NEVER
――一週間後――
七月の下旬、遠くで蝉の鳴き声が響く早朝の朝焼けが、生徒のいない校舎を優しく照らす。
空気の澄んだ空を、数羽の雀たちがさえずりながら飛び交っている。
心地よい静けさに包まれた学校に、白羅は一人で来ていた。片手に彼岸花の花束を持って、教室へ通じる階段を登っていく。
白羅は、この一週間、ろくに学校に行っていなかった。行っていなかったというより、行けなかった。学校には、弥生の面影を感じるものが多すぎて、心の整理がついていなかった白羅には辛いばかりだった。
しかし、この一週間でやっと気持ちが現実に追いつき始め、今朝早く学校に来ることができた。
追いつき始めたとは言っても、まだ心は苦しいと嘆いている。しかし、それでも少しずつでも前に進んでいかなければならない。自分は生きていかなくてはならない。
そう思い、白羅は彼岸花を片手に登校した。
薄暗い階段を登りきり、長い廊下を上履きをぺたぺたと鳴らしながら歩く。
自分の教室のドアの前につき、白羅は一旦止まった。
ドアを見つめる。
ここをあければ、現実と向き合わなければならない。
「………」
ひとつ、細く息を吐き、白羅はドアに手をかけた。
がらりと開けると、金色の朝日が差し込んできた。
眩しさに顔を腕でおおいつつ中へ入る。
すると、入った途端、白羅はあることに気が付いた。
誰もいないと思っていた教室に、一人の生徒がいた。
机に座り、窓から朝焼けを眺めていた。
「――……」
窓際の、一番後ろの席に、足と腕を組んで、偉そうに座っていた。
いつもと変わらない態度で、そこにいた。
その机の上には、白いネリネの花が置いてあった。
「―――……おまえ――……」
白羅は、上ずった声で呟いた。
席に座っていた生徒がゆっくりと振り向く。
「よぉ。珍しく、随分早いな」
そう言って、彼は立ち上がった。
金色が、ふわりと揺れる。
「いやぁ、残念なイケメンくんに、俺は色々と謝らないとならないな」
いつもの、はっきりとした声で言いながら、彼は両足で堂々と立っていた。
白羅の目の前で、立っていた。
「……いや、謝るより先に、言っておかないといけないことがあるな」
呆然と立ち尽くす白羅に、向き合う。
そして、彼は笑った。
嘲笑でも、愛想笑いでも、作った笑顔でもなく、心から嬉しそうに――
「 ――ただいま。 」
――笑った。
「 ――おっせえぞ、似非秀才 」
そうして、白羅もまた、笑った。
NEVER ―もう二度と―
ネリネ「また会う日まで」
彼岸花「再会」
終わり
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
ダラダラと続いてすいませんでした(笑)
このあとNEVERの番外編も書いていこうと思いますのでよろしくお願いします!




