『AFW』 The last qualifier in Japan
「鴉野と凛は二人で他に残っているクランを狙ってくれ」
「了解」
「ああ、龍ヶ崎もしっかりやれよ」
耳に聞こえる、その言葉に俺はふと笑みを浮かべると、視線を目の前の人間に捉えると手に握った二つのハンドガンを向けて容赦なく引き金を引く
秋津はそれを避けながら、後を追ってくる俺をあざ笑うかのように店にある商品棚や椅子や机をなぎ倒していき通行の邪魔をすると同時に、反撃するように手に握ったハンドガンから後ろに発砲する。
「くそ…」
様々な障害物を飛び越え、破壊しながら引き金を引いて追いかける俺は、目の前の人物に向かって笑みを浮かべながら分かれ道になるたびに的確に銃弾を放ち、ある場所へと誘導していった。
その場所というのはマップ端の突き当たり、ここまでこさせればそれ以上逃げる事は出来ないだろう事は予想は簡単だ。そんな策略の功を奏してか、秋津は見事、壁に囲まれた突き当たりへと誘導されていった。
「そこはもう行き止まりだぜ?」
俺は言いながら二つの拳銃をリロードして銃口を向けた。
罠にはまった形の秋津は、振り返って俺を見つめたが、そこには依然として笑みが浮かんでいた。
「確かに、ここは突き当たりだ…」
言いながら俺と同じように握られた二つのハンドガンを傾けリロードすると笑みを浮かべたまま俺を睨んだ。
静まり返ったステージの中で、俺と秋津は睨みながら頬を緩ませ笑みを浮かべた。とそれは試合が開始された合図だった。
先に動き出したのは俺の方だ。左手に握ったハンドガンの引き金を引いて秋津を狙うと右足につけていたレッグポーチの中から素早くグレネードを取り出してそれを目の前の敵に向かって投げた。
その動きに合わすように、その場で一回飛んだ秋津は着地すると勢いよく駆け出し体をひねりながら銃弾を避けながら俺に向かって突進してくると飛んでくるグレネードを頭上にそのまま見逃すと二つの銃口を向けた、瞬間、引き金を引く。
互いに持つ二つのハンドガンから放たれる銃弾を、相手との距離が縮まっていくのを感じながらも息を吐き出し集中力を切らすことはなく、笑みを崩すこともない。
俺が放ったグレネードは秋津から後方10メートルほどの場所で炸裂すると、土煙をあげる。
その煙がしよせる中、依然として秋津は走り続け、そのまま煙に飲み込まれると、次の瞬間、その中で大きく跳ねながら飛び出し俺に向かって銃口を向けた。
その行動に俺は呆気に取られながらも、向けられた銃口に抵抗するように咄嗟に握っていたハンドガンを上に傾けて秋津を狙う。
ほぼ同時に放たれた銃弾、俺は足を動かし体を90度回転させ避け、秋津は空中で首を傾け避けると地面に足を伸ばして綺麗な着地を決めると前に並ぶようにして俺の方をみてニヤリと笑い呟いた。
「まだまだ、甘いな」
その言葉を理解するよりも前に意味を悟ることができた。
俺のよこ、突き当たりの壁から逆の通路、約100メートルに一人、俺へと銃口を向ける人間がいたのだ。
先程までいなかった人物、その人間がどこから来たのかそれを知るのに時間はいらなかった。
それは俺たちがさっきからやっている作戦、敵も同じようにダクト中へと入り気づかれないうちに後ろをとる。
まさにしてやられた、自分の考えた作戦で自分を窮地に追い込む事になろうとは。
目の前には二丁の拳銃を持つ秋津、横に続く通路にはもうひとりの敵が今にもアサルトライフルの引き金を引こうとしている。
絶体絶命の状況、さすが関西で活躍して四天王と称されるクランの一つだけの事はある。俺は小さく息を飲み込むと、以前として浮かべていた笑みを崩すことなく呟いた。
「そっちこそ、まだまだ甘い」
その言葉に疑問の表情を浮かべた秋津と笑みを浮かべた俺との間を光が突き抜けるようにして過ぎると遠くで俺にアサルトライフルの銃口を向けていた相手に光は直撃し光となって消えた。
「なッ…何が」
秋津のその言葉の答えは、俺に向けられたものではなく、銃弾を放ち晴れた土煙の中から現れた人物にだった。
「一、大丈夫かい?」
突如として現れた渉の姿に秋津は無意識的に天井を見つめたが、そこにはさも当然のようにダクトの出口というのはない。
それではどうして出てこれたのか、そんな疑問を表情に浮かべながら渉のことを見つめた。
「どうしてここに、いるんだ。しかもさっきまで俺がいた場所に」
「それは」
渉それだけ言うと右足で足元を突くようにして指し示した。
その行動に一瞬だけ困惑の表情を浮かべた秋津は、示された渉の足元を見つめて驚きの表情を浮かべた。
「なんだ…それ」
秋津が見つめた渉の足元には先程までそこにはなかった直径3メートルほどの穴があった。
おおよそに、そんな大きな穴があれば秋津が気づかないわけがない。しかし、現に人一人が優に通ることが出来る穴が存在していたのだ。
その秘密を知る俺は、目の前の驚いた人間に言った。
「投げ飛ばされた渉は下の階に飛ばされるとこの通路の下まで俺たちが来るのを来て待っていたんだ。そこで俺がさっき投げ飛ばしたグレネードと同時にタイミングを合わせて下からもグレネードを銃で爆発させれば、地面に穴が開くってわけだ」
「そんな無茶苦茶なこと…」
しかし、実際に目の前に大穴を見れば俺の言っていることが正しいのだと分かるだろう。
「勝負はこれからだ」
俺はそう呟くと両手に握ったハンドガンを改めて安芸津へと突きつける。
「くそッ」
秋津は体を傾けて向けられた銃口の弾道から避けたが、こっちは見方がもう一人いるのだ。
渉の放ったハンドガンの銃弾は避けよう体を傾ける秋津の腹部へと右腕へと炸裂すると、続いて腹部を貫通して体力をごっそりと削る。もう為すすべもなくやられてしまうのだろうと、どこか達観して余裕ぶっていた俺と渉に、しかし、秋津はその執念さを見せつけるようにダメージを受けても動揺することはなく、ただ勝利の文字を見つめ、傾けた体をそのままに銃口を俺と渉へと向けると引き金を引いて狙う。
その反撃に体を捻ってよける。しかし右腕に飛んできた銃弾が体力ゲージが少し減るのが横目にちらりと見えた。がそんな事をいちいち気にしている状況では無かった。さらに攻撃を加えようとする相手に視線を戻した俺は握ったハンドガンの軌道を修正して、倒れる相手に向けると引き金を引いた。
その銃弾は秋津の心臓へと的確に当たると、そのまま光となって消えていった。
「はじめ!」
近づいてきた渉は地面へと倒れた俺に手を差し出した。
それに答えるように、俺は差し出された手を握り立ち上がると自分の体力ゲージを見つめて呟いた。
「ちょっと食らったな」
その言葉は、今しがた俺が倒した秋津へと向けられていた。
あの状況でも動揺することなく、反撃をしようとする気持ちとしっかりとした実力。もしあの時に渉が応戦していなければやられていたかもしれないという思いが脳内を過ると同時に『Charon』というクランはやはり侮れないのだと感じた。
「龍ケ崎、こっちは2人やったぞ」
「了解、俺たちもそっちに合流する」
言いながら俺は二つのハンドガンをリロードすると渉を見つめた。
「渉、行くぞ」
「うん」
互いに頷くと同時にステージを駆けだした。




