表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

立食パーティー

「社長、本日のスケジュールですが、10時、13時、15時に面談が入っておりまして、夕方18時より得意先主催のパーティーへご参加いただく形になっております。」

「・・・面談多くない?」

「やはり業界の中でも日の出の勢いと言われる、弊社ですから。みんなが社長にお会いしたがっているということです。」

「無駄なお世辞はいい。ちなみにパーティーは立食形式か?」

「はい。立食スタイルですね。」

「・・・行きたくない。」


「今、何とおっしゃられたんですか?」

「行きたくないと言ったんだ。」

「パーティーに、ということですか?」

「それが立食パーティー形式なら行かない。絶対に行かないもん!」

「社長・・・、子供じゃないんですから。お願いしますよ。」

「立食パーティーは落ち着かない。」

「まあ立食ですからね。出席者達も自由に動けるからこそ価値があるわけで、それぞれに落ち着かれても主催者サイドが困ってしまいますよ。」

「それにいろんな人と名刺交換をしなければいけない。」

「ある意味、パーティーというのはそれが目的じゃないですか! わがままを言わないでください。」

「わがままと言ったか!」

「はい。言いました。」

「ここまでがんばって仕事をやってきたんだぞ。そんな私が立食パーティーが嫌だということがわがままなのか?」

「はい。それはずばり、社長の個人的なわがままです。仕事ならみんなそれぞれががんばっています。社長だけががんばっているわけではありません。」

「言い切りおったな・・・。」


「サクサクと仕事を進めたいので、ここら辺でこの話は終わりにしてもよろしいでしょうか?」

「いや。よくない。ちなみに畠山君、君は立食パーティーが好きかね?」

「好きではないです。というかパーティー自体があまり。」

「だろう? やっぱりそうだろう?」

「そんな鬼の首でも取ったかのように喜ばれると、ちょっとひいてしまうんですが。」

「パーティーが好きな奴は大体、裏で何かをたくらんでるやつが多い。」

「・・・偏見ですよ、それは。」

「違う。大体、来訪者全員を幸せにするパーティーなんてあるか? この世に。」

「どっかにはあるんじゃないですかね? で、本日の面談ですが、」

「だからちょっと待てって。もうちょっとパーティーについて語らせてくれ。」

「はい、却下! 一人目の面談ですが・・・。」

「嫌だってば。立食パーティー!」

「そこまで嫌がるには何かトラウマでもあるんですか?」

「ない!」

「じゃあ何でなんですか?」

「・・・ローストビーフの取り合いをしなければいけないだろ?」

「はぁ?」

「立食パーティーの華と言ったらそれはもうローストビーフだ。昔から決まってる。」

「私個人としてはあまり好きではないので、その意識はなかったのですが。」

「出席者全員が横目でローストビーフを狙っているあの雰囲気! まるでジャングルの中でゲリラに狙われているような・・・。」

「考えすぎですよ、社長。」

「いや。やつらは私の純潔すらも狙っているはずだ。」

「違うよ! それ、被害妄想だから! 考えすぎだって。」



「社長、それでは一件目の面談前に、この書類に押印をお願いします。」

「これは何の書類だ?」

「今さっき、説明したじゃないですか・・・。今後、提携する仕入先との秘密保持契約です。」

「ついつい秘密を洩らしたくなったらどうしたらいいんだ? 私は結構、テンションだけで行動することがあるぞ。」

「何があっても絶対に漏らさないでください。そういう契約なんですから。」

「夜中に森で穴を掘って叫んでもダメか?」

「社長のお住まいの近くに森なんてないでしょうに。」

「たとえだよ、たとえ。相変わらず固いな~。体のいろんなところのパーツが金属で出来てるって噂だよ、畠山君の」

「どこがですか?」

「午前中から、それを聞きたい?」

「もし下ネタであればやめてください。忙しいので。」

「でも本当に我慢できなくなったらどうしよう? 愛人に話してもだめ?」

「あの秘書課の子は、秘密を1時間以上黙っておけない子なのでやめてください。」

「知ってたのか? 私達の関係を。」

「当然ですよ。社内で知らない人はいませんよ。率先してベラベラと社長とのデートについてしゃべってるんですから。」

「全社員が知ってるって・・・。」


「話を戻して・・・、もし暴露したくて死にそうになったらどうしたらいい?」

「そのくらいで死ぬならむしろ死んでください。・・・ああ、お風呂のバスタブの中に潜って叫ぶといいですよ。誰にも聞こえないですし。」

「実践的なアドバイスだな、けっこうやってるか?」

「割とやってますね。平日は週4くらいですか。」

「ほぼ毎日じゃないか! 原因はストレスか?」

「その通りです。」

「何が原因なんだ?」

「・・・本当にわからないんですか?」

「うん。全く、全然、皆無。」

「では気にしないでください。私のストレスは今後も減らなそうなので。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