第12話 「見守ってる場合じゃない。 絶好の親切チャンスよ!」
男女4人の即席パーティーは、前方に見つけたラットリングの群れを獲物と定めた。 後方にもラットリングの群れがいるが、彼らはそれに気付いていない。
四人組のひとりサンショが言い出した。
「チーフじゃねえか!」
前方の群れにラットリング・チーフを見つけたのだ。 チーフは並ラットリングより2回りもサイズが大きく、そのぶん力が強い。 それでいてラットリングの素早さは損なわれていない。 難敵である。 並ラットリングの武装が棍棒なのに対し、ラットリング・チーフは長剣。 拾った長剣かもしれないが、ハンターを殺して奪った可能性も高い。
「ちょっとマズイかしら」
「逃げるか?」
「いやちょうどいい。 そろそろチーフに挑んでみたいと思ってたんだよ」
「もっと小さい群れのときに挑めばどうかしら?」
「小さな群れにチーフはいないよ」
そう言ってサンショは、仲間の同意を待たずラットリングの群れに歩み寄って行く。 他の3人は心を決めかねた様子でサンショの後に続く。 ラットリングの群れも4人に気付いたようで「ギューギュー」と騒いでいる。
チーフ率いる群れに接近しながら、クロブが何やら呪文を唱え始める。「ゴショウゴショウゴリンゲン...」
クロブが呪文を唱え終わるとクロブの手元から黒い闇が放たれ、ラットリングの群れの間に広がる。 《煙幕》の呪文だ。 群れの周辺の空間に薄墨を塗ったように霞がかっている。 煙幕が薄いためラットリングの視界を完全に閉ざすわけではないが、それでもラットリングは周囲が見えにくくなり「ギュギュ?」「ギョギュッ?」などと当惑してもいる。
「ナイスだクロブ!」
サンショが飛び出した。 チーフ相手に一対一の戦いを挑む模様だ。 残りの3人は並ラットリングを引き受ける格好になる。
◇❖◇❖◇
その頃エリカは、付近で行われる戦闘にもかかわらず深い眠りの中にあった。 彼女が場所を選ばず熟睡できるのは、自分の姿が誰にも見えず万が一ダメージを受けてもすぐに治るという安心感によるものだ。
しかしそんな彼女も、踏んづけられれば流石に目が覚める。 何匹かにお腹を立て続けに踏まれ、エリカは目を覚ました。
「何よもう、よってたかって! 」 そう怒りかけてエリカは自分がどこで寝ていたかを思い出す。 そうだ、町の外で地面に寝転がって昼寝してたんだ。 こんなとこで寝てたんだから踏まれても文句を言えないわよね。 私の姿は誰にも見えないんだし。 踏まれたのが素足で良かった。 ブーツなんか履いた足で踏まれたら...
そう考えながら寝起きの目を見開き自分を踏んだ者を見やると、目に写ったのはラットリングの集団の背中。 数は10匹を超えている。
さらにエリカは先ほどから続く戦闘音に気付いた。 音のするほうに目を向けると、例の男女混合4人パーティーがラットリングの別の群れと戦っている。
「あれ? あのパーティー挟み撃ちされちゃうんじゃない?」
エリカが自分の腕を枕にし寝そべって見守っていると、今しがたエリカを踏んづけたラットリングの群れが4人パーティーの後方から襲いかかった。 危うし4人パーティー!
「はっ、見守ってる場合じゃない。 絶好の親切チャンスよ!」
エリカは跳ね起きて戦闘の現場へと駆け出した。




