよな」

「龍ヶ崎お前なぁ...」

今回はチーム戦じゃない、つまり個々の力が大きくモノを言うわけだが、条件には刀のみ使用ができるという文言があった。

今になって思い出したのだが九十九は刀の使い手であったことを忘れていた。

その間に内海は血が出た部分に絆創膏を貼り終えると指をスワイプさせてホログラムを呼び出すといつものようにテレビ画面に相手の情報を表示させる。

「みなさんも知っての通りですが今回の相手は世界でもその名を轟かせる『J.L.Q』です。大会優勝は83回、上位入賞は三桁を超えるクランと誰に言わせてもその力は確実なものです。そして、その中でもリーダーである九十九さんは『J.L.Q』の創設にも関わりクランが成立してから8年たった今でも実力派がそろうクラン内でも一、二位を競う力の持ち主で今尚クランを引っ張っていく重要人物として知られています」

そこで言葉を区切ると内海は心配そうに龍ケ崎の事を見る。

「こんな人に勝てるんですか...」

その声は明らかに怯え、目元も少し虚ろに見えた。

それもその筈、相手の情報をみれば見るほどその才能と実力に勝てる望みが無くなっていくように思えるからだ。

「はっきり言ってあいつに勝つのはかなり難しいだろうな」

「そ、そんな...」

弱気な発言に内海に変わって凛が声を上げる。

しかし、龍ケ崎は不安そうな三人をぐるりと見渡すと堂々と言い放った。

「勝てないとは言ってないだろ、一応勝機はある」

「本当に?」

「取り敢えずどんなのか話してくれ」

期待して机に身を乗り出す二人を見ると龍ケ崎はあまりに少し後悔をした。

確実に勝てるというものではない、少しだけ勝率が上がる、もしかすると上がりさえもしない作戦を語った所でダメ出しをされるオチの方が可能性で言えば高いのだ。

「悪いが今回は俺と九十九の二人の試合だ、だから今回は俺だけで考えさせてくれないか」

「うーん、そう言われると」

「まぁ、確かに今回俺たちは戦うわけじゃないからな」

そう言いつつも二人は腑に落ちない顔をする。九十九に勝てるなんて言ってしまったから無理もないが。しかし、それほど今回の対戦は今までの中でも一番厄介で強いということだ。

一息つくと龍ケ崎は深呼吸するとコーヒーを飲み干し立ち上がった。

「それじゃあ、俺は部屋に戻ってもっと他にいい作戦でも考えるわ」

「龍ヶ崎さん、お願いします」

そこで今まで黙って俺たちの話を聞いていた内海が深々と頭を下げた。

その声は相変わらず何かにおびえているような声だったが

「いきなりどうしたんだよ」

「いや、なんていうか、こうしないと私の気が収まらないんです」

「そういうのは勝ってから言うもんだろ」

「確かにそうですね」

内海がそう言って少し笑うのを見ると龍ケ崎は階段を上り自身の部屋の中へと入ると崩れるようにベットに倒れ込んだ。無機質な部屋の角に置かれたベットに横たわり照明が照らす天井を一人でに眺めて考える。

「渉、俺はどうすればいい」

ため息とも聞き取れる深い息を吐くと龍ケ崎は小さく呟くと瞼の上に腕を置いて目を閉じる。


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