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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第30話 あなたの心の痛み、このエリカしかと受け止めたわ

翌朝、エリカは強くなっていた。


マナ輸送体(金色の霧)と結合したマナが一晩を経てエリカの体に馴染んだのである。 エリカの体はまるでパワード・スーツを着込んだかのようにちからに満ちていた。 五感が鋭敏になり、世界が鮮明に感じられた。 マナ酔いの気分の悪さが完全に治まったのと相まって、エリカは元気一杯である。


「強くなるって...... 悪くないわね!」


ラットリングを退治していた頃も実はこういうプロセスが繰り返されていた。 だがラットリングが放出するマナ輸送体が多くないため、エリカにマナ酔いは生じず強くなったと実感しもしなかった。


                ◇❖◇❖◇❖◇


エリカは朝食を済ませるとハンター協会を訪れた。 彼女は今日はじめて、協会が仲介する依頼に手を出す。 潜入捜査の依頼で稼いだカネで《魔物探知》のスクロールを買い、オーク退治で荒稼ぎするのだ。


協会の建物に入ったエリカは、依頼ボードに直行した。


「あったあった、私の依頼」


潜入調査の依頼書を掲示板から引き剥がして、受付カウンターに持って行く。 依頼書に依頼の詳細は書かれていない。 潜入調査であることと、どういう人材が求められているかだけが記載されている。


依頼用窓口の職員はマロン君ではなかったが、この職員はエリカとマロン君とのやり取りを何度も見ていたので、エリカとのコミュニケーションはスムーズに進んだ。


「潜入調査の依頼を引き受けてくれるのですね? それでは奥の部屋で依頼の詳細について...... あっ、少々お待ちください。 えっと、この依頼はですねえ、機密保持の関係で依頼人の方が直接ブリーフィングを行いますので、日を改めて面接していただくことになります」


「げっ、面接ぅ?」


面接と聞いてエリカは即座にうんざりした。


「やっぱやめよかな、この依頼。 ブリーフィングとかわけわかんないし」


そのとき、マロン君がおもむろに口を開いた。 彼はエリカにフォローが必要だと超人的な勘の良さで察知し、近くまで寄ってきていたのだ!


「ブリーフィングとは、依頼内容の説明です。 また面接といっても堅苦しいものではなく、ミーティングのようなものです。 ハンターの能力と依頼内容が噛み合っているかを話し合うほか、報酬について再交渉することもあります」


「ありがとう、マロン君。 助かったわ」


エリカはマイ・ベルをチンと鳴らして了解の意を告げる。


「それで、面接の日時ですが」と依頼用窓口の職員。「明日の午後2時でよろしいでしょうか?」


「ええ」


エリカは再びベルを鳴らし、そそくさとその場を立ち去った。


                ◇❖◇❖◇❖◇


ハンター協会のビルを出たエリカは南門に足を向けた。 モンスターが()()()な南門エリアは《魔物探知》が無いと狩りの効率が悪いが、何匹かは魔物を狩れるだろう。


南門に向かう道中、商店街に差し掛かった。 武器屋の看板がエリカの目に映る。 いまエリカが腰から下げているミスリルの長剣は、この武器屋から盗んだものだ。


長剣の代金を早く支払いたいが日用品に比べて金額が桁違いに大きく、エリカは未だ長剣代金の支払いに向けて行動を起こせていない。 この武器屋で長剣を盗んでから、エリカは一度も店内に足を踏み入れていなかった。


「値段だけでも確認しとこうかな。 近いうちに代金を払う予定だし」


エリカは武器屋のドアをくぐり、久しぶりに店内に足を踏み入れた。 カウンターには前に来たときと同じ男性店員が座り、暇なのだろうか鼻毛を抜いている。


なんとはなしにエリカは、自分の長剣が陳列されていた棚に目を向ける。 ――そこには、エリカの長剣が入っていたケースだけが空っぽのまま放置されていた。 エリカがこの店で長剣を頂戴してから数週間が経つというのに。 空っぽのケースにエリカは、武器屋の悲哀を感じた。


「......私が盗んだ剣は、この店にとってかけがえのないモノだったのね」


ケースの中には値札が残っていて、そのおかげでエリカは店員に尋ねるまでもなく長剣の価格を知ることができた。 その金額は――


「3千万ゴールド!? これはちょっと......」


予想以上の金額に絶句するエリカ。 3千万ゴールドを稼ぐにはオークを 1,500匹も倒さねばならない。 途方もない数字である。 南門エリアにオークが 1,500匹もいるかすら怪しい。


「とにかく私の剣の売値はわかった。 そして武器屋さん、あなたの心の痛み、このエリカしかと受け止めたわ」


心の痛みを受け止めはしたが、ミスリルの長剣を武器屋に返却するつもりはエリカには無い。 未だ刃こぼれ1つなく新品同様にピカピカと銀色に輝く長剣だから、エリカがこの剣をあのケースに戻してマイ・ベルをチンと鳴らせば、武器屋の苦悩は直ちに解消される。 しかし、エリカは剣を手放せなかった。 手放すには切れ味が良すぎたし美しすぎた。


                ◇❖◇❖◇❖◇


武器屋を出たエリカは南門の外で狩りをした。 この日の戦果はオーク3匹とゴブリン5匹、しめて8万ゴールドだった。

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