6話
◆6話
猫は私たちが追ってきているのを確認するかのように、時折立ち止まると振り返った。
石畳の坂を登り、車の通れない路地へ入りこみ……。
「ちょっと戻れなくなるんじゃないの」
後ろでトモミがささやく。
たしかに、込み入った道筋は、記憶できる範囲をとうにはずれている。
しかし。
何かを予感した私は構わず猫についていった。
いけばケンジにつながる何かがある……と信じて。
と、突然。
猫が鞠のように跳ねた。次の瞬間には、ぴゅん、と走り出し見失ってしまった。
ふいに狭かった路地から、視界が開けた。
目のまえにあったのは白い塗装が少しはげてはいるものの、立派な洋館だった。
珍しく青々とした芝生に、白いベンチが置かれた庭がある。
私は迷わず庭へ足を踏み入れた。他人の家だというモラルはすっかり抜け落ちてしまっていた。
すると、庭で一斉になにかが動いた。
それは猫だった。20匹以上の猫の群れだった。
芝生やベンチの上、屋根の上で、思い思いの姿でくつろいで猫たちが、
見知らぬ私たちの侵入に一斉にこちらを向いたのだった。
「ひゃ〜、なんかコワイかも……」
トモミはあとずさりした。私は立ちすくんでしまった。
こちらを向いていた猫たちが反対方向を一斉に向いた。
「……どなた?」
奥から誰かが出てきた。
それは……。
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