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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第23話 悩むとは苦しむことと見つけたり

翌朝、エリカは東門に足を向けた。


「西門と南門とでモンスターの強さが桁違いだから、これまでの私の(RPGでの)経験によれば、今の私に手頃な強さのモンスターが東門か北門に用意されているはず」


ラットリングよりも報奨金が高く、それでいてオークよりは弱い、そんなモンスターを期待してエリカは東門へ向かった。


しかし東門は閉鎖されていた。 一時的に閉鎖されているのでもないようで、辺りには人気ひとけがなく、巨大な鉄扉のかんぬきも長いあいだ抜き差しされていない様子だった。


「...何よ、閉めっぱなしなら門の意味ないじゃない」


気を取り直して、エリカは北門へ向かった。 北門は開け放されていて人影も見える。 エリカはホッと胸を撫で下ろした。


(開いてて良かった北の門。 ここで稼がせてもらおう。 モンスターがオークより強いなんてことないよね?)


                  ◇❖◇❖◇


北門をくぐって野外に出たエリカの目の前に写ったのは長閑のどかな田園風景だった。 小麦っぽい作物が育つ緑色の畑が道沿いに遠くまで広がっている。 あちこちに農作業をする人の姿がある。


「あら素敵な風景... じゃなくて! モンスターはどこ? こんなに長閑なんじゃモンスターがいるはずない」


目前の風景の長閑のどかさがエリカを追い詰める。 西門での狩りを禁じられ、南門はモンスターが強すぎ、東門は閉鎖。 そして北門はモンスターがいない。 どこでモンスターを狩れというのか?


「どうしよう」エリカの()()()()と背筋を嫌な汗がじっとりと濡らす。「私にできる仕事はハンターだけなのに」


困ったエリカは、とりあえず左手に見える丘に登ってみることにした。 丘と言っても小高い起伏に過ぎないが耕作地にはなっておらず、頂上に大きな木が見える。


「あの丘に登ってみよう」


北門を出てからハンターを1人も見かけていないから、北門エリアが狩りに適さないのは明白。 それでも、高い場所から北門エリアの全貌を自分の目で確認してみたかった。


丘のふもとから、草が生い茂る()()()()な斜面に一本の道が緩やかな曲線を描いて上のほうに続いていた。 獣道のような道を登りながらエリカは計算する。


(今の貯金は60万円。 家賃が20万円で、食費が月々6万円。 光熱費が...)


考えていてエリカは虚しくなってきた。 現在の収入がゼロで今後もゼロ。 家計の()()()()以前の問題である。 なんとかして収入減を確保しなくては... でもいくら考えても、ハンター以外に自分にできそうな仕事を思いつかない。 エリカは途方に暮れた。


                  ◇❖◇❖◇


悩むうちに頂上に到着した。 町の北側の相当に先まで耕作地が広がり、耕作地の向こうには大きな河が流れている。 やはり北門エリアにはモンスターの出没を期待できない。


「昼食には少し早いというか、まだ完全に午前中だけど、ここでランチにしよう」


他にやることが何もないのでエリカは昼食にすることにした。 丘の麓からも見えた大きな木の根本に座り、ナップサックから竹の皮っぽい何かに包まれた握り飯と水筒を取り出す。 水筒は革製で、中に入っているのは麦茶っぽい飲み物だ。


大きめの握り飯を両手に持ってモクモクと食べながらエリカは再び悩みだす。


「私にはハンターしかない。 でも狩れるモンスターがいない―」


だが妙案は思い浮かばない。 それも当然だ。「悩む」とは解決法を考えるよりもむしろ、考えた末に解決法が見つからなかった問題を頭の中でもてあそんで苦しむことだからだ。 およそ2:8の割合である。「考える」が2で「苦しむ」が8だ。


悩みを解決するには、見逃している要因に気付くか自分が変わることだ。 エリカの場合、前者に当たるのは「南門エリアにオークより弱いモンスターも出没することに気付く」であり、後者に当たるのは「オークを恐れない自分になる」なのだが...

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