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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第28話 マロン君の長い話

風呂から出たエリカは、新しい衣服に着替えてハンター協会を訪れた。 1階フロアに常設されているエリカ用の卓上ベルをチンと鳴らすと、マロン君がやって来た。


「どういったご用でしょうか、ファントムさん」


エリカは首からかけているハンター・カードを外してベルの隣に置き、再びベルをチン。 察しのいいマロン君はすぐカードに気付いてくれた。


「ああ、換金ですね。 そこの椅子にかけてお待ち下さい」


言われた通りに窓口の椅子に座り、マロン君が換金処理してくれるのを待つ。


「オークを13匹ですか。 それもお1人で。 さすがはファントムさんですねー」


「オークは1匹いくらなの?」


「オーク1匹で2万ゴールドなので、しめて26万ゴールドとなります」


言うまでもないが、マロン君にエリカの声は聞こえていない。 会話が成立しているように見えるだけである。


「2万円かー。 あんな凶悪なのを倒して2万円って、わりに合わない気がする」


それでも今日だけで26万ゴールドの稼ぎだ。 ボロ儲けである。 26万ゴールドをカウンター・テーブルに置きながらマロン君が思い出したように言う。


「ああそうだ、ファントムさん。 依頼ボードをご存知ですか?」


(依頼ボード?)


「あっちにある掲示板のことです」


マロン君が指差す方を見ると、たしかに壁に掲示板が設置されている。 これまでもエリカの目には入っていたが気に留めたことはなかった。


「ご存知のように、ハンター協会はモンスター退治の成果確認と報酬の支払いを一括で―」


「ねえ、その話、長くなる?」


「行うための公的機関ですが、人並み外れた能力の持ち主が集まる場ということで、」


「やっぱり長くなるのね」


「護衛・逮捕・暗殺・偵察など色々な依頼が各方面から持ち込まれます。 こうした依頼の中にはファントムさんの隠密能力が有益なものも多数あります。 ハンター活動にも慣れてきたことでしょうし、依頼ボードの利用を考えてみては?」


「暗殺? そりゃあ私にはピッタリでしょうけど人を殺すの?」


「あ、ちなみに暗殺といっても公的機関からの依頼なので違法性はありません」


繰り返すが、マロン君にエリカの声は聞こえていない。 たまたま発言のタイミングが噛み合って会話のようになっただけ。 よくあることだ。


「違法じゃないなら安心ね」


エリカは卓上ベルをチンと鳴らして席を立った。 向かう先は依頼ボードである。


                 ◇❖◇❖◇


依頼ボードの依頼に一通り目を通し、エリカはハンター協会の建物を出た。


家に戻る道すがら彼女は今後を考える。


「いい加減そろそろ、このミスリルの長剣の代金を支払わないとなー。 いくらだろう、あの長剣。 武器屋の人は店の最高級品とか言ってたけど。 あと、《魔物探知》だっけ? あの呪文があれば効率よく狩りをできる」


というわけで、エリカは魔法書店に寄って帰ることにした。


「まずは《魔物探知》ね。 どうせ、お高いんでしょうけど、値段だけでも確認しとこう」


                 ◇❖◇❖◇


カランコロンとドアベルの音を鳴らし魔法書店に入るエリカ。 カウンターに座る老紳士はひとりでに開いたドアに驚く様子もない。


「いらっしゃい、ファントムさん」


エリカは魔法スクロールが納められているキャビネットに直行し、次々に引き出しを開けて《魔物探知》のスクロールを探す。


「あった。 値段は... 200万円かー。 やっぱり高い」


そこでエリカはちょっとした問題に気付いた。 200万ゴールドを貯めるには効率的に狩りをする必要があるが、それには《魔物探知》でモンスターの居場所を突き止める必要がある。 《魔物探知》の代金を稼ぐのに《魔物探知》が必要なのだ!


「《魔物探知》が無くても狩りはできるけど、それで200万円を貯めるのは大変。 《魔物探知》の代金は狩りよりも依頼ボードの仕事で稼ぐのが良さそうね」


エリカは依頼ボードに掲示されていた依頼の数々を思い出す。 風俗店の用心棒、要人のボディーガード、夜間警備員、潜入調査、アーティファクトの探索、下水道の清掃、ファントムさん捕獲、犯罪者の捕縛、引っ越しの手伝いなどなど。


依頼の報酬額は様々で、引っ越しの手伝いなんかは時給 1,500ゴールドだがファントムさん捕獲に至っては報酬額がなんと500万ゴールドである。


「金額的にはファントムさん捕獲がいいんだけど... あの依頼にあった『ファントムさん』って私のことだよね? 私を捕まえてどうするつもり?」


キャビネットの引き出しを開けっ放しで考え込んでいると店主から声がかかる。


「引き出しを開けたら閉めておくれよ」


「すみませえん」


エリカは引き出しを閉めて、また考え込む。


「よし決めた! 潜入調査にしよう。 報酬額がちょうど200万ゴールドだし、私の長所を活かせるし」


エリカの考えはまとまった。 何も買わずに書店を出るのもバツが悪いので、エリカは本を買って行くことにした。 安い本を探して回り見つけたのは『ファントムさんは実在する - ファントムさんの100の秘密』。 安っぽいタイトルだが値段も安くて 1,300ゴールド。 カウンターに本を置いたとき、店主がフフッと笑った気がした。

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