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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第65話 「塔の探索」

ミザル市を出て3日目。 エリカは早朝にジビエの町を出発した。 塔までエリカの足で4時間弱。 一息に歩くには距離が長いので、2時間ほど歩いたところで一休みすることにした。 道の脇の岩に腰を降ろし、ナップサックから水筒を取り出す。 中に入っているのはエリカが今朝のうちに《水生成》で作った自作の水だ。


水筒の水をコップに移し、ゴクゴクと水を飲む。 マナがもたらすヒジキ風味が時間経過によって消え去った後の自作水は、ほんのり甘くすら感じる美味しい水であった。


携行食も食べることにする。 町で朝食を食べてきたから空腹ではないが、6日分も買ったので大量に残っている。 エリカはナップサックから、携行食の入ったズシリと重い袋を取り出した。


「お腹も空いてないし1つでいいや」


黒くて丸い固まりを1つ取り出しかぶり付く。 もぐもぐ。 もっちりとした食感で、ハチミツの甘味が微かに感じられる。 美味しいと言うよりは腹に溜まる感じだが、決して不味くはない。 食べるのが苦痛ではない。


                 ◇❖◇❖◇


携行食をモクモクと咀嚼そしゃくしていたエリカは、3人の男性がジビエの村のほうから歩いて来るのに気付いた。 身なりからしてハンターだ。 彼らの歩行速度はエリカに勝るとも劣らず、あっという間にエリカの目の前の道を通り過ぎていった。


(今のはキカザル市のハンターかな。 キカザル市でも依頼を出したのかしら)


携行食の咀嚼を続けるうちに、エリカは大事なことに思い至った。


(ハッ! あの人たちにエテルニウムの剣を取られちゃう!?)


エリカは携行食の残りを口に押し込むと、ナップサックを背負って駆け出した――


が、すぐにペースを落とした。 考えてみれば塔まで2時間もかかる。 駆け足では体力が持たない。


それでも結構な速さで歩いたが、先行するハンターたちに追いつけないままエリカは塔に到着してしまった。


                 ◇❖◇❖◇


塔は5~6階建ての円筒形をした石造建築だった。 塔内に入ると、そこは大きな広間。 中央に金属的な外見のモンスターが10匹ほど集まっている。 異世界IQの高いエリカは、モンスターの正体を一目(ひとめ)で見抜いた。


「あれはガーゴイルね」


「金属モンスター」とはガーゴイルのことだったのだ。「ガーゴイル」はRPGに登場するモンスターの一種。 石や金属でできた体を持ち、牙と爪で攻撃してくる。


ガーゴイルが群れている辺りには、ガーゴイルにやられたと見られる数人が倒れている。 ピクリとも動かない。 死んでいるのだ。


「さっきの3人組かしら? とにかくエテルニウムの剣を入手しないと」


エリカはガーゴイルの群れの脇をすり抜けて、塔内の探索に乗り出した。


                 ◇❖◇❖◇


エリカは塔内の探索を続けたが、2階も3階もガーゴイルが配置された大広間があるのみ。 ガーゴイル以外には何もないし誰もいない。


「怪しい。 これは、どこかに隠し扉があるに違いないわね」


異世界リテラシーが高いエリカは、すぐに隠し扉の可能性に思い至った。 その気になって塔内を探索、ほどなくして普通じゃない所に隠し扉を見つけた。


「こんな所に隠し扉があったなんて!」 普通じゃない!


エリカは隠し扉から隠し通路へと入り込み、所々にあるドアを無視して通路を最後まで歩いた。 そこには、螺旋階段が上に続いていた。


                 ◇❖◇❖◇


長い螺旋階段を上がりきると人影がちらほら。 フロアのドアを片っ端から開けて中を確認すると、倉庫・ラウンジ・台所・浴場など。 塔に住む者たちの生活空間らしい。


フロアのそこかしこを調べてもエテルニウムの剣は見つからなかったが、収穫はあった。 倉庫の棚に大量の呪文スクロールが置かれていたのだ。


「うわー、すっごい量」


スクロールのラベルをざっと見ると、浮遊・治癒・解毒・伝心・読心・雷球・灼熱・水生成・幻影・照明など多種多様。


《浮遊》のスクロールを試しに開いてみたが、魔法書店で販売されているものと違って説明書きがない。 謎の言葉と模様がほどこされた手の平の絵が描かれるのみ。 作りも素朴だし、手作りの品と見える。


「使ってみればわかるよね」


エリカは出自不明のスクロールを使用することにした。 軽率な行為である。 スクロールにトラップが仕掛けられていれば、どんな恐ろしい呪文がエリカの身に降りかかるかもしれない。 トラップが無くとも、スクロールの記述に誤りがあれば使用者の心身にどんな悪影響があるか分かったものではない。


しかし無知とは恐ろしい。 エリカは躊躇ちゅうちょなく手の平の絵に自分の手を乗せた。


これまでにスクロールを使ったときと同じ感覚が頭を襲い...... なんとエリカは《浮遊》の呪文を習得した! この手作りスクロールは普通に使えたのだ。


「よしっ、使える! どんどん覚えよう」


エリカは続けて《伝心》のスクロールを使用し、呪文を習得。 これを機に、使える呪文のレパートリーを大きく増やす所存である。


さらに《解毒》のスクロールを開き、手の平の絵に自分の手を重ね合わせる。 すると、これまでと同じようにスクロールに封じられた情報がエリカの頭の中に入って来て......


エリカの頭は混乱した。 頭の中を雑多な知識の断片がぐるぐると渦巻き思考がまとまらない。 動悸が激しく吐き気も少々。 エリカは両手を地面に突き、気分の悪さを耐え忍ぶ。


(くっ、具合が悪い......)


しばらくして落ち着きを取り戻したエリカは、《解毒》の呪文を頭に浮かべようとする。 しかし呪文は頭に浮かばず、《解毒》に関する知識も断片的でしかない。 習得に失敗したのだ。


失敗の原因は体感的に分かる。 一度に3本のスクロールを立て続けに使ったからだ。 幸いにも、覚えたばかりの《浮遊》と《伝心》に混乱の影響はないようで、どちらの呪文もスムーズに頭に浮かべられた。


大量のスクロールを見るだけで吐き気を催すので、エリカは倉庫を出て5階に行くことにした。

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