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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第49話 サワラジリ・エリカ

それから1週間が経過した。 この1週間アリスの万引きは治まっているようで、エリカは一度も弁当屋の店主の罵り声を聞いていない。 一度アリスの廃屋を尋ねてみたがアリスは留守だった。


                 ◇❖◇❖◇❖◇


そんなある日、エリカの家の呼び鈴を鳴らす者があった。 シャリンシャリーン。 エリカは少々びっくりしたが、呼び鈴が鳴るのも2度目とあってビビリはしなかった。


(またアリスちゃんかな?)


そう予想を立てて、マイ・ベルを片手に玄関のドアを開けると、案の定(あんのじょう)人影が無い。


ところが、エリカがマイ・ベルをチンと鳴らして返ってきたのはアリスの卓上ベルの音ではなく若い男の声だった。


「サワラジリ・エリカ様ですね?」


エリカは混乱した。 いったい誰なの? どうして私のフルネームを知ってるの? さらに、久しぶりにフルネームで呼ばれて人嫌いで自殺した前世のことを思い出し、エリカは重苦しい気分になった。 この世界に来てから名字で呼ばれることがないため、「早良尻」という名字は未だ前世の記憶を生々しく想起させる。


(この人もファントムさん!? そんなはずない。 この人がファントムさんなら声が聞こえないはずだもの)


開いたドアのノブを握ったままエリカが固まっていると、再び男の声がする。


「我々を中に入れてもらえませんか? 話があるのです」


(我々? 1人じゃないってこと?)


エリカは訪問者を家の中に入れることにした。 何者であろうと自分に危害を加えられるはずがない。 そんな気持ちの余裕があってのことである。


                 ◇❖◇


エリカは謎の訪問者をリビング・ルームに案内した。


訪問者がソファーに座る気配がして、男の声が聞こえる。


「突然の訪問、失礼します。 我々はクーララ王国の者です。 サワラジリ様にお願いがあって参りました」


(クーララ王国? 聞いたことないなー)


エリカはさっそく筆談を開始した。 訊きたいことがたくさんある。 男たちはエリカが筆談で対話するのを知っていたらしく、筆談はスムーズに開始された。


『まず、あなた達は何人なの?』


「2人です」


『どうして透明なの?』


「《迷彩》という呪文で姿を目立たなくしています。 人目を避ける必要がありましたので何卒なにとぞご容赦を」


(迷彩ってカメレオンみたいなものかしら)


『私のフルネームを知っているのは何故?』


「ハンター協会に保管されている記録を見ました」


(そういえばハンター・カードを作るときにフルネームを記入したかも)


『ハンター協会に侵入したのね』


「それが我々の仕事ですので」


                 ◇❖◇


質疑応答を繰り返すうちに《迷彩》の呪文が切れたらしく、ソファーに座るスーツ姿の男女2人の姿があらわになった。


1人はスラリとした長身の美青年である。 艷やかな黒髪には軽くウェーブがかかり、ひきしまった頬と切れ長な目が印象的だ。 今まで話していたのは、こちらの男性に違いない。


もう1人は何の変哲もない30代半ばの女性だ。 冴えない色とデザインのスーツを身につけるこの女性は特徴らしいものが何もなく、見事なまでにエリカの興味をひかなかった。


『《迷彩》の効果が切れましたね』


「そうですね。 では改めてご挨拶を。 私の名はヒネモス。 クーララ王国で国家公務員をしています」


(国家公務員? 国の諜報機関とかかな?)


もう1人の女性がここで初めて口を開く。


「初めましてサワラジリ様。 私はプルデンス。 ヒネモスと同じくクーララ王国の国家公務員です」


『それで、今日はどういったご用件で。 さきほど「お願いがある」とおっしゃってましたけど、 あっ、その前にお茶でも淹れましょうか』


「恐縮です」「お構いなく」


ヒネモスは喉が乾いていたようで、エリカがれた紅茶を美味しそうに飲み干した。 そして彼は話を続ける。


「単刀直入に申し上げましょう、貴女あなたに我が国の守護霊さまになって頂きたいのです」


(守護霊?)


呆気に取られるエリカにヒネモスは話し続ける。


「守護霊といっても本物の霊というわけではありません。 守護霊さまが食事をしたり眠ったりと普通の人と同じように生活することは存じています。 我が国に移住し、帝国の魔の手から守って頂きたいのです」


帝国とやらをエリカは全く知らないが、個人の力で一国の魔の手を退けるなど不可能である。 エリカは断った。


『ムリです』


ヒモネスが熱心な口調で言う。


「無理ではありません! 貴女には、守護霊さまにはその力が――」


興奮し始めたヒモネスを鎮めるかのように、プルデンスが代わって話し始める。


「30年前まで、我が国は守護霊さまにお守り頂いて帝国からの圧力に対抗していました。 守護霊さまの能力には実績があるのです」


『仮に私がクーララ王国の守護霊になった場合、お給料はいくら貰えるのかしら?』


「お給料などとんでもございません。 守護霊さまのあらゆるニーズは我が国が総力をあげて満たしますから」


『まさか現物支給?』


「さようでございます」


『おカネは貰えないのかしら?』


「おカネのように世俗的なもの、守護霊さまには不要にございます」


『私おカネが好きなんですけど』


「でしたら世界各国の通貨を集めてまいりましょう」


『コレクションじゃなくて。 使えるおカネが欲しいの』


「守護霊さまのためならいくらでもりましょう」


(インフレになっちゃうじゃない)


そこでエリカは思い出した。


(あっ、マベルスさんとの契約! なんだっけ? 独占? 交渉の契約? 50万ゴールドを貰えるとかいう。 さっきの給料の話なんかマベルスさんとの契約に違反してるよね?)


『申し訳ありませんが、わたくしこの国の軍と独占的な契約を結んでおりますので』


「独占交渉契約のことなら私どもの耳にも入っています。 しかしクーララ王国においで頂けるなら、そのような契約など問題ではございません。 契約違反の被害が守護霊さまに及ぶことは無いと保証いたします」


(なんか重いんだよね、この話。 クーララ国に行ったら自由に外出できない気がする)


『契約違反の責任を問われないにしても、契約に違反することはできません。 私は約束を守る人間なのです』


「そうですか...... 守護霊さまが実直なお人柄であることを嬉しく思います。 では、今日のところはこのへんで失礼いたします。 ご多忙のところお邪魔いたしました。 ヒネモス、引き上げましょう」


「はっ。 それでは今日はこのへんで失礼します守護霊さま」


プルデンスとヒネモスは、また来ることを匂わせて帰っていった。

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