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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第32話 マナ味ってどんな味?

ハンター協会の建物を出たエリカは、その足でQSAのオフィスに直行した。 意外にこじんまりとした2階建ての建物。 建物正面のドアを開けて入ると受付があり、受付嬢が来客に応対している。


受付嬢も来客もエリカの侵入に気付かない。 ドアの開閉にすら気付かない。 エリカが触れている間はドアの存在感が薄くなるためだ。 魔法書店のようにドアベルが付いていればベルの音は聞こえるが。


エリカは来客の後ろを素通りし建物の奥へと進む。 テクテクと廊下を歩き、目についた部屋のドアを開けて中を覗いてみたり。 でも、どこをどう調査すればいいのか見当もつかない。


「弱ったわねえ。 潜入調査がこんなに難しいとは」


2階の廊下の片隅でエリカが早々に弱音を吐いていると、階下から階段を上がって来る気配。 やがて、3人の男性が姿を現した。 3人のうち2人は受付で見かけた来客だ。 歩きながら会話をしている。


「ええ、そりゃもう。 銅賞で26%、銀賞で34%、金賞でなんと57%も売上が伸びたケースが――」


3人はエリカの横を通り過ぎ、部屋のドアを開けて中に入っていく。


(裏取引の現場を録音できるかも!)


エリカは男性の発言から来客の目的を察し、3人と一緒に部屋の中に入った。


                 ◇❖◇❖◇


来客2人は飲料メーカーの社員と判明した。 1人は若手で、もう1人は年配。 来訪の目的は、新発売の飲料を「ムンド・セレクシオン」に認定してもらうこと。


「審査してもらいたいのはこの商品です」


若手社員が段ボール箱から小瓶に入った飲料を取り出し、商品について解説し始める。


「これが我が社の新製品『マナ水』です。 味覚の要素として、塩味・甘味・酸味・旨味・苦味・辛味・麻味の7種類が知られていますが、当社はマナも味覚の要素の1つであると突き止め、これをマナ味(まなみ)と名付けました。 この『マナ水』は、マナ味を活用した世界初の飲料です」


若手社員の説明は続く。


「飲料中にマナを閉じ込めるため、『マナ水』には植物由来の特殊成分を配合しています。 この特殊成分が周囲のマナを吸着してマナ味を引き起こすわけですが、この特殊成分はマナ輸送体なんかに比べてマナとの結合が弱く、吸着したマナをすぐに手放してしまいます。 そこで、その弱点を補うためビンの底に超小型の魔法陣を仕込んでいます。 魔法陣が周囲からマナを集めてビン内部のマナ濃度を高めるので、特殊成分がマナを手放しても、すぐに次のマナと結合するわけです」


QSAのスタッフは若手社員の長広舌ちょうこうぜつを聞き流すようだった。


「それは素晴らしいですな。 ところで、急かすようで申し訳ありませんが審査手数料のほうは......」


「15万ゴールドでしたね。 ここに」


そう言って若手社員はコインが詰まった皮袋をテーブルに置いた。 QSAスタッフは袋を開き、硬貨の枚数を数える。


「ひい、ふう、みい... 確かに頂戴いたしました。 それでは、さっそく審査に入りましょうか」


「え? 失礼ですが、あなたお1人で審査なさるので?」


「お任せください。 厳正に審査いたしますよ」


                 ◇❖◇❖◇


「マナ水の安全性や成分に関して検査機関が発行した検査証明書はこの通りです」


若手社員はそう言ってテーブルの上に数枚の書類を置いた。 QSAスタッフはそれを取り上げて一通り目を通す。


「ふむふむ、安全性や成分に問題はありませんね。 それでは『マナ水』を試飲しましょう」


それを聞いたエリカの瞳がキラリと光る。 マナ水に少なからず興味を覚えていた。 若手社員の説明も熱心に聞いていた。


                 ◇❖◇❖◇


マナ水を1本開封し、QSAスタッフがどこからか持ってきたグラス3つに注ぐ。


「それでは」「いざ」「試飲といきましょう」「私も飲んでみたーい」


グラスを口に当て、一気にあおる男性3人。 エリカは右手の人差指を唇にあてがい、もの欲しげにその様子を眺める。


(どんな味なのかしら?)


マナ水を飲み終えた3人は、眉間にシワを寄せたり首をひねったり。


「あれ?」「うーむ」「これはちょっと」


QSAスタッフが疑義を呈する。


「ただの砂糖水と同じに思えますが......」


社員は首をひねりつつ答える。


「これはマナを入れてないときの『マナ水』の味ですね。 おっしゃる通り、砂糖水と変わりません。 『マナ水』には香料も酸味料も入れてないんです。 マナ本来の味を堪能してもらいたいので。 でも、なんでマナ味がしないんだか......」


                 ◇❖◇❖◇


飲料メーカー社員が持参した『マナ水』は全部で6本。 別の『マナ水』を開封し試飲した。 だが、マナ味が効いておらず美味しくない。 結局6本全部を試したが、どれもマナ味が効いていなかった。 どさくさに紛れてエリカも試飲たが単なる砂糖水だった。


額に汗の玉を光らせて若手社員が唸る。


「う~む、こんなはずでは......」


年配の社員が言い出す。


「魔法陣が機能してないんじゃないかね?」


「そんなはずは。 超小型なので出力はギリギリですが、試験では十分にマナを集めていました」


「あるいはマナを吸着する特殊成分が劣化しているか」


QSAスタッフが横から口を出す。


「もっと大きい魔法陣を持ってきましょう。 どちらが原因かは、それではっきりするでしょう」

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