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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第3話  なんとかしておカネを稼げないかしら?

翌朝、エリカは小鳥の鳴き声で目を覚ました。 窓からは爽やかな朝の光が差し込んでいる。


「んー、よく寝た。 こんなに熟睡できたのは久しぶりね。 今日はどうしよっかな? 食べ物を盗むぐらいしかやることがないよ」


朝っぱらから物騒な独り言をつぶやきながら、エリカは寝台を降りた。


リンゴに極めて似る果実を齧りながら彼女は考える。


(数多の盗品をツケで買ったことにしたけれど、収入の当てがなければ絵空事。 口先だけで終わっちゃう。 なんとかしておかネを稼げないかしら?)


しかし、誰にも知覚されない自分が職に就けるはずもない。 もっとも他人に知覚される存在であったところで、エリカは人嫌いのため就職が不可能。 前世では単なる買い物にすら難儀していたのだ。


(そう考えれば、自殺前に比べて状況が悪化したわけじゃないよね。 むしろ改善。 万人の認識外にある今の状態は確実に気楽)


今のエリカの精神状態は、自殺直前の重く張り詰めた気分に比べれば随分と良好である。 軽い心でエリカは、今日一日を町の探索に当てることに決めた。 生きることに前向きになっていた。


                 ◇❖◇❖◇❖◇


通行人にぶつからないように気を付けながらエリカは町を散策する。 他の人にエリカの姿は見えないから、相手が少しでも避けてくれることは期待できない。 エリカの足音すらも他の人には聞こえない。 試してはいないが、エリカが誰かの耳元で大声を出しても気付かれないだろう。


町を散策しながら、エリカはとある施設を探していた。 この世界がファンタジー的な世界である以上は必ず存在するはずの施設である。 あの施設が見つかるならエリカもおカネを稼げるかもしれない。


1時間ほども歩き続け相当に足が疲れてきたころ、エリカはこの都市の中心部と思われるエリアに到着した。 大きな建物が立ち並び、繁華街や商店街もある。 商店街は昨日の商店街よりもずっと大きく、人通りも遥かに多い。


とある商店から無断で頂いてきたグレープ・フルーツに酷似する果物の皮を剥きながら大きな建物をチェックしていると、1つの建物から剣や槍で武装した数名の集団が出てきた。


(あの建物がそうかもしれない)


エリカはその建物に近づく。 建物に看板の類は出ていないが、その建物から武装した数名の集団が再び出て来た。 可能性がいよいよ高まった。 この建物が冒険者ギルドである可能性が。


(よし、行ってみよう!)


エリカは思い切って中に入ってみることにした。 いや、別に思い切る必要もない。 エリカの存在は誰にも知覚されないのだから。


                 ◇❖◇❖◇❖◇


開け放されている巨大な両開きの扉を通り抜けて建物の中に足を踏み入れると、そこは大きなフロアだった。 正面には受付カウンターらしきものがあり、冒険者らしき人物が係員と話をしている。


冒険者と係員のやり取りを間近で観察しようとエリカがカウンターに近づくと、係員が冒険者に数枚の立派な硬貨とカードみたいなものを渡すところだった。


(硬貨がモンスター退治の報酬で、カードはさしずめ冒険者カードってところかしら。 あのカードに倒したモンスターが記録されるに違いないわ)


エリカは引きこもり時代にRPGやラノベで時間をつぶしていたので、ファンタジー世界のことにけっこう詳しい。


カードと硬貨を受け取った冒険者が去り、別の冒険者が窓口にやって来た。


「じゃあコレ頼むわ」


そう言って冒険者が窓口の係員に、首から紐でぶら下げていたカードを手渡す。 係員はカードを受け取るとバーコード読み取り機のような機械でカードをスキャンし、読み取り機が接続されているモニターに映し出される情報を読み取る。


「ラットリングを12匹か。 なかなかの戦果だな」


「なあに、昨日の分と今朝の分の合計さ」


「じゃあこれ、報酬の3万6千ゴールドだ」


係員が冒険者に立派な硬貨3枚と中サイズの硬貨6枚を手渡し、カードを返却する。


(立派な硬貨1枚で1万ゴールドってことね。 そしてやっぱり、あのカードに退治したモンスターが記録される。 あのカードを入手できれば私もモンスター退治で稼げるんだけど―)


エリカはモンスター退治に不安を抱いていない。 人々がこうまで自分の存在に気付かない以上、モンスターも同じはず。 それに何よりも彼女は不死身。 モンスターに殺されようが死なない体だ。 ただ不安もある。 モンスターに齧られたとき、食べられた部分の肉は再生されるのだろうか?


(あのカードを何とかして自分で発行できないかな)


エリカがそう考えていると、まことに都合の良いことにカードの発行を希望する者が受付にやって来た。


「あのう、ハンター・カードを発行してもらいたいんですけど」


「ハンター試験の合格証はあるかね? それから発行手数料として5万ゴールドが必要だ」


(あらっ? この世界では冒険者のことをハンターと言うのね)


「はい、こちらに」


そういって発行希望者は証書のようなものと立派な硬貨5枚をカウンターに置く。


係員は硬貨を領収すると証書を手に持ち、ウンウンと頷きながら証書に目を通し終えた。


「じゃあカードを発行するから、しばらく待っててください」


(カード発行を見学するチャンスよ、見逃せない!)


係員が奥へ引っ込むのを見て、エリカはカウンターの向こう側へと回り彼の後を追った。


                 ◇❖◇❖◇❖◇


エリカは係員がカードを作成するのを間近で観察し、係員が部屋を出た後で自分のカードを作成した。 カード製造機から出て来る自分のカードを手に取り、エリカは満足そうに宣言する。


「やったー、これぞ私のハンター・カード!」


カード作成の手順は簡単だった。 机の上に積み重ねて置いてあるブランク・カードから1枚を抜き出してカード作成機に挿入し、自分の名前と生年月日を作成機から入力するだけである。


「このカードを持ってるだけで倒したモンスターが記録されるのかな? ともあれ、これで私もハンターとして登録されたし、あとは武器さえあればモンスター退治で稼げる!」

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