25話
◆25話
110番には、すぐにつながった。
私は彼らに見つからないように、小声かつ早口で状況を説明した。
警察は私の状況を察して、
「すぐに現場に急行します。そこはどこですか?」
と訊いてきた。しかし、地元人ではない私は、うまく場所を説明できない。
いいよどんでいるうちに、
「いたぞ!」
との声が上から響いた。
さっきの男のうちの一人が、私を見つけてしまったようだ。
3人の男は、私を囲むと、じりじりと近寄ってきた。
「いや……」
私はあとじさりした。
かかとがなにかにぶつかる。大きな木の根っこだと確認するまでもなく、背中がその幹にぶつかった。
もう、あとがない。
「助けはこないぜ」
腕に刺青をした男の一人が楽しそうに言った。
「抵抗するより、楽しんだほうがお互いラクだぜ」
長髪をたらした、もう一人がガムを噛みながら、私の腕をつかむ。
「イヤー!」
腕に触れられて私は反射的に大声を出した。
その時だ。木の上から何かが飛んできて、男が
「ギャッ!」
と叫んで私から手を離した。
私に触れていた男の横面に赤い線が3本。そこから、血がたらり、と流れた。
見ると、背中に茶色の模様がある三毛猫が、足元でグルグルと唸っている。
気がつくとあたり一面猫に囲まれていた。
「なんだ、コレ……。不気味すぎ」
男達は猫の大群に恐れをなしたのか、私のことを置いて走って逃げてしまった。
放心した私に、猫の大群の向こうから人が歩いてくるのが見えた。
その人は
老婦人→28話
ケンジ→27話