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『Re:rights』  作者: 藤崎透
Re:vival
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rest

龍ケ崎は味わい深く握ったカップから溢れ出る湯気の先にいる人影に話しかける。

「マスター、このコーヒーの秘訣って何かあるんですか?」

拠点は一階にカフェがあり二階には俺たち個人の部屋が用意されているが龍ヶ崎の暮らすアパートの部屋よりも暮らしやすかった。

「さあ、私にはわかりかねますね」

白髪が目立つマスターは先程から白いカップを磨いて龍ケ崎の話し相手になっていた。

なんでこんなことをしているのか、対『Flicker Side』戦から2日が経っていた。

初戦突破をしたのは125組、つまりはこれからも何試合もあるのだ。しかもこの世界に連れ込んだ張本人は「少し野暮用が」そう言って昨日から部屋に篭もって姿を見せていなかった。だからこうして龍ケ崎は今日何度目かのコーヒーを飲んでは時間を潰していたのだが、要するに恐ろしいくらいにする事がない。現実世界においては毎日堕落の日々を送っていた龍ケ崎だがこの拠点にはそもそも堕落する為のものが無かった。

ライトが店内を明るく照らす。その光の先に龍ケ崎は内海の言葉を思い出した。

この世界で一日と感じているものは現実世界でも同様の日数が過ぎている。

ということは、肉体は現実世界で2日間も寝たきりの状態になっているということだ。

きっと病院にでも搬送されているんだろうが、そこでどのような説明がなされているのか知ることはできなかった。

そもそも、内海はどうしてクラントーナメントなんてものをしたいのか、まだまだ不明な所が多すぎた。

口に運んだコーヒーを飲みながら考えていると二階から人影が押し問答をしながら降りてきた。

「龍ケ崎、俺たちこれから出かけるんだけどお前もついてこないか?」

「どこに行く気だよ」

鴉野は顔を近づけてニヤニヤしてヒソヒソ声

「おいおい忘れたのか、ここは秋葉原だぞ」

「そんなことは知ってる」

「ここはゲームの世界だが現実世界とそう変わらない」

「好都合なことに俺たちの姿というのはNPCには捕捉されていないわけだ」

「つまり分かるな?」

そう言われて龍ケ崎の頭の中で火花が散ったように思えた。そうだ、NPCというのは自分たちから干渉するようなことがなければ気づかないと最初に聞かされていた話だ。

「つまり、誰にも認識されずに色んな事が出来るわけだな」

「そうだ、どうせならこのゲームの世界を楽しもうぜ」

鴉野は龍ヶ崎を連れ立っていこうとする。しかしそれもすぐに覚めるものだった、というのも後ろにはもう一人の人影があったからだ。

「私の前でそんな事してもいいと思ってるの?」

仁王立ちして龍ケ崎と鴉野を見下ろす凛がいた。引きつった笑顔は怒っているときに現れる特徴だ、

「私がついていってもいいでしょ、別に困ることなんて何一つないでしょ?」

とびっきりの笑顔で龍ケ崎を見下ろす、というより見下した。

外に出ると夏のような青空に合わさって暑さが肌に当たる。しかしそれも体感的な話でいくら暑いと思うが汗や喉の渇きは感じられない。

「龍ケ崎、やることはわかっているよな」

鴉野は声をひそめ横を歩く龍ケ崎に話しかけた。やること、というのは

「凛の目をどうやってかいくぐるか、それが問題だ」

後ろを見ると腕を組み龍ヶ崎たちについてくるように歩いて来る。まさに監視といった具合に俺たち二人から目を離そうとはしない。

運動能力、瞬発力、勘が良い。最強の監視網をどうにかしないと俺たち目的地へとたどり着けない。

「とりあえずは分かれて行動すればいいんじゃないか?」

「なるほど」

龍ケ崎と鴉野は頷き合うと深呼吸をしてから小さく呟く

「3、2、1…今だ」

合図と共に全速力で駆け出し、俺と鴉野は別々の方向へと走りだした。

同時に悲鳴のような声が後ろから聞こえるがそんなものは今どうでも良い、安全な場所までとりあえず走る。そうすれば後で鴉野と合流して

と、呑気なことを考えながらあがった息を整えるため膝に手をおいて休息を取る

後ろを見ても人の影は無い、どうやら凛は鴉野の方へといったようだった。

安心感と優越感からか龍ケ崎からは笑いがこぼれる。路地裏で一人笑っている不審人物もこの世界において誰も認識されることはないのだ。

しかし、その笑い声の最中、目の前にホログラムが展開され耳元へ怒鳴り声とも聞こえる声が耳に響いた。

「龍ケ崎、上だ!」

聞き覚えがあるその声は先ほど二手に分かれた鴉野の声だった。何を言いたいんだ、龍ヶ崎がそう言おうとして自信の上空を見上げると、そこには窓ガラスが割れ建物から人が飛び降りてくる最中だった。

「おいおいおいおい、そんなのありかよ」

割れた窓ガラスの破片と共に降り注ぐ、その光景はどこかのアクション映画を彷彿とさせた。そう、その人物というのは言うまでもなく怒りの表情を見せる凛だった。


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