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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第36話 ファントムさんの落とし物

川の水で服が濡れたので、エリカは服を乾かすことにした。 ミスリルの長剣を剣帯から取り外し、ズボンと靴下を脱いで軽く水を絞り手頃な大岩の上に広げて干す。 真夏の日差しではないが、今日は天気がいい。 しばらく干せば少しは乾くだろう。


岩の上に腰掛けて小川のせせらぎを聞きながら、うららかな日差しを浴びてエリカは微睡まどろむ。 剥き出しの下半身でもエリカは蚊に刺されない。 前の世界でエリカは蚊によく刺される体質だったが、この異世界に来てから蚊に刺されたことがない。 虫のような下等動物でさえエリカの存在を認識できないのだ。


そうして日光浴をしていると、エリカの背後から声が聞こえてきた。


「あーっ、オークが倒されてる」


「他のハンターに先を越されちまったかな」


エリカが振り返って背後を見ると、3人の男性ハンターがエリカが腰掛ける岩のほうに歩いて来る。


「なんだこれ? 服?」


「干してあるっぽいね」


エリカは身を固くして状況を窺う。 いまエリカがズボンと靴下を手に取れば、彼らの目にはズボンと靴下が消えたように見えるだろう。 それより彼らがどこかに去るのを待つほうがいい。


「なんでこんなところに服だけ? 誰もいないのに」


「ファントムさんだったりして」


「ファントムさんて服を着るのか?」


「それは知らないけど」


「あーっ、あれ!」


そう叫んで1人のハンターが、大岩に立て掛けてあったエリカの長剣のほうに駆け寄る。


「なんだよ大声出して」


「これ、ほらオレの剣」


叫んだハンターがエリカの長剣を取り上げた。 それを見てエリカは、座っていた岩の上に立ち上がる。


(あっ、ドロボー!)


「オマエの剣はオマエが腰から下げてるだろ」


「オレが買おうと思って目をつけてた剣だよ。 武器屋の親父さんが目の前で消えたって言ってたヤツ」


(どうしよう? 取り返さないと)


「なんでこんなところに?」


「わからん」


「オークの死体が川の中に転がってて、岩の上に服が干してあって、オレの剣が岩に立て掛けてあって、辺りには誰もいない。 マジでファントムさんの可能性が濃厚じゃねえ?」


それまで黙っていたもう1人のハンターが口を開く。


「武器屋の親父さんも、消失したミスリルの剣はファントムさんに持ち去られたんじゃないかって言ってたしな」


(武器屋さんは私が盗んだと気づいてたのね。 ムリないか、剣が消えるのをリアルタイムで目撃されちゃってるし)


「すると、ファントムさんが今ここに?」


(そうよ。 剣を元の場所に戻しなさい)


「その剣、ここに置いていったほうがいいんじゃねえか? ファントムさんにたたられるかも」


ミスリルの長剣の未来所有権を主張するハンターはしかし、剣を手放そうとしない。


「いや、それはマズい。 ファントムさんがここにいる確証があるわけじゃないし。 貴重品をこんな場所に置き去りにしておけない。 保護しないと」


「そんなこと言って自分の物にする気じゃねえの?」


「そんなわけねえだろ。 町に戻ったらちゃんと警察か武器屋に届けるさ。 でも、帰り道に試し切りするぐらいならいいだろう」


「ズボンと靴下は保護しねーの?」


「それは貴重品ではありません」


「ぐしょ濡れだしな」


                 ◇❖◇❖◇


水辺を立ち去ろうとするハンター3人。 そこでエリカは動いた。 自分の大事な剣が持ち去られようとしているのだ、もはやなりふり構っていられない。


「待ちなさいっ!」


叫びながらエリカはハンターたちに向かって裸足で駆け出す。


だがエリカの声が彼らに聞こえるはずもなく、3人はお喋りをしながら町へ向かって歩き続ける。


走るエリカは歩く3人にすぐに追いついた。 ハンターが手に持つミスリルの剣の鞘をむんずと掴み、もぎ取る。


「返しなさいっ!」


剣をエリカに奪われて、当然のことながら男は驚いた。


「うわわ。 剣が消えた」


「マジかよ!」 「マジだな。本当に消えてる」


「ってことは......」 「やっぱりファントムさんだ!」


「オレの剣がーっ!」


「そう嘆くなって。 考えようによっちゃあ、ファントムさんに剣を取り返されて良かったよ。 今ここで剣を取り返されてなかったら、オマエきっとファントムさんに取り憑かれてたぞ」


(そんなことしないわよ。 悪霊じゃあるまいし)


                 ◇❖◇❖◇


エリカは川辺へ戻ると濡れた衣服を身に着け、町に向かって戻り始めた。 のんびりと川辺で日向ひなたぼっこをする気分は失せていた。

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