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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:vival
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Arrow of time

「龍ケ崎、昨日の『Red.Panthera.leo.Clan』対『J.L.Q』の試合見たか?」

「ああ、そんなのやってたらしいな」

「おいおい、まさか見てないってこと無いよな?」

朝、中学までのこの道のりを三人並んで歩くのも3年にもなると坂道と横を歩く隣の渉が煩わしいとくらいしか思わなくなった。

「その試合って確か夜中にやってたやつだろ?俺はその時間には寝てたよ」

「はぁ... 一は連れない奴だな」

「まぁまぁ、龍ヶ崎くんだって別に興味ないわけないんじゃないんでしょ?」

「そうだけど...」

どんな時でも若葉の向ける笑顔には人の心を動かせるものがある、それはある意味才能にも近い、実際これで何人かの男はやられてしまったのを何人か知っている。

「それじゃあ放課後にでも私の家に来て見よっか、私昨日の録画したし」

「おー、いいね。俺もまた見てみたいし」

「もちろん龍ヶ崎くんも行くでしょ?」

本音を言えばそんな事に労力を使うなんてさらさら御免だが、結果が分かっている以上若葉のこの言葉に逆らえるほど俺も人間は出来上がってはいない。

「わかったよ、行けばいいんだろ」

「うん、それじゃあ二人共放課後にうちに集合ね」

そこまで言って若葉は言葉を詰まらせる俺がその横顔を見るとなんだか話題を変える。

「そういえば学校で妙な噂を聞いたんだけど二人共知ってる?」

「妙な噂って、七不思議的な?」

渉の言葉に若葉は口元に手を置いて考え事でもするように答える。

「いやそれがね、学校内でMMOゲームを使った賭博が流行っているみたいなの」

「賭博って事は金を賭けてるって事か?」

「うん...まだ確かな事は言えないんだけど上級生も絡んでいるみたいでさ、お金を払えなくなったら恐喝まがいの事をされたって人もいるらしいの」

「それが本当だったら校内の問題で済まないだろうな」

少なくとも日本の法律でそんなことをすれば警察沙汰になる事は間違いないだろう。しかしそんなことをするようなやつが俺らの学校にいるのだろうか。

いや、待てよ、心当たりならある。

「そういえば一年に楠野とかいう奴がいるだろ、あいつに話を聞いてみたらどうだ?」

「一年の楠野って陸上部の楠野翔太の事?」

「陸上部かどうかは知らないが確かそんな名前だったはずだ」

「龍ケ崎、どうしてそんなこと楠野に聞こうなんて思うんだ?俺は元陸上部だったからあいつの事を少しは知ってるけど、あいつはいたって普通の人間だと思うぞ?」

「いや、あれは丁度一週間前の掃除の時間の時だったな、ごみ捨てに俺はゴミ置き場に行ったんだ。その時になんだかおかしなカードを捨てようとしてる奴がいてそいつが一年だと分かってな声をかけたんだ。その時の説明ではカードは家にあったものだと言ってんだけどな、どうもおかしいから家に帰ってから調べてみたんだ。そしたらそのカードってのは一昔前に流通していた仮想通貨を入れる物だったわけ、つまり財布のようなものだったってわけだ」

「なるほどな、ネットを使って仮想通貨をやりとりをすれば履歴として足跡を残してしまう可能性がある。だからわざと現実のカードとしてやり取りをしていたってわけか」

「確かに言われてみれば益々現実性がある話になってきたね」

「まぁ、取り敢えず実態の調査をすべきだろうな、噂が確かなものだという確証がないと警察どころか校内の人間だって動かないだろうぜ」

「でもそんな事どうやってやればいいの?」

いつの間にか三人は路上に立ち止まり目を閉じる龍ケ崎の答えを待っていた。

「作戦は簡単だ、渉お前楠野とは陸上部としてそれなりの関わりがあったんだよな?」

「部活辞めるまでの短い期間だったけどそれなりに仲良くしてたな」

「それじゃあまず渉から適当に理由をつけて楠野と接触してくれ」

「分かった」

そこできて龍ケ崎は気づいた、隣でふくれっ面で見る同級生の少女のことを

「もう、いつもいつも私のことは置いてきぼりにするんだから」

「若葉、そこまで怒らなくてもいいだろう。お前こういうの苦手なんだから下手に手をだされて失敗してもしょうがないだろ」

「もう、龍ヶ崎くんは本当に辛辣なんだから、少しは人の気持ちを考えて行動してほしいよ」

「ああ、俺が悪かったよ」

龍ケ崎は目の前の少女が笑う中で不敵な笑みを浮かぶだけだった。


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