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コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第19話 正々堂々とした勝負をプロデュースしてあげましょう

やがてエリカは生き返った。 呪いか祝福か神に与えられた不死性が発揮され、色々とひどい状態だったエリカの頭部が元通りに修復されたのだ。


エリカは地面に横たわった状態で意識が戻った。 その目に写ったのは、同じく地面に横たわり血を流して死んでいるオーク。 エリカ亡き後、『ナナクサ』は順当にオークを倒したらしい。


(私には南門エリアは無理ってことか。 透明人間なのにこのザマだもんね。 金色の霧で強くなっても、オークみたいなのと戦える気がしない)


考え込むエリカの耳に女性の声が聞こえる。


「何故こんな真似をするっ!」


セリの声だ。 そういえば、意識を取り戻してからからずっと話し声が聞こえていた気がする。


「さるお方がアンタにご執心でな」と男の声。「どうしてもアンタを自分のモノにしたいというんだよ」


地面に手を突いて起き上がりながら、エリカは声のするほうに顔を向けた。 『ナナクサ』の3人がロープで手足を縛られて地面に転がされ、その傍らに3人の男が立っている。


(『ナナクサ』が捕まっている!? いったい何があったの?)


捕えるのは殺すより難しい。 エリカより遥かに格上の『ナナクサ』を捕えるとは何者なのか?


セリと男の会話が続く。


「そいつが誰だか知らないけど、私たちにこんなことしてタダで済むと思ってるんじゃないでしょうね?」


セリの問いかけに答えたのは顎ヒゲを生やした男だ。


「済むさ。 これからオマエに《支配》の呪文をかける。 オマエは他人の意思のままに動く肉人形として残りの一生を過ごすのさ」


男の言葉にエリカは驚愕する。


(あの男は《支配》を使えるというの? 500万ゴールドもするのに!)


「なっ、許さない! そんなことは許さない!」


「オマエに許してもらう必要はない」


ナズナが冷たい声で男に尋ねる。


「で、私とスズナはどうするつもりなの?」


「安心しろ、オマエたち2人もセリのついでに()()お方が引き取ってくれる。 さて、人が来るとマズい。《支配》を頼む」


《支配》を使うのは顎ヒゲの男ではないらしい。 別の男がセリの前に進み出て呪文を唱え始める。 「まずは本命のオマエからだな。 ロブドブロプストリケラス...」


                  ◇❖◇❖◇


呪文の詠唱を聞くうちに、エリカはハッと気付いた。


(あらっ、これって親切チャンスじゃないの? 私ったら何をウカウカとしてたのかしら)


エリカは地面から跳ね起きると、《支配》の呪文を唱える男に向かって駆け出した。 《支配》をかけられた人の心が元に戻るのか戻らないのか知らないが、戻らないとすれば呪文を阻止する他に親切が成立しない。


『ナナクサ』が縛られ転がされている場所まで多少の距離があった。 しかし、500万ゴールドの呪文ともなると詠唱に時間がかかるようで、《支配》の呪文が完成する前にエリカは詠唱者のもとへとたどり着いた。


とにかく最優先なのは詠唱の阻止である。 エリカは詠唱者の背後に回り込むと、右手で彼の口をふさいだ。


「...コリトスポリッキーメトールもむっ」


呪文の詠唱が中断された。 詠唱者は自分の身に何が起こったかサッパリ分からない。 口を塞ぐエリカの手を触覚で知覚できず、自分が口を塞がれていることにすら気付かない。 彼が知覚するのはただ、声を出せず口で呼吸できないという事実のみ。


「どうした?」


顎ヒゲの男がいぶかしげに尋ねるが、詠唱者は答えない。 答えられない。 エリカがまだ口を塞いでいるッ! 詠唱者は答える代わりに首を横に振ろうとするが、それも思うに任せない。 口を塞ぐエリカの手が邪魔で首を振れない。


(もういいかな。 呪文は完全に中断されたよね? ここから詠唱を再開とかムリよね?)


エリカは詠唱者の口から手を離した。


「ブハーっ。 なんだったんだ今のは」


顎ヒゲの男が苛立たしげに問う。


「どうしたというのだ?」


「わからない。 とにかく急に口が思うように動かなくなった。 息もできなかった」


それを聞いて顎ヒゲの男は何かを考えている。


「...いやしかしアレは西門のはず」


一方、エリカも次の行動を考えている。


(この男たちは明らかに悪人。 でも殺すのもね... 人を殺したことないし。 どうしようかな?)


