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絆   作者: しろ 卯
3/3

再会の物語

 僕は友達と遊んでいた。

 ここはいつもいい天気で、温かくて、きらきらしている。お腹は空かないし、体の調子はいつもいい。思いっきり走り回ることもできる。


「また見てるの?」

「そうだよ。大きいのは、僕がいないと駄目だからね」


 きらきらと綺麗な泉を覗いていたら、友達がやってきて聞いてきた。


「いいなあ。僕はもう、見えないんだ」

「あら? 私は見たくもないわ」


 この泉は、会いたい相手の姿が見える。飛び込めばそこに行ける。

 でも、誰の所にでも行けるわけではないんだって。縁が繋がっている相手の所にしか行けない。

 僕が大きいのに会いたくて、大きいのも僕に会いたいって思ってくれているから、僕たちの間には縁があって、僕はいつでも大きいのを見ることができる。


 ここに来たころは、大きいのに会いたくて、何度も飛び込んだ。

 大きいのは僕に気付かないことが多かったけど、気付いてくれることもあった。

 大きいのが一人で美味しいものを食べていたから、


「僕にもちょうだい」


 って腕を引っ張ったら、ちゃんと気付いてくれた。


 でも、その内に、大きいのに会いに行くことは減っていった。

 会いたくなくなったわけじゃないんだよ?

 ただ、元気な体で大きいのとまた一緒に過ごしたいなら、あまり会いに行かないほうが良いって教えてもらったから。

 長い時間あっちにいると、歪んでしまうんだって。


 何度か歪んだ子を見たことがある。ちょっと可哀そうな姿になっていた。

 あの姿で会いに行ったら、きっと大きいのは心配するだろうなって思ったから、会いに行くのは時々にするって決めたんだ。


「あ」


 友達が声を上げたから、僕もそちらを見る。

 歪んだ子が、泉にやって来るところだった。


「だめよ、もう行ったら」

「うん、分かってる。でも、泣いているんだ。『どうして、どうして?』って」


 友達に注意されて、歪んだ子は頷いた。けれど、泉から水が蛇みたいに伸びてきて、引きずり込まれてしまった。


「ああ、まただわ」


 友達は悲しそうに、歪んだ子が沈んでいった泉を見つめる。


 縁のある相手が余りに強く戻ってくるように願うと、こうして泉に引きずり込まれて、無理やり連れていかれてしまうんだって。

 そしてそれが長く続くと、歪んだ姿になってしまう。


「大きいのも、僕と会いたいって思ってくれている。それなのに、どうして僕は平気なんだろう?」


 首を傾げていると、物知りな友達が教えてくれた。


「それは、あなたの大きいのは、あなたに会いたいと思う以上に、あなたが幸せであるようにと願ってくれているからよ」

「そっかあ」


 僕は頷いて、泉を覗き込む。

 大きいのは今日も、あの硬くて平べったいのと遊んでいる。

 むむ。大きいのは僕のなのに。


 ふっと、温かい風が吹いた。


『ちび、元気にしているか? あまり無茶はするなよ?』


 うん。元気にしているよ。無茶って何さ?

 早くまた会いたいな。

 でも、大きいのは長生きしてくれないと駄目だよ?




 どれだけの時間が経ったのだろうね?

 ほんの少しにも感じるし、とても長かったようにも思える。


「行ってくるね」

「気を付けてね」

「無理は駄目だよ?」

「うん」


 友達に見送られながら、僕は泉に飛び込んだ。


 大きいのは、少しだけ小さくなっていた。頭に生えている毛は白くなっていて、痩せている。


「大きいの、迎えに来たよ?」

「ああ、ちびが迎えに来てくれたのか。ありがとな」


 ふわりと笑った大きいのの体が、形を変えていく。僕と一緒に過ごしていた、あのころの姿に。


「大きいのだけだと、迷子になりそうだからね」

「……。否定できないのが悔しい」


 ふふ。仕方ないなあ。僕がいないと、本当に駄目なんだから。


 僕は大きいのと一緒に、あの世界に戻る。

 大きいのは一度だけ、後ろを振り返った。


「今までありがとう。そんなに悲しまなくていいから。みんな幸せでいてくれよ? また会おう」


 大きいのは、大きいのの体の周りにいた、大きな大きな生き物たちに困ったように優しく微笑んでから、僕の後ろを付いてくる。


 迎えに行けるのは、縁が繋がったままの相手だけ。

 大きいのは最期まで、僕を大切に想ってくれていた。僕もずっと大きいのと会いたかった。

 だから僕が、大きいのをお迎えする役目を貰えた。


「ねえ、大きいの」

「なんだ?」

「また一緒に遊んであげるね?」


 大きいのは僕を見て、それから吹き出すように笑う。


「ああ、また一緒に遊んでくれ」


 僕たちは、きらきらとした世界に戻っていった。




 最後までお読みいただきありがとうございました。

 ちなみに小さいのがあちらの世界に行ってしばらく経った日の大きいの。↓



「なぜだろう? ちびの好物を食べようとするたびに、腕が引っ張られる気がするのだが?」


 肉体を失っても、ちびの食への欲望は変わらないようだ。


「元気にやっているのなら、まあいいか」


 好きに食べなさいと、大きいのは食べるのを暫し我慢して、ちびが食べ終わる時間を待つことにした。

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