『Re:rights』VS『LIーVE』
目の前のこの男、本名、楠野翔太は俺の中学時代の2つ下の後輩だ。
詳しいことは今は省略するが楠野と俺の関係を説明すると中学時代に流行った子供がやるようなゲームでの賭け事のライバル同士だった。
しかし、その関係も俺が卒業することで終わったはずなのだが
「まさか、こんなところで出会うなんてな」
龍ケ崎は言いながら久しぶり出会う後輩と交わるようにハンドガンの銃口を向けた。
先ほどのスナイパーは今、楠野の体が死角になり先程の射撃場所とは違う場所から狙ってくるだろう、つまりその間は邪魔は入らない。
「俺は長話は好きじゃないからな、外さないぜ」
自身の急所に向けられた銃口には動揺せずにただ見つめる楠野に向けたハンドガンの引き金に指をかける。
その瞬間だった、龍ヶ崎の背中部分に痛みを違和感を感じたと思った瞬間には意思とは関係なしに体が地面へと吸い込まれるように倒れた。
突然の出来事に龍ケ崎は言葉を発する事も出来ずに驚きの目で相手を見るしかなかった。
一転、状況は変わってローもとい楠野は龍ケ崎のひれ伏した姿に口元を緩ませる。
「ははは。やっぱり昔からの癖は変わってない見たいですね」
楽しげな表情の楠野と相対して龍ケ崎は憮然な表情を浮かべることしかできない
「お前...一体何をした...」
龍ケ崎は地面に倒れこみ喋る事すらままならない、ただこんな状況だからこそ対峙する相手を睨むのを止めないとはしなかった。
それを病的な表情で見る楠野は抑えきれないといったように恍惚の表情で言葉を吐き出す。
「『Re: rights』の中で一番厄介になるのは龍ヶ崎さんあなただ、だからあなたを一人にしなければ勝ち目はかなり少ない。だけどそれだけで伝説のプレイヤーと言われたあなたを攻略することは難しいだろうと思った。現に先程の貴方の瞬発力、それから状況を一瞬で判断し立場を逆転する経験は流石の一言だ。だけどだ、そんなあなたにも一つだけ隙を見せる時がある。それはあなた自身が危機に瀕するとき、それと勝利を確信し笑みを見せたときだ」
龍ケ崎は相手を睨みながら楠野の自身の癖について考えてみると確かに思い返してみればそんな場面の事例がいくつか出てくる。
「でも、どうやって..あの短時間で気配を消しながら後ろに回り込めるなんて出来るわけ無いはずだ」
その言葉に楠野は子供のように声を上げて笑う。
「最初からあなたはあの状況でもスナイパーの銃弾を避けると思っていた。だから少しだけ仕掛けを施したんですよ」
「...」
「あのスナイパーライフルの銃口はフェイク、マジックの『クラッカー』で実際には音だけで発射されてはいないんですよ。それから僕は自ら窮地に立つような真似をしてあなたの注意を後方からそらさせた」
龍ケ崎は眼球を動かして後方を見るとそこには長身の人物が自身の事を見ていた。
頭上には『グラン』と赤色で表示されているところを見るとこいつが『LI―VE』の生き残りのうちのひとりで俺を後ろから撃ったのだろう。
それで龍ケ崎はここまでの経緯を全て理解した。
「なるほど...それでもうひとりが後方から俺を狙うってわけか...」
『クラッカー』音を出し尚且つ地図上に恰も人が存在しているかのようにマッピングする。マジックの中にそんな技もあったような気がする。
それを利用し尚且つ俺の能力を認めた上での細かな作戦
これは言い訳のしようも無く揚げ足を取られた。
笑うことを止めない楠野は片手に握ったハンドガンを龍ケ崎へと向けた。
「これでもう終わりです。でもそれこそもし最後にないかあればどうぞ」
地面へと倒れたまま絶体絶命の龍ケ崎は憮然とした表情で目の前であざ笑う相手に言い放つ
「お前こそ、おしゃべりが過ぎたようだな」




