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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:vival
34/139

『Re:rights』VS『LIーVE』

「クソッ」

そう言いながら龍ケ崎は手に握ったハンドガンの引き金を連続して引いた。

その銃弾は敵の急所をめがけて的確に発射されているが、しかし何度やっても敵はいとも容易く避けてしまう。

いつもなら鴉野が遠距離武器で狙ったりするんだが、今回のマップは森林ということで鴉野のスナイパーは木々に邪魔されて扱いづらい

龍ケ崎は手に握ったハンドガンの引き金を引きながら打開策がないだろうかと考える。

これも相手の作戦なのか、それともただ逃げているだけで理由は何もないのか

遠距離武器は使えない、ならば近距離の高火力武器にするか...

いや、木々が多いこのマップで隙が多くなる高火力の武器は返って相手の思うツボだ

ならばどうする、平行線の現状を覆すことのできる何か

その時だった龍ヶ崎の目の前にいつの間にか敵がいなくなって、代わりに見えたのは底深くの奈落だった。

気づいたときには遅かった同じような木々をわざと逃げ回り現在地がわからなくさせ、さらには弾が当たらないことで苛立たせて前方不注意にさせたのか

龍ケ崎は奈落へと落ちる体を捻って今の今まで追いかけていた相手を見るとその薄気味悪い笑い顔が奈落へと落ちていく体と相まって絶望感を増す。

地の利を活かした作戦、さすがここまで生き残ってきたクランだけのことはあって強い

「だけどな、こんなところで負けるわけにはいかないんだよ」

相手のことを睨みつけると龍ケ崎は落ちていく中で掴んでいたハンドガンを握ると崖の上から見下すように見る敵の頭を狙って銃弾を撃ち込んだ。

罠にはめた動物を見るかのような眼差しでこれで終わりだろうと笑みを浮かべ高みの見物をしていたのが運の尽き

「甘い」

相手はこの瞬間完全に油断している。

「なにっ!?」

相手の声にならない声に混じって龍ヶ崎が放った銃弾は見事に頭を捉える。

しかしそれは一瞬、相手の姿が光に包まれ消えると次の瞬間には妙な浮遊感と岸壁によって狭まっていく青空が見えるだけだった。



「先輩!!!」

落ちていく感覚の中でかすかに聞こえたその声に龍ケ崎は上空の光に目を細めた。

「今助けるから!」

青空に目を見張るとそこにはひとりの少女が龍ヶ崎に向かって手を差し伸べて落下していた。

「凛、お前にしては遅かったな」

絶対絶命の状況にも関わらず龍ケ崎は面白いものを見るように頬を緩ませて同じように崖から落ちてくる仲間に向けて手を伸ばす。

対照的に必死に手を伸ばす凛は龍ケ崎の手を掴むと同時に体へとロープを巻きつけると岸壁に両足をつけ土煙を立ち上げて落下の衝撃を緩ませる。

「ギリギリだな...」

龍ケ崎が下を見ると僅か数メートル先には奈落の底が姿を見せていた。

上空を見上げると青空は遥か遠くに見える。この高さだ、このまま落ちていたら確実に死んでいただろう。

「本当、無茶ばっかりするんですから」

凛は片手でロープを握ったまま龍ケ崎に言い聞かせた。

「毎回こんな目に遭う身にもなって欲しいよ」

凛の言葉を繰り返すと龍ケ崎には耳が痛く、苦笑いを浮かべてこれ以上話が広がらないようにロープを掴むと岸壁へと足をかけて登っていく

その時、龍ケ崎に着信があった。

「龍ヶ崎、こっちは一人やったぞ」

画面に映し出されていたのは草むらに隠れていた鴉野の姿だった。

二手に分かれて行動していたがなるほど内海とは上手くやっているようだ

「了解、こっちも今一人倒したところだ」

「それじゃあ、そろそろ本命の大仕掛けと行きますか」

「そうだな」

龍ケ崎はそう言うと通話を切ると先を行く凛の後を追うように岸壁をロープを伝って登っていく

そう、作戦はまだ始まったばかりなのだ、俺が敵を追い回していたのも作戦の準備に過ぎない。

「ねぇ龍ヶ崎くん」

思考していた頭の中での突然の言葉に龍ケ崎は視線を上に向けた。

「今だから一つだけ聞いてもいい?」

「ん?なんだ」

凛は言葉を口に出しながらも岸壁を勢いよく登り続けるがその行動とは裏腹に淡々と言葉を投げかけた。

「5年前、あの大会の裏で何があったの?」

「...」

その問い掛けを気に両者とも何も語ろうとはせずしかしお互い手を休めることは無くロープを伝い登っていく。

頂上はまだまだ先で時々吹く強風でバランスを崩しそうになる。

「そんなこと聞いてどうするんだ」

龍ケ崎は握ったロープに力を入れ目の前の仲間に言葉を返した。しかし、その言葉に凛は当然のように答えた

「だって私は『Re: rights』でしょ。仲間内では嘘をついてはいけないみんなで話し合うってルールじゃなかった?」

龍ケ崎は静かに俯くと昔のことを思い出して静かに笑みを浮かべた。

「確かにそんなルールを作ったな」

数年前『Re: rights』を作った時に子供の俺らが決めたルール。そんなものを今になって思い出すことになるとは

「分かった話すよ、けど一つだけ約束してくれ。この事はまだ内海には言うな」


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