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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第55話 アリス少尉

「あちらがアリスさんのお住まいになります」


そう言ってフロスト中尉は4~5階建ての真新しいアパートを指差した。 フロスト中尉とは、先ほどアリスの廃屋を訪れたザルス軍の士官だ。 ショートヘアの金髪がうるわしい女性である。


(うわー、ええ(いい)アパート()なー)


アリスは新居の喜びをベルの音で表現する。


チチーン、チーン!


この表現ができる程度にはアリスもベルの腕前が上達している。 むろん、まだまだエリカの域には達していないが。


「喜んで頂けたようで何よりです。 では、中に入ってみましょう」


                ◇❖◇❖◇


アパートは4階建てで、アリスの部屋は3階だった。 間取りは3LDK。 フロスト中尉が一緒に住むにしても十分な広さである。


「さて、アリスさん。 少し話があるのですが、よろしいですか?」


アリスはベルをチーンと鳴らす。 よろしいですよ?


フロスト中尉とアリスはリビングのソファーに座って話し始めた。


「さきほどお話したように、ここの家賃は無料。 ですが、それには1つ条件があります」


そう言われてアリスの顔が曇る。 条件ってなに?


「いや、条件と言っても大したことではありませんし、アリスさんにとってもプラスになる話ですよ」


(プラスになる()? それやった()ええね(いい)んけど)


「アリスさんに、軍に籍を置いて欲しいんですよ」


(軍って軍隊? 私にはムリやわ()。 どこがプラスな()?)


発言の必要性を感じたアリスは、足元においていたナップサックから筆記用具を取り出した。


『軍は無理です。 集団行動も集団生活も体育会系もムリなので』


「軍に籍を置くと言っても、これまでと生活は変わりません。 軍がアリスさんにご協力をお願いするのは非常時だけです」


『協力って具体的には何をするんですか?』


「内容は多岐たきに渡ります。 ミッションの具体例は軍の機密にも関わるので、アリスさんが軍に入るまで明かせません」


(機密? なんか物々(ものもの)しいなー)


『軍に籍を置かないと、この家には住めないんですか?』


「さようです」


困ったアリスが沈黙していると、フロスト中尉が新たな説得材料を持ち出してきた。


「軍籍に入るだけで毎月10万ゴールドが支給されます」


『何もしなくても?』


「そうです」


(何もせんで(ずに)10万ゴールドかー。 それと家事付きの住居が無料かー。 でもなー、集団生活がムリ()なー)


なおも迷い続けるアリスに対し、フロストはさらなる説得材料を持ち出す。


「いまミザル軍に籍を置くと、もれなく少尉の階級がもらえます」


(少尉? なんかカッコいい響き)


意外にもアリスは少尉の階級に釣られて、この話に乗り気になった。 そこにフロスト中尉がたたみ掛ける。


「アリスさんの場合、集団生活はもちろん集団行動すら一切ありません、体育会系とも無縁です」


集団での活動が不要。 それがダメ押しとなり、アリスは軍に籍を置くことを決意した。


(軍ってことは国家公務員か。 悪くないな。 いざとなったら逃げたらええし)


『わかりました。 軍に入ります』


「ありがとうございます。 それでは、こちらの書類に署名と拇印ぼいんをお願いします」


そう言ってフロスト中尉はテーブルの上に3~4枚の書類を広げた


一杯いっぱいありますけど、なんの書類なんですか?』


「これがミザル軍に所属することを約束する契約で、こちらがこの住居に居住するための契約、そしてこちらが――」


アリスはフロスト中尉の説明を聞き流しながら契約書に署名し始めた。 どのみち、いざとなれば逃げるのだ。


署名と拇印を終えたアリスにフロストが言う。


「階級は私のほうが上ですが、私はアリスさんの付き人ですから何でもお申し付けくださいね」


『じゃあ、()()夕食をお願いします』

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