                  ◇❖◇❖◇


セリたち3人は怒りに顔を赤く染め、ロープを引き千切ろうと腕や足に力を込めている。 超人的な身体能力を持つ『ナナクサ』の面々ならあるいは? そう思ってエリカは彼女たちの奮闘を見守ったが、やっぱり引き千切れないようだった。


怒りに燃えるセリたちの様子を見てエリカは名案を思いついた。


(エヘヘ、いいこと思いついちゃった)


『ナナクサ』自身にカタを付けさせれば良い。 彼女らなら顎ヒゲ男たちをどう処分すべきかを知っているだろう。 それに、彼女たちの怒りっぷりから察するに、『ナナクサ』のほうが男たちよりも戦闘能力が高いのではないか? 男たちは『ナナクサ』を捕らえるのに不意を突いたか卑怯な手段を使ったかしたのでは?


エリカの推測を裏付ける発言が折よくスズナから飛び出す。


「卑怯者め! 正面から戦えばオマエたちになど決して負けぬものを! 縄を解け、正々堂々と勝負しろ!」


(思った通りね。 正々堂々とした勝負を私がプロデュースしてあげましょう)


エリカは縛られ地面に転がされている『ナナクサ』のもとへ移動すると、長剣を鞘から引き抜き、3人の手足を縛るロープを次々と切断していった。 ロープは鋼鉄が織り込まれた特製だったが、エリカの剣はミスリル製。 鋼糸をものともせず易々とロープを切断した。


突然ロープが切れるという摩訶不思議な事態に『ナナクサ』の3人は驚きの声を上げる。


「あらっ! ロープが」「切れた?」「まあっ!」


驚きつつも『ナナクサ』は降って湧いた幸運を逃さない。 3人は素早く立ち上がり、2人の悪人めがけて殺到した。 3人とも捕まったときに武器を取り上げられ素手だが、ダッシュに逡巡しゅんじゅんはない。


「殺しちゃダメよ」「オッケー!」「努力する」


殺気をみなぎらせて駆け寄って来る『ナナクサ』に気付いた男たちは逃げ出した。 男たちの動きは常人離れしており、みるみるうちに姿が遠くなる。 彼らもハンターなのだろうか?


しかし『ナナクサ』は男たちよりも速かった。 逃げる男3人にあっさりと追いつくと、後襟うしろえりを背後からむんずと掴んで地面に引きずり倒し、男たちを仰向けに転がして馬乗りになった。


3人は男たちの主に顔をしばらく殴り続けていたが、やがて満足して男たちの身体から降りた。 ぐったりとした男の体を肩に担ぎ上げてエリカのいる方に戻って来る。


                  ◇❖◇❖◇


戻って来た『ナナクサ』は先ほどとは打って変わって穏やかで、美女然とした様子を取り戻している。 肩に担がれる男たちは死んではいないが気を失っており、顔面は血だらけで腫れ上がっている。


「ねえセリ、あんたを狙う『さるお方』とやらに心当たりある?」


「無いけど、コイツらに訊けば何かわかるでしょ」


「コイツらどうするの?」


「警察に引き渡す前にハンター協会に連れて行きましょう。 コイツらから依頼人の情報を引き出しておかないと」


「警察はあてにならないもんね」


(どの世界も同じなのね)


『ナナクサ』の3人は取り上げられていた武器を回収すると、町へ向かって歩き出した。 エリカもその後に続く。


3人はしばらく黙って歩いていたが、やがてスズナが口を開いた。


「あのロープ、どうして切れたんだろうね。 不思議だった」


「鋼糸混じりのロープがひとりでに切れるなんて、超常現象のレベルを超えてるよね。 誰かがあそこに居て刃物でロープを切り落としてくれたとしか思えない」


「そうそう、そんな感じ。 ファントムさんが私たちを助けてくれたみたいな感じ」


「みたいな、じゃなくてファントムさんじゃないのかなあ?」


(そうです)


「西門エリアに出没してるって話だけど」


「西門を卒業して南門に来たのかも」


(卒業未遂(みすい)ってとこね。 私はまだ南門じゃやっていけない)


「ある得るわね。 今も私たちの傍にいるかも」


「うふふ、あんたのすぐ隣を歩いてたりして」


そう言って3人はキャアキャアとはしゃぐ。 肩に血まみれの男をかついで。


「ファントムさんがいなかったら、今ごろ私たちどうなってたかなあ」


「やっぱりこうして町へ向かって歩いてたんじゃないかな。 ただし、コイツらに精神を支配された状態でね」


「それ想像したら、また腹が立ってきた。 もう一発殴っとこう」


「よしなさい。 それ以上殴ると死んでしまうわ」


「ファントムさんは私たちの恩人てわけね」


そう言ってナズナは、小さい声で付け加える。


「ありがとうファントムさん」


ァントムさんがこの場に居るのか居ないのかわからない、それでも今お礼を言っておかないとお礼を言う機会も無い。 そんな彼女の微妙な心情が覗い知れる小さな声だった

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