『Re:rights』VS『J.L.Q』
「甘い」
向かってくる九十九は俺の放った銃弾をいとも簡単に避けるとスピードを緩める事なく近づいてきた、攻撃範囲まで近づいてくると刀を下から上へと大きく振り上げた。
その刃先は九十九を狙っていたハンドガンの中腹部分を見事に命中させると消えゆくハンドガンには目も呉れずに振り上げた刀の勢いそのまま体ごと右に一回りすると今度は刀を払うようにして俺の体を狙ってきた。
電光石火の早業に、俺はついてくるのが精一杯で迫り来る刀を避けるのが遅れ、ダメージを食らってしまい体力が半分以下にまで減り緊急避難的に足を一歩後ろに下がって避ける、が逃げることはさせまいと払った刀の柄を握る手の甲を見せるようにして今度は左から右へと払う
一糸乱れぬその連続攻撃に俺は状況を打破すべく、九十九によって壊された銃の代わりを出すと九十九に向けて発砲した。
その銃弾は当たることなかったが、九十九と距離を取ることが出来た。
「クソッ…」
相手の恐ろしいまで刀での連続攻撃、その九十九は手も足も出ない俺をあざ笑うかのように今までとは打って変わって無表情に刀を構え次の攻撃に備える。
次は無い、それはこれまでの対決の中での経験として直感的に感じていた。
俺は意を決し、目の前の九十九を見る目の瞼を閉じると大きく息を吸った。
他人から見れば俺のこの行動は自殺行為の何ものでもない。
もちろん九十九もその事をわかっていたはずだが、敢えて攻撃してこなかったのは何も持たない俺がその行動の裏に何かがあるだろうと警戒していたからだろう。
俺が瞼を開くとそれを待っていたかのように九十九が口を開いた。
「この状況で君は何か勝つ方法でも思いついたのかい?」
「何言ってんだ俺はいつも勝つ気で試合をしてるってさっきいったばかりじゃねぇか。俺はお前を倒す事しか考えてないぜ?」
俺の言葉に反応するように構えていた刀を一層、力強く握った
「それじゃあ、見せてもらおうか君がこの状況で私を倒す術を」
その言葉を口にしたと同時に動き出した九十九は先程よりも早く俺に向かってくる。
その動きを見て俺はすぐさまホログラムからハンドガンを取り出し手に握ると向かって来ている九十九に向けて発砲した。
しかし、その銃弾は先ほどと同様に華麗に避けられてしまう。
同時に銃弾を避けた九十九はそのままバランスを立て直すと俺との距離を詰めて一気に攻撃範囲に入るや否や刀を大きく左から右へと振り払われる
俺はその刀の動きを見て大きくジャンプをして避けると銃口を九十九の頭上へと向けた。
だけど、そんなに簡単にやられる相手ではないことは分かってたし、何を隠そう九十九本人が一番わかっている。
空振りした刀ごと体を回転させると何と刀を俺に向けて飛ばしたのだ。
「くッ…」
まさに予想外の行動をした九十九を睨み、俺は向かってくる刀を銃で狙い撃った
すると刀は甲高い金属音を鳴らして弾き返されるように地面へと突き刺さり、俺はバランスを必死に持ち直しながら立ったが、それで九十九の攻撃が終わったわけではなかった、九十九はその弾き返され地面へと突き刺さった刀を引っこ抜くと土を巻き上げながら下から上へと振り上げ、体を真っ二つにする勢いで襲い掛かる。
俺はその刀の行方を捉えると体をひねって回るようにして下から振り上げられる刀を避けるとそのまま九十九の額へと銃口を向けた。
「甘い」
九十九は額に向けられた銃口を見てそう言った瞬間、振り上げた刀を持つ手を逆手に変えると銃を握る俺の右腕を突き刺してそのままなぎ払うようにして地面へと体重を掛ける。
その瞬間、右腕はありもしない痛みを感じた。がそんなことに構っている暇は無かった体力が残りわずか、俺の腕を突き刺し簡単に身動きがとれなくなった九十九の隙を逃すわけにはいかなかった。
俺はすばやく左腕を腰に当てると物を取り出して九十九の心臓へと向ける。
「なに!?」
その行動に九十九つい言葉を失ったように驚きの表情を見せた。
「二つだと…」
九十九が驚いたのも無理はない、一つだと思っていた武器が二つあるのだから。
俺は左手に力強く握ったハンドガンの引き金を倒れゆく中で刺された右腕の痛みに声にもならない声で叫ぶと同時に引いたその時だった。
けたたましいサイレンの音がステージ中に鳴り響き目の前には微かに見える文字が浮かび上がった。
「『WARNING』 STOP GAME」
その文字が意味する物を理解するまもなく地面へと倒れ、俺は薄れていく意識の中で光に包み込まれていった。
「日本予選大会で優勝した俺達はこうして『J.Q.L』と対決することになったんだが試合は決着が着く前に終わった。内海、お前ならこの現象わかるんじゃないのか?」
そう言われて内海は目の前で薄らと瞳を開いき口を開いた。
「緊急停止システム、通称『EBS』。ゲームの利用中にプレイヤーに何らかの異常があるときにゲームを強制終了させるシステムですね。その時の龍ヶ崎さんの場合で考えられるのは関東予選で肉的にも精神的にも疲弊した状態で九十九さんと戦い、更には無茶をした為に機械が危険だと判断して『EBS』が作動、試合を強制終了させたのでしょうね」
「ああ、お前の言うとおり。俺は前の関東予選大会で精神を使い過ぎた上に意識が入り込んでしまう体質だからな。擬似的にではあるがその時九十九の攻撃に痛みを感じたんだ、そのせいで血圧が危険値まで上昇、ゲームは強制終了。目が覚めた時には病院のベッドの上で点滴を腕に刺された状態だったよ」
「龍ケ崎さん、随分簡単に言いますけど擬似的に痛みを感じるほどゲームの世界に入り込んでしまうのはかなり危険な行為ですよね?」
「ああ、確かに危険だ」
「じゃあ、どうして…ゲームをやめようとは思わなかったんですか?」
疑問を投げかけるその言葉に龍ケ崎は内海に向けたハンドガンを改めて力強く握る
「俺は戦わなきゃいけないんだよ」
引き金にかけた指の間を通るように生暖かな風が吹いた。
そんな中で銃口を見つめる内海に龍ケ崎は怒りを抑えるように、震える声で口を開いた
「そして、俺達はこの時に蜂谷と出会ったんだ」




