7話
◆7話
猫は私たちが追ってきているのを確認するかのように、時折立ち止まると振り返った。
石畳の坂を登り、車の通れない路地へ入りこみ……。
人通りの多い通りに出る。
そこでは、見失わないように、わざわざ歩をゆるめているようにさえ見えた。
こまめにこちらを確認している。
私は、この猫についていけば、絶対にケンジにつながる何かがある、と思っていた。
−−ひょっとするとケンジ自身が待っているのかもしれない。
そんな明るい希望も芽生えてくる。
車道の信号さえ、信号待ちの人の群れに混じって、ちょこんと座り、きちんと信号が変わるのを待っている。
猫について車道を渡ると再び、坂と路地をくねくねと曲がりながらいく。
どんどん洋館街から離れていくようだ。
「ちょっとぉ、戻れなくなるんじゃないの」
後ろでトモミが不安げにささやく。
たしかに、込み入った道筋は、記憶できる範囲をとうにはずれている。
しかし。
予感が確信に変わりつつある私は構わず猫についていった。
と、突然。
猫が鞠のように跳ねた。次の瞬間には、ぴゅん、と走り出し見失ってしまった。
道案内が急にいなくなって、私はとまどった。
私は、少し汗ばんでいた。
どうやら洋館街からかなり遠いところまで来てしまったらしい。
そこへ現れたのは……。
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