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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:vival
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『Re:rights』VS『J.L.Q』

『J.L.Q』正式名称は『Japan Leiurus Quinquestriatus』

リーダーの九十九をはじめ世界で活躍するMMOプレイヤーが多数所属するクランだ。

俺たち『Re: rights』のように固定したメンバーがいるのとは違いプレイヤーの実力によって4人のメンバーの中に入れるか入れないかが決まるいわばMMOFPSゲーム界の四天王的な存在なのだが

その中でもリーダーである九十九はMMOゲーム内でも珍しい女性のリーダーとしてだけではなくキメ細く輝きを放つ黒髪に整った顔と数々の大会で優勝した実力を兼ね揃えているということで今でも国内外にその名前を轟かしている。

俺と直接最後に出会ったのは『J.L.Q』は五年前のあの忌々しい大会に『Re: rights』と同様に日本代表として出場した時が最後だと思う。

そんな彼女は真上に登った太陽を遮るように指定のカフェのテラスのパラソルの下でコーヒーカップに口をつけて時間丁度に登場した龍ケ崎の事を上目で見つめる。

「急に呼び出して悪かったね、さぁ立ってないでそこに座って」

九十九は視線を少し下に落とし机越しに空いている椅子を指し示した。

龍ケ崎は言う通りに目の前の席に座ると近づいてきた店員にコーヒーを頼んだ。

「そういえば君はコーヒーが好きだったね、試合の前によく飲んでいた気がする」

九十九は龍ケ崎の目の前に運ばれてきたコーヒーを見つめながら不敵な笑みを浮かべながら自身のコーヒーカップを傾ける。

しかし、その冷たさはこの前の楠野とは違い九十九の笑は感情が無いように思えるモノがあった。

「それで、なんの用でわざわざ俺を呼び出したんだ」

龍ケ崎は冷やかしを聞こうともせず機嫌が悪いことをあえて隠さないでぶっきらぼうに言葉を投げかける。

しかし、当の本人はそんなことを一片たりとも気にする素振りは見せない

「理由かい?うーんそうだな、さして言うなら昔からのよしみとの再開を喜び分かち合う為とかかな?」

「それじゃあ俺は帰るぞ」

龍ケ崎が席を立ち上がり踵を返して背中を向けえると取立てて慌てるような素振りを見せる事はしないで一言龍ケ崎に声をかける。

「いいのかい、このまま帰ってしまえば君が関わっているであろう問題は解決されないんじゃないだろうかな、違うかい?」

「ふん、お前この五年で一層性格が悪くなったんじゃないのか」

龍ケ崎は体を捻り先ほどと同じような体勢に戻るとコーヒーを少しだけ飲んで喉を潤した。

「それじゃあ仕切り直そうか、まずは久しぶりだね『Re: rights』の龍ケ崎 はじめくん」

「ああ、出来れば二度と会いたくなかったよ『J.L.Q』の九十九 かえでさんよ」

九十九のフルネームを知ったのは実際に会った時に挨拶された時に言われた、まぁ俺もつられてうっかり下の名前まで名乗ってしまって以来、九十九は俺のことをフルネームで呼ぶことがあって今では後悔していた。

「まぁ、こうして世間話をするのもなんだから早速要件について話そうか」

「ああそうしてくれ」

九十九は龍ケ崎の言葉に満足そうに笑みを浮かべるとカップに触れていた指先をスワイプさせ自身のホログラムを出すと一つの映像をスライドさせて龍ケ崎にも見えるように二人の間に拡大表示させる。

「君達『Re: rights』は新しいメンバーが入ったみたいだね」

そう言って九十九は間に広がる画像の一個を指差した。その画像はどうやら前回の戦いの中でハンドガンを構える内海の姿だった。

「それがどうした、他のクランの内状を気にするなんてお前らしくないんじゃないか」

「ああ、確かに君の言うとおり私は他のクランの事はあまり興味は無いんだが。しかし、君たち『Re: rights』は別だ、私は私を倒したクランは一つ残らず覚えている」

「そりゃあどうも」

つまりはプライドが高くて根に持つタイプって事だ、そんなのは昔からだ。

多くの人間には気づかれないほど自然に言葉巧みな話術でその人の地位を自分より下げる。その闇を知ったのは実際に会って喋って見てからのことだが、どうもこいつと話すと気疲れする。

「それで私が聞きたいのはこの新入りの女の子の話だ、もっと掻い摘んで言えばこの女の子は一体全体何者なんだい?」

「それは...」

九十九は間に多数散らばってっている画像の向こう側で龍ケ崎のことを鋭く睨みつける。

その鋭さだけで人を殺しかねない冷酷さは数々の試合で勝利を収めてきたクランのリーダーの気迫なのだろう。

「このゲームに来てからの君たち『Re: rights』の試合を全部見せてもらったが、5年のブランクをもろともさせない動きは流石と言えるよ。ただ一つだけ腑に落ちないのが君の動きだ。明らかに君はこの彼女の事を庇って動いているように思える。特に2試合目はわざわざ自身にリスクを冒してまでこの少女を助けている。これは私の勝手な想像だけどもしかして彼女に何かしら理由、例えばダメージを負うことが出来ないとか」

鋭さを増す瞳とは裏腹に九十九の口は楽しそうに笑みを浮かべた。

それにしても、こいつの観察眼は誰よりも引けを取らないのは百も承知だったが、そこまで詳しく言い当てることができるとは五年前の記憶からは想像もしなかった。つくづく嫌な性格の人間だと思う。

「そこまでわかってるんなら俺が言いたいこともわかるだろ?」

「ああ、わかる」

九十九は頬杖をしながら目を閉じるとゆっくりと口を開いた。

「もし、その事を言おうものならそれは相手に対して負けるように言ってるのと変わらない紛れもないほどルール違反、もちろんこのゲームから追放される事になるでしょうね」

言葉を言い終えた九十九の目は真相を問いただすために小さく開かれる。

それに答えるように龍ケ崎は一瞬だけ目線を合わせるとほかの席の客に視線を変えて作り笑い浮かべながら皮肉たっぷりに言う。

「それじゃあお前は次の試合で俺たちに負けてくれるのか?」

「君が一番知っているじゃないか、私たちが...いや、私が試合で手を抜くなんてことするわけないって」

当然のように言い切る九十九は微笑の顔の裏には黒いものが見える。

プライド。世界的プレイヤーであるがゆえに勝った時よりも負けた時の方が大きく取り上げられるのは仕方のないこと、九十九もまた今現在も頂点に君臨しているプレイヤーの一人ということで試合に対する思いは人一倍にあるんだろう。

龍ケ崎は深いため息をつくとコーヒーカップを掴んで一息つこうとした時である。


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